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海外層VRCのアプデで激おこな理由

事の発端

7月25日に発表されたVRCのベータ版アップデート内容。主にセキュリティーアップデートと謳い、ApexやFortnite等でおなじみの対チート対策システムEasyAntiCheatの導入が発表されました。

公式バグ報告システムCannyのEAC関連の苦情

発表直後からTwitterやVRCDiscord並びにバグ報告用システムCannyが大荒れ。トレンド入りしたりEAC導入反対のCannyが一万票を超えたりと騒がしい一日となりました。

一体なぜここまで荒れたのか?
それには色んな理由があるのでざっくりまとめてここに置いておきます。

簡易目次:

①MODとは、その仕組み
②海外層のプレイ形態
③炎上の理由1:QOL、プレイ環境のクオリティーの低下
④炎上の理由2:障がい者コミュニティーへの配慮が足りない
⑤炎上の理由3:悪質なユーザーへの対策にならない
⑥EAC自体の問題点
⑦あとがき

前置き:
ちなみに著者はMod使用経験は無いですが海外層と遊ぶことが多く、利用している友人が過半数なのでそこから情報を集めて記事にしております。なのでModに関して具体的な内容はある程度ふわふわしているのはお許しいただけると助かります。そのことを踏まえて読んでいただけると助かります。


①MODとは、その仕組み

Mod、人によってはClientと呼ばれる代物はVRChatをベースにした別のソフトウェアです。色んな拡張機能を足すと言う利点がある反面、使用する行為は思いっきり利用規約違反である。

利用規約違反をしてまで使用するmod、その内容とは?

多くの方はmodを想像するときに違法クライアントの悪い機能、いわゆるリッピングや強制クローンやクラッシャーを思い浮かべるのでは無いでしょうか?

実際そういう機能入りの悪質なクライアントもありますが、それ以外の機能を持ったいわゆる「ホワイトクライアント」のようなものもあります。

例として私の周りでよく使われていたModを紹介します。
セルフミラー
多分ぶっちぎりで一番使ってた人が多い機能。ワールド内ミラーが無い、またはミラーの箇所が不便な場所にある場合、ローカルでミラーをスポーンする機能の事。
フレンドRSSフィード
フレンドがオンラインになったり、パブリックやフレ+に移動した際にRSSフィードのように更新されるリストの表示。または現在いるワールドに人がJoin、またはLeaveした場合通知が画面上に表示される機能
軽量化オプション
ワールドミラーの強制軽量化(ローカル)や椅子を強制解除、オブジェクトを強制非表示などと言った軽量化オプションを含んだ機能
テレポート・飛行等
大きなワールドに入った際、フレンドが見つからない!等と言った場合、任意のプレイヤーの元へと飛ぶ機能。この辺は使用状況によってはまぁまぁグレー
手話拡張機能
これは特定のコミュニティーで多く使われるmodですが、簡単に言えばハンドジェスチャーを増やす機能です(通常は7つまで)。詳しくは後程触れます。

mod利用者の画面(YouTubeより拝借)

全貌が気になる方は実際に上記の画像のmodのHPにて全貌を確認することが出来ます。
(VRCが公式に連絡を取っていたと言ういわゆる「ホワイトよりのmod」のHPですが、公式が「ブラックリストしていない」だけであり「利用を容認」しているわけではないのでご利用やHPを閲覧の際はその点をご留意ください)

2021年のmodBAN

実はこの炎上、2回目なんです。

mod制作者が突如BANを喰らう
2021年の春頃に前触れ無くVRC側からmod制作者に制作を放棄しレポジトリーを削除するように警告が送られ、製作者に紐付けられたアカウントを総banしました。
直後、コミュニティーからのバッシングを受け「良質」なmod制作者にコンタクトを取ったりBANを取り消したりしました。
その後、一部悪質クライアント利用者がBANされたと言う話があったり、良質mod制作者とVRC開発陣がコミュニケーションをとり協力体制にある姿が見られました。

あれから1年ちょっと経ち、今朝のアップデート発表で今度こそmodが強制終了されるニュースによりバッシングが再熱。

②海外層のプレイ形態

後々少し説明に必要になるのでここで一度海外層のプレイ形態を軽く紹介させていただきます。色々あるので一概にはまとめられませんが、アクティブユーザーの利用形態は大きく分けて4つあります。

1.パブリックどんちゃん騒ぎ
ユーザー層:雑多だが若い子が多い傾向にある(10代)
ワールド例:PublicのBlack Cat、Japan Shrine等
アバター層:雑多だがPublic設定のアバター多め
PCへの負荷:稀にクラッシャー現れるとき以外は大体平気

多分日本の方が一番多く目撃している海外層の姿がこちらなのではないでしょうか?若いユーザーが多く、大騒ぎをしたりまぁまぁ賑やかな場所でありインスタンスが中々安定しません。

2.パブリックパーティー
ユーザー層:青年層(18+)
ワールド例:Drinking NightやFBT Heaven等
アバター層:Gumroad系海外アバター多め
PCへの負荷:Safetyなかったら多分グラボ溶ける

mod無しの状態で入る場合、運が悪いとPCが燃え出す。Gumroad系のアバターは色々と重い物が多いのと、賑わうインスタンスは30、40人をすぐに超える。私はSafetyをかなり強めに入れないと地獄の紙芝居劇を見る事になります。

3.イベント・クラブ
ユーザー層:青年層(18+)
イベント例:Shelter、1042、セクシー系クラブ等
アバター層:Gumroad系、Booth系
PCへの負荷:入場制限無い場合はSafetyなかったらPC噴火する

イベントによってはアバター入場制限があるため(Goodオンリー等)、広い場所でならまだ大丈夫だが狭い部屋で80人等の場合はやはりPCが火を噴く。

4.コミュニティー
ユーザー層:老若男女
ワールド例:不特定
アバター層:雑多
PCへの負荷:状況次第で変わる。

コミュニティーは友人の集まりだったり、互いをサポートしたり、共通の趣味を高めるための集まり等いろんなものを括ってコミュニティーとしています。小さいものは十人にも満たない集まりから40人超えの大型とピンキリです。

他にもいろいろありますが今回の件で騒いでいる方の殆どが2~4に属する方です。

③炎上の理由1:QOL、プレイ環境のクオリティーの低下

さて、いよいよおこな理由へと進みましょう。

通常の状態でのVRCプレイは海外層だとラグ地獄

Boothアバターがまださほど人気ではない海外圏ではマテリアル数やとんでもないメッシュを含むことのあるいわゆるGumroad系のアバターがすごく多いです。

数人の集まりでは問題にはなりませんが、イベントや20人を超えるインスタンスではプレイヤーが誰一人見えてない状態なのに一歩も動けず紙芝居地獄になることがあります。

海外層のプレイ形態ではイベントに行ったり、友人の集まりに行くと数十人がすぐに集まるのはごく普通な事です。

通常プレイ環境でのmodの役割

さて、上記の状態でmodを利用する価値は色々ありますがここでほぼ必須となるのが軽量化オプションの拡張機能。

軽量化の通常機能おさらい:
・ワールドミラーの強制軽量化(ローカル)
・椅子を強制解除
・オブジェクトを強制非表示
軽量化の拡張機能:
①半径Xm内にいるユーザーのみ表示
②半径Xm内にいるユーザーの音量のみ有効化
③プレイヤー毎に細かくHide設定:
  ・シェーダー非表示
  ・DynamicBone非表示
  ・パーティクル非表示
  ・Cloth非表示
  ・サウンド無効化

範囲を指定し、近くにいる人とフレンドのみを表示する等色んな機能があります。Safety無しで多数のユーザーが同時接続している環境でプレイするにはほぼ必須と言えるでしょう。

VRCと言えばこれが理想(?)…
…ロボットだらけの世界線だとやはり没入感がかなり下がる

要約すると…

・イベントや人が集まるところは楽しい!
・でもアバターの性質や人数のせいでPC燃える!
・Safety使うとロボットだらけ!嫌だ!
・軽量化modあれば快適かつ没入感への影響も少ない!やったね!
・modがBANされるらしい!おこ!

④炎上の理由2:障がい者コミュニティーへの配慮が足りない

HMDを使い、表現ができるVRC。ここで思わぬコミュニティーが花咲く事となる。
難聴者、発話障害を持つ方のコミュニティーはかなり昔からVRCに存在しており、昨今話題のVRCドキュメンタリーでもピックアップされるほど大きなコミュニティーです。

手話勉強ワールドExperimental ASL Worldのサムネ

主に難聴者が使うmodの機能は以下(Cannyから引用):
・特定のユーザーの音量のみを拾う
・周りのユーザーの音量を拾う範囲を指定
・CC(字幕)を表示する機能
・リアルタイムのSpeech-to-text(音声テキスト変換)

通常のハンドジェスチャー7つ

更にはコミュニケーションのツールとして手話拡張機能を利用される方も多い。この機能を詳しく説明すると、普段7つまでしか設定できない手のジェスチャーを増やし、手話に必要な手の形をアバターに仕込むための機能である。
7/26追記:説明不足で混乱を招いたようなのでさらに詳細を書きますと、上記のジェスチャー追加はコントローラーの余分なボタンを利用してのジェスチャー変更をする機能であり、3.0メニューを利用してジェスチャーレイヤーを取り替えると言う機能とは異なります。
その利点はメニューをわざわざ触らずとも多種類のジェスチャーを操れるところです。

リアル米手話(ASL)をするために必要な手の形の一部
(Booth参照)

上記に当てはまらずとも聴覚過敏の方や視覚過敏の方にとって見れるものや聞けるものを制限するmodは必要不可欠とも言えます。

今回のEAC導入をするという事は彼らがコミュニケーションに使う道具を取り上げてしまう行為になってしまうため、「取り上げるくらいなら先に導入してから取り上げろ」と言った旨の不満をあらわにしています。

(追記:著者は日本語で障害を持つ方に対しての表現や書き方は不慣れ
な為、失礼のある書き方があった場合は遠慮なくご指摘ください。確認次第すぐに訂正致します)

⑤炎上の理由3:悪質なユーザーへの対策にならない

批判的意見の中、二、三番目くらいに多い反論が「本当に悪質なクライアントは結局戻ってくる」、「良質なユーザーが作るクライアントが減るだけ」でした。

こればっかりは実際アップデートが来るまではどうなるかはわかりませんが、問題が「クラッシャー」や「アバターぶっこ抜き」なのであればこのアップデートで減ることはあっても無くなることは無いと言うのは事実です。

クラッシャーが消えない理由

クラッシャーと言うのは基本的に2種類あります。
クライアントクラッシャー
EAC導入で減る可能性がある。クライアントを利用してVRC外からコードを実行することによってインスタンスを壊したりする事。そもそも「ホワイトmod」には無い機能なので悪質クライアントがEACをバイパスすれば引き続き悪さをすることが出来る
アバタークラッシャー
パーティクルや滅茶苦茶なメッシュを読み込ませ、アバターをロードした人を落とす方法。こちらはSafetyの設定で回避可能だが淘汰する事は難しい。

アバターぶっこ抜きが消えない理由

ぶっこ抜きは基本的に3種類あります。厳密にはもっとありますがあえてこの記事では伏せさせていただきます。
①クライアント強制クローン
クライアントクラッシャー同様悪質クライアントにのみ導入されておりバイパスされればEACも無意味になる可能性が無きにしも非ず。
ユーザーのアバターをVRC内でのみ強制クローンをし利用する行為。但し、データを利用しての改変等はこの状態ではできない。
②クライアント強制抽出
上記に同じだが、クライアントを利用しローカルデータからアバターファイルを抽出してしまう機能。これを逆コンパイルすることによってUnity内にてアバターのメッシュやテクスチャ等を抜き出すことが出来る。
③アバターID利用ダウンロード
何かしらの方法を利用し(過去にはAPIを利用し検索可能なユーザーデータ内のファイルに記載されていた)サーバー上に保管されているアバターのデーターをアクセスするためのリンクを入手する方法。これはVRCのインフラが問題なので防ぎようが無い。

絶対に✓入れちゃダメよん

更にアバターをアップロードする際「Future Proof Publish」を選択した場合、そのURLをアクセスするとUnity Project毎ダウンロードすることが出来てしまう。元々はユーザーがデータ紛失やデータ破損した場合のための救済措置だったがセキュリティーがガバガバなため悪質ユーザーに悪用されてしまう事の方が多い。現在ではデフォルトでOFFになっているため、自らONにしない限り少なくともUnity Projectは守ることが出来る。
7/26追記:指摘があったので修正いたします。以前はバックドアがあり誰でもDLリンクを取得できる方法がありましたが現在では被害報告が確認出来ない為、Future Proofの利用は前に比べ低リスクかもしれません。APIのインフラが変わったのであればこちらの悪用の心配は無くなりますが、不確かな情報を記載する訳にはいきませんので確実な情報を知っている方はご連絡ください。再度修正いたします。

要約すると…

・良質modはこのまま息絶えてしまう
・悪質mod制作者は多分EACをバイパスするだろう
・結局悪質modが増えるだけなんじゃない?
・クラッシャーもリッパ-も淘汰できないじゃん?
・全ユーザーの水準を下げるだけで根本的な解決策じゃない

この点に関しては不確かな因子が多いのでどうなるかは結果を見るまで分からないかと思います

⑥EAC自体の問題点(7/27追記)

※Twitterにて情報提供を頂いたのでそのメッセージとちょっと調べた内容を元に追記

実はmodとの因果関係以外にもEasyAntiCheatは海外圏日本語圏関係なく一部の方からは敬遠される存在です。

その理由はざっくりと言えば「得体のしれない物」だからです。

得体のしれないEAC

EACは初回起動時、ユーザーにPCへのアクセス権限を要求します。
要求されるアクセスレベルはかなり深いものであるため、PCの内部の何を見られてもおかしくないものだそうです。

何をどのようにアクセスし、何をモニターしているのかが不明瞭な為、技術に詳しい方やプライバシーに敏感な方はその得体の知れなさに不安を覚えます。EAC側もその内容を「チーターに手の内を明かせない」事を理由に内容開示もしておらず、サポートに記載しているアクセス内容もかなりふわふわした表現が多い。

実際どういうものをアクセスできるのか?

EAC稼働時、出来ることは多岐に渡りますがその中でも多くの人が「怖い」と思う機能が以下:
・キーロガー機能
PCで打った文字が記録される機能。例えばパスワードを入力したときの文字列をそのまま保存できてしまう。
・画面キャプチャ―機能
そのままの意味です。画面に映るウインドウをキャプチャーすることが出来てしまいます。
・ハードウエアへのアクセス、データスキャン
ハードウエアの内容物をモニター、データをチェックする機能。モニターは「チートを検出するため」とは書いてあるが「ゲームに関連する物だけ」とは書いていないので無関係のハードやデータをアクセスされている可能性がある

規約の文言もあやふや

VRCのEULAにはまだEACに対しての文言が無いため、例としてEACを利用するElden RingのEULAを見ると以下の文章があります。

EAC will monitor the Hardware, analyze the Game binaries and scan Hardware memory for the purpose of detecting and preventing cheating in the Game (“Purpose”). For the Purpose, EAC stores information regarding cheating methods used in the Game (“Cheat Data”).

By agreeing to this Agreement, or otherwise using this Game, you give your consent that EAC may gather, store, share, and publish Cheat Data for the Purpose. The Cheat Data will be used solely for the Purpose, including but not limited to identifying and banning players who are cheating in the Game, analyzing cheating behavior and cheating codes, as well as sharing data about cheats with affiliates of EAC.

Elden RingのEULAより

前置きの単語説明:
Purpose
チートを検出、予防するためにハードのデータやゲームのバイナリーにアクセス、スキャン、分析
Cheat Data
チートが行われた際、それに関するあらゆるデータを保存


ゲームを利用する際、ユーザーは以下の条件を理解し承諾したとみなす:
・EACはCheat Dataを収集、収容、シェア、または公開することが出来る
Cheat DataPurposeの為のみに使われるが、その内容はゲーム内でチートを行うプレイヤーの識別やBAN、更にはチートに関する行動、挙動、チートコードをする行為、またEACのパートナーとチートに関しての情報の共有を含む。(上記だけに限らない)

ちょっと特殊な書き口なので正確な翻訳がしづらいですがかなり「すき間」の多い書き方となっております。また、「EACのパートナー」に対しての文言も一体それが誰なのかが明言されていないのでその情報がどこまで行くのかも予想がつきません。

色々と実態が見えないEAC。上記以外にも不安点はあるものの、この記事では公表されている規約内容や事実に基づいた客観的視点を貫きたいのでそれ以外は割愛させていただきます。

PCへの導入をリスクとして考える人にとってVRCを利用し続けるのは難しいかもしれません。

あとがき

以上が簡単(?)にまとめた海外圏でのVRChatのEAC炎上理由です。
参考程度に読んでいただけたらと思います。

実際、私もびっくりするほど周りでは怒っている人の方が多く、そのおかげでこの記事に起こす内容を色々と教えていただくことが出来ました。

modは傍から見ていいなーと思う事はあっても私自身無くてもまぁまぁ快適に遊べてしまうので触ることも無くあんまり深く考えることはありませんでした。実際最初にアプデの内容を読んだ時も「ほえー」くらいの感想しかありませんでした(笑)
ですが必要としている人の視点も理解できるし、かといって規約違反は規約違反…難しいですね。

質問、問題点、もっと詳しく説明欲しい箇所等あればTwitter(@potatovrc)でリプでもDMでもお気がるにご連絡ください~

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