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ワタクシ流☆絵解き館その129  孔雀と坂道―こんないい絵が、ひっそりと飾られている②

山本照雄「孔雀」 制作年1970年代 公共の建物内に常時展示されている 自治体所蔵
山本照雄「孔雀」部分

美術館でも画廊でも個人の部屋でもない処に、つまりは誰でもがひょいと覗ける場所に、ひっそりと飾られているいい絵を見つけたい、という思いで尋ね歩き、巡り合うことができた絵を紹介する記事の第二回。
場所はやはり前回同様「とある田舎街の某処」(地方の小都市)ということにして明かさないでおく。
一枚目の絵は、孔雀の画家として知られた山本照雄(1911-1998年 光陽会委員)の作品。山本照雄は自宅で孔雀を飼い、描き続けていた。図版ではわかりにくいが、点描手法の作品である。
この大作は、建物の裏階段の踊り場に掛けられている。事務的な所用のある者の眼にしか触れないであろう。それはそれでいい点があり、一人で静かに絵に向き合える空間になっている。
そしてまた、階段を上ってゆくという移動の途中に、まさに飛翔上昇してゆく孔雀を見上げることになる視点が置かれるのは、図らずも(いや図ってそうしているのか?)最もこの絵をビビッドに見させることになっているのだ。
そんな、見せるためなのか、隠しておくためなのかわからないような環境の中にあって、ひときわ輝いて周囲の空気を圧倒している。

三木俊二 「入り江」 制作年不明 公共の建物内に不定期的に展示されている  自治体所蔵

三木俊二 1906-1987年 明治39年姫路市出身 大阪を拠点として、新写実協会を主催。 風景、花、裸婦などを描き、中でも裸婦像の三木として知られる。ネット検索すると、裸婦像が多くヒットする。
この「入り江」は、踊っているような厚塗りによる眼前風景の把握の妙味の中に、故もなく、もうこの風景はないんだろうという喪失感をもたらす不思議さが魅力の絵だ。西洋の映画の何かの一場面で見たような既視感もある。理由もなく、高度経済成長が消してしまった一隅なのではないか、という気がしてくる。筆者の好みであろうけれど、裸婦像より、風景画の方が豊かな感性を伝えていると思う。

三木俊二 「入り江」部分
三木俊二 「入り江」部分
三木俊二 「入り江」部分

いい眺めの坂道と思う。写真でもいいから現在のこの風景を見たいと思う。だから、これがどこの風景なのか知りたいのだが、わからない。同じ図柄で、もう一枚存在するのを知っているが、あるいは何度も訪れて、制作した場所かも知れない。
塀は、板張りにレンガ色の塗色を施しているようにも見える。候補として考えているのは次のような処。
①長崎?②神戸(昭和前期または戦後間もない頃)?③作者の故郷姫路近辺の海岸部(昭和前期または戦後間もない頃)?
ここと気づいた方がいたら、お教えいただけるとうれしい。
                               令和4年4月   瀬戸風  凪

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