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こぶ観音

早いもので、今から13年くらい前になるだろう。
私は胃がんになりました。
会社の健康診断でひっかかり、胃がんが見つかったのです。
離婚してまだ数年。子供達も全員小学生だったと思う。
大きな病院に行ったものの、胃の全摘出と言われて絶望。納得いかず、セカンドオピニオンをとりまくり、検査をしまくった。

とてもいいお医者様に巡り合い、治療方法が決まったが・・・
私は生きて行けるのか?手術すれば治るのか?胃の一部除去という選択で間違っていないか?転移しているんじゃないか?
何より、ガンになって手術して、今までのように働きながら子供達を育てることができるのか?
毎日そればかり考えていた。

その不安や恐怖を私の場合は、親戚や友達みんなに話しました。そして、毎回泣きました。不安すぎて。
神社⛩にお嫁に行った友達に話した時。
気休めになるかもしれないから、お祓いにきたら?と言ってくれた。もちろん、神にも縋ります。
お寺があれば手を合わせ、神社があれば手をたたき、教会かあれば手を組み、お地蔵さんがあれば頭を下げ、どうにか癌が治りますように。子供達を育てられますようにとお願いしまくりです。

友達の嫁いだ神社でお祓いをしてもらった後、その地域の事を教えてくれた。
「ここからそんなに遠くない所に、こぶ観音様があるよ。この辺の人は体調が悪くなるとそっちの方を向いて手を合わせたり、その観音様にお願いしに行くんだって。うちの旦那さんもおばあちゃんが、そう言ってお腹を撫でてくれたって言ってた。いつか行ってみたら?気休めになるかもよ」と。

石打こぶ観音(明言寺)
その話から13年。私は毎月の月参りをしています。

行ってみると、普通のお寺さんという感じだった。
曹洞宗と書いてある。
お寺の前にはお土産屋さんが一軒。
私が行ったのは土曜か日曜日の8時半くらいだったと思う。2時間近くかけてきたので、ゆっくりお参りしようと思ったが、ものの15分くらいでお参りを終えてしまった。

お土産屋さんのシャッターはすでに開いていたので、このお寺の事を聞けたらいいなと思って入ってみた。
おばあちゃんが1人。
お茶飲んで行きな🍵と、すぐにお茶を出してくれた。
『初めてきたのかい?なんのお願いにきたのかい」と聞いてくれたのをとっかかりに、初めてきたこと、癌になったこと、神社に嫁いだ友達からこぶ観音様のことを聞いてきたこと、離婚して子供が3人いること、これからが心配なことなど、他のお客さんがいない事をいいことに、泣きながらしゃべりまくった。
おばあちゃんは「うん、うん」って聞いてくれた。私を育ててくれたおばあちゃんとの時間を思い出す風景だった。

こぶ観音様は、癌をこぶと見立てて癌封じ。赤ちゃんをこぶと見立てての子宝の観音様と慕われているとこと。
おばあちゃんは「よーく、お願いしてきな。こぶ観音様が守ってくれるから。大丈夫だよ。」と何度も言ってくれた。

それからの数年はお参りと、このお店のおばあちゃんに会うのが楽しみで通っていた。

手術も無事終わり、1か月、3か月、半年ごとの通院の度に、再発してないか?転移はしてなかったか?と不安になりながらも、こぶ観音様にお参りする事で気持ちを落ち着かせ5年経過。
主治医の先生のこれでいちを完治です!との言葉に、すべての事に感謝したのを覚えている。
こぶ観音様が守ってくれたのかもしれない。家族や友達、職場の協力があったからかもしれない。
私みたいな大した事のない癌でも、こんなに不安になり生活全部が変わってしまうのだから、もっともっと大変な人達がたくさんいると言うこともわかった。

5年経過して胃がんは終わったのだが、毎月の月参りをやめようとは思えず、今もまだ通っている。
もう、お土産屋さんもなくなってしまったが、毎月行く事が楽しみにもなっている。
お参りすることで、ちょっとだけ安心というか、守ってもらえるのでは?と思っているのかもしれない。

毎月お参りしているが、1月だけは新年の祈願をしてもらっている。今年は月の後半になってしまったがもちろん伺った。今年も混んでいる。
祈願の時には住所、名前、お願い事を拝んでくれるのだが、さまざまなお願いをするのだなーと思う。
もちろん、ここはこぶ観音様なので、癌封じのお願いはもちろん、子宝祈願、安産祈願が続く。
そんな中、医師免許合格祈願!や一級建築士合格祈願というお願いも聞こえてきた。

いいなーと思ったのは、夫婦円満祈願。。。
初めて聞いたが、2人ほどいた。
夫婦円満を祈願???これってお願いすること?笑
なんて思いながらも、微笑ましく思えた。

ビクッ!としてしまうほどの、力強い太鼓の音とお経。リズムカルな太鼓の音が、私の胸に響き渡る。
今年も、私や家族みんなが、健康で穏やかな日々を送れますように。と心から思える時間。

なにがあるわけではないが、これからも毎月行きたいと思っている。

新しくなった山門

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