ワタクシ流☆絵解き館その195 一流画家たちのアルバイト画業を見る②👉岸田劉生編
現在では、名の知られた日本の画家たちが、どこかの学校の図画教師という定職を得ない限り、年に何枚かの絵を売れば暮らしが立つといった、夢のような暮らしでなかったのは、挿絵・口絵・装丁という副業に努めているのが証明している。
今回はこの画家でもそうなのかという感があるが、ビッグネーム岸田劉生の副業を探る。
■ 挿絵の中のさまざまな麗子
自分の娘麗子を、タブローで何枚も描いている劉生の、挿絵仕事の題材にも、麗子像とはタイトルにはないが、モデルは麗子だろうと思わせる少女の姿が出て来る。以下に並べる。
挿絵という分野の特徴ではあるが、それにしても、タブローの麗子像に対照すると、実に軽いタッチだ。
ただし、タブローに比べて、あっさりとやや可愛らしく描く意識は見える。
■ 挿絵の中の童子たち
劉生の謎といってもいいと思うが、名作「切通の写生」に見られる、そっけないほどに乾いた眼による風景写生の一連の作品があって、また一方では、細部をじっと見つめる鋭さはあるが、こどもの表情やしぐさに無心に引き付けられている温かさも、作品に現れて来るというところだ。
ふたつの命題を抱えていた画家と言える。
この挿絵と全く同構図の油彩画がある。
■ 写実を極める画風からは距離を置いた俳味
一般的には、麗子像や乾いた地面の絵でしか岸田劉生の絵は知らないだろう。少女や童子なら、挿絵にも劉生の匂いがあるが、下に並べた絵では、劉生?と思う。
各雑誌の特色に合わせた絵柄を、きっと楽しんで描いているのだろう。
令和4年10月 瀬戸風 凪
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