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愛情と執着と

ドラマDEEP「肝臓を奪われた妻」見終えました!
おもしろかったのでみなさんも是非!

このドラマを見て感じたのは、
愛情表現の歪さと、執着でした。

病気の母親に肝臓を提供させるためだけに主人公の優香と結婚した光星。
優香の肝臓を奪うという目的を果たした彼は、
優香をバッサリと切り捨て、酷い言葉を浴びせるのでした。

光星とその家族に仕掛ける優香の復讐劇が前半の見どころでした。
ある程度復讐を遂げた後半は、
ラスボス光星の暴走と、
優香を守る存在たちの温かさの対比が印象的でした。

たくさんのことを感じたドラマでしたが、
特に愛情と執着について書きたいと思います。

以下、ネタバレを含みます。

光星の欲したもの

光星は幼い頃から母親の愛に飢えていました。
母親は自分のことを置いて男の人とどこかに出かけてしまう。
そんなことを思い出すシーンがたくさんありました。

結婚も決まっていたある時、母親が病気になり、「また自分を置いてどこかにいってしまう」と自分の境遇を嘆きます。
そんな時に出会ったのが優香でした。

優香は唯一の家族である母親が病気になって大学にも行けず、
自暴自棄になったり文句を言ったりするには十分な境遇のなか、
前向きに、一生懸命働いていました。
人の気遣いに感謝できたり、素直に笑ったり、純粋すぎる彼女の姿は、
荒んだ光星にどう映ったでしょうか。

この子は可哀想だ、綺麗事だ、嘘だ、なんで自分はこんなに苦しいのに、劣等感、こうなりたい、安心感、希望、絶望、我慢の決壊、愛情。

ぐちゃぐちゃになった彼の心は、
優香の純粋さを欲しました。
汚してしまいたいとさえ、思ったのでしょう。

また結婚しよう

優香と別れた光星は、ある時、
優香が自分や家族にこっそり近づいて復讐を企てていることに気がつきました。
ある程度復讐をされた後、光星は、優香に再婚を持ちかけます。
優香と光星の子供である結人のことを攫ってまで一緒になろうと揺すります。

復讐に快感を覚え始めていた優香を見て、嬉しそうに笑って光星は、
「僕と君は似ているんだ」と言います。

恐ろしい所業です。でも、不器用すぎる彼の、歪な愛情表現だと思いました。

優香にここまで執着するのは、なぜか。
やっぱり大好きなんだと思います。
そして、堕ちていく、自分のように歪んでいく彼女の姿を見て、
合間に見えるピュアな笑顔や子どもとのやりとりを見て、
放っておけなかったんだと思います。

愛し方を分からない彼は、優香から全てを奪うことで満たされると、信じていたのかもしれません。

優香が手放したもの

優香もまた、光星への復讐に執着していました。
周りに危険が及んでも、光星を倒すまでは終われないと、必死で復讐に励みました。
本当は優香を気にかけてくれる小栗のことが、ずっと前から好きだったと思います。そんな気持ちに蓋をしていました。

でも、固執した気持ちを溶かしたのもまた、純粋な愛情でした。
小栗は、ただ優香と結人のことを守りたいと一生懸命、優香に愛情を伝えました。
受け取ってもらえなくても、綺麗事でも。
そんな小栗の存在が、優香の執着を少し、剥がしてくれました。

最終話で、ずっと「あの人」と呼んでいた光星のことを、
優香は久しぶりに「光星さん」と呼び、
どこまでも綺麗な心で彼に胸の内を伝えました。
それは綺麗事にも聞こえるような、ぬるくも聞こえるような純粋な台詞でした。
でも、たくさんのつらい経験をしてきた上で、
それでも悪に染まらなかった強さが見えました。
奪い合うのではなく、与えられる彼女はどこまでも強かったです。

「光星さん」への執着に、自分らしく区切りを付けた優香は、
帰り道、駆けつけた小栗と出会います。

「お帰りなさい」「ただいま」

このやりとりは、ただの挨拶じゃなくて、
復讐に囚われて自分らしくなくなっていた自分から、
本当の自分に帰ってきた安心感に包まれていました。

まとめにかえて

愛情ってなんだろうと時々考えることがあります。
その人の幸せを願うことでしょうか。
それとも、その人を通じて自分が幸せになることでしょうか。
会ったり、話したり、傷つけたり、関わり合い続けたいと願う愛情は、
時に自分本位の執着に変わるのだろうと思います。
自分の悩みや苦しみに、誰かを介して固執していると気がついた時、
そして、本当に欲しいものや大切なものに気がついた時、
ふっと手放して、気持ちよく生きてゆけるのかもしれません。
でも、それに気づかせてくれるのもまた、
誰かの愛情だったりします。

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