見出し画像

ワーカーホリック 心酔する愚者2章-⑤


Sが喫煙所に向かって進む。ここのビルは喫煙所が2箇所ある。1つは地下の喫煙所。ビルのほとんどの人が利用する。
もう1つは4階専用のセキュリティーカードを持っている人が使える喫煙所だ。

私はたちはセキュリティーカードで扉を2回開けたあと、さらに奥にすすむと吹き抜けのある空間にきた。

クラシックな机や椅子の他にバーカウンターがあり、グランドピアノまである。
一見ホテルのレフトランのような場所だ。
外にはテーブルと椅子もあり、ガーデンも可愛く夜でも外でも食事したら楽しそうな場所だ。

そんな場所で1人 窓際の深めの1人かけの椅子に座って英字新聞を読みながら、タバコ吸っている男がいた。

その男と目が合う。深い目元はまるで北欧の男性とみてしまう人は芦宮さんだった。

「お疲れ様です」とSと私は声をかける

芦宮さんがタバコを灰皿に落として私たちに声をかけた。

「ご苦労さま。この時間にくるなんて珍しいね」

「現場から直接きたので、先に昼飯食べたからきたんですよ」

Sが芦宮さんの目の前に立ち、私に合図をする。
私は鞄を開けて500万を芦宮さんの机に並べた。

「…君たちは今日もずいぶん大金を持っているんだね。」
「たまたまですよ。本題に入ります。この500万を貴方にお渡しするので、俺たちの今回の案件で起こる全てのこと、上が勘づいたとき誤魔化してくれませんか」

「誤魔化すのは構わないが、このお金を使うほどなのかい?あまり良いやり方だとは思わないけど」
「だめですよ。ここでワイロはすぐ断らないと。断らない理由当てましょうか」

芦宮はSを睨みつける。

「慰謝料と養育費を一括で払ったから大変なんでしょう?そこまでして、不倫相手と一緒になりたかったんですか?いい年して20歳の女の子と」

「君に僕のプライベートをとやかく言われる筋合いはないよ。それに僕は不倫はしていないさ。普通に離婚しただけさ。再婚もしていない」

「でも、秘書課に新しく入った女の子とよくここで会ってますよね。ここ、特別なセキュリティーカードないと入れないのに、一般社員が普通に入れます?」

「…脅しののつもりかい?」

「僕は誤魔化すのを協力してほしいといっているだけですよ。そうすれば、ここでしかけたカメラの映像に映っている緑のボクサーパンツの人物の顔を誰も知ることはできない」

芦宮はうつむき、スマホで操作をする。

「今回の君たちの1週間の仕事と聞いている…上層部には私が伝えるから、君たちは気にせず働くといい」

「ありがとうございます。あっ急に500万手に持っていたら驚かれると思うので、これ使ってください」

Sはレジ袋を取り出して、芦宮に渡した。

「それじゃ、俺たちはこれで失礼します」

Sは扉に向かって歩き始める。
わたしは芦宮に会釈して扉へ向かう。

扉を閉めると同時にレジ袋の音と椅子が倒れる音が聞こえたような気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?