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ワタクシ流☆絵解き館その59 フィンセント・ファン・ゴッホ「ローヌ川の星月夜」(1888年)は、見る者を陶酔に誘う

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フィンセント・ファン・ゴッホ 「ローヌ川の星月夜」 1888年(アルル滞在時代) キャンバスに油彩 個人蔵 オルセー美術館に展示

筆者は「ローヌ川の星月夜」が日本で展示されたとき、心弾む思いで足を運び、虚心に見つめた。そして、水面に映る星のかがやきに、どういう青とも呼びきれない深い彩に、陶酔の時間を味わった。そういう鮮やかな思い出のある一枚だ。それを今回取り上げるのはとても嬉しい。
ゴッホの画業に浮世絵が与えた影響の大きさは、つとに語られている。上に掲げた絵もまた、たくさんの浮世絵を見ていたゴッホの絵画観の深層にあるものが表出していると思う。
もちろん、ゴッホの絵は、他国の文化をうまく咀嚼して取り入れた、というような浅い理解で解釈できるものではないと理解した上でのことである。
偉大な画家はつねに、前人の誰も表現しえなかった普遍の美を見せてくれるのだから。では、筆者の気づきを以下に‥‥。

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上のような解釈をしてみたものの、ゴッホの絵を見つめ直すと、無力感が残る。

ゴッホの手紙を解読して、ゴッホにとっては星を見つめる行為は、死出の道を思うことであったとする論もあるが、筆者は、星は、月は、なんて美しいんだと、理知ではなく感性の赴くところ、天然の景色そのものに魅了されている一人の芸術家の心を感じとる。
ゴッホ展に出掛け、実際に目の前でこの絵を虚心に見つめたときの筆者の思いは、そういうものだった。 
                           瀬戸風 凪

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