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ワタクシ流☆絵解き館その118  モローの「モナリザ」=「トラキアの娘」の微笑。

ギュスターヴ・モロー (1826年4月6日 - 1898年4月18日)
「オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘」1865年サロン出品作 オルセー美術館蔵
レオナルド・ダ・ヴィンチ 「モナリザの微笑」 ルーブル美術館蔵

青木繁が影響を受けた画家として、ギュスターヴ・モローの作品を凝視していて、代表作「オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘」に眼が止まった。生首を見つめる憐憫の情とも、愛惜の情とも受け取れる内面の深い思いを示す面持ちから、これは微笑といってもいいのかもしれないと思われてきて、とすればこの絵は、「モローにとってのモナリザ」という措辞が唐突に湧いた。
そこで改めて「モナリザの微笑」を見返してみて、予期しなかったことだが、我が意を得たり、の思いに浸った。(確かに学んでいる!)
その気づきを両作品の部分対比により示そう。

獅子の鬣のようなオーバーハングした岩の形状。

ノコギリ型の山頂の形状。

画面を斜行する冷たそうな水の流れ。

平面からの荒涼とした隆起。

滑らかさがひときわ目立つ手。開かれた人差し指と薬指の間。

丸い頭頂。頭を鉢巻状にまくもの。

曲げた肘の部分の襞の深さ。

比較部分の総覧。

モローがレオナルド・ダ・ヴィンチに影響を受けていたかどうかの研究はきっと存在するだろうが、門外漢ゆえ、それに食指を伸ばすことなく、直感で見えたものだけを示して終わろう。
よって、すでに語られていることであり、この見解は結果的に剽窃となっているのかもしれないが、そうなっていないことを望む。
トラキアの娘の表情が、なぜ微笑に擬せられるのか、の答は、言い出しっぺながら、納得いただける言は筆者には述べられそうもない。noteの才豊かなクリエイター群の中で、「オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘」題材の一編の物語を構想される方がいたら、その幻想に答を委ねたい。
この記事の拙い結論は、こういうことだ。陰に陽に、「モナリザの微笑」に何のインスピレーションも受けていない画家は極めて少ないだろう。 
                     
                    令和4年3月  瀬戸風 凪


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