眠るタイミングを逃したまま朝を迎えたので散歩にでかけた。誰もいない商店街を歩く。朝だからシャッターが閉まっているのではない、イオン建設によってとどめを刺されたので昼も夜も同じ景色だ。違いは駄弁る老婆の有無。そんな地元のゴーストタウンを抜けると視界に続くは田んぼ道、をさらに抜けた先にある雑木林の道を歩く。静かな朝を歩くのは気分がいい。空気のにおいもいつもより濃い気がする。そして鳥と虫と犬と風の鳴き声。人類が寝静まるだけで環境はここまで引き締まるのかと思う。歩きながら最近漫画を描いてないからそろそろ描こうかな、みたいな気持ちになってきたことについて考えた。コストパフォーマンスが悪いやつを一度描きたい。無駄に長い上に誰も楽しめない漫画がいい。それは車が出てこないまま50巻を迎えた「頭文字D」のような作品かもしれない。ファミリーマートに寄って焼きそばパンとモンスターエナジーを買う。気分ではないがYouTubeでモンスターエナジーを蜂に飲ませる動画を観たことを思い出して、つい手に取ってしまった。ATMでお金をおろしているときに、膝に触れた半ズボンの衣擦れを蛾が止まったと勘違いして驚く。このコンビニを散歩の折り返し地点と決めて来た道を戻る。朝練へ向かう学生みたいな買い物になってしまったことに気づいて今恥ずかしい。歩きながらモンスターエナジーを口にするとその人工的な甘みに風情を台無しにされる。アイスコーヒーにすればよかった。これは荒らしの飲み物だ。関係ないが「エナジードリンクは眠くなる砂糖がたっぷり入ってるから気つけ薬として飲むのは逆効果」みたいな情報をいつだかネットで知ったけれど、そういう賢い情報を知って一旦離れたあとに、「いや、純粋に味が好きだから」みたいに開きなおって再び飲みはじめるのがコクのある生き方だと思う。そこで賢くあり続けるとたぶんつまらなくなってしまう。逆に情報を無視するのも芯が強すぎてよくない。一旦離れて戻ってくるところに旨味のようなものがあると思う。そしてまた離れては戻るの繰り返し。誰かの畑で咲いているひまわりが立派で写真を撮りたかったけどスマホを持たずに出かけたので撮れず。商店街を歩いていると魚屋のシャッターが開いていた。通りすぎながら店内を覗くと作業着を着たおじさんが立ったまま腕を組んでテレビを観ていた。誰も来ないのに気合いが入っている。

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