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ハクチョウ

「うわあーーーー。ハクチョウだー!!」
久しぶりの休日、2人揃ってのお出かけはものすごく久しぶりだった。
だからか、私はいつも以上にテンションが高かった。

「あれ?ハクチョウって、冬に渡来してくるんだよね?なんで9月にいるの?」

私はハクチョウは冬以外はシベリアにいて、冬に日本に飛来してくるはずだと言うわずかな知識を動員した。

「それは、コハクチョウとかオオハクチョウのことだよね。これは、コブハクチョウって言って渡来しないハクチョウなんだよ。」

得意気に彼が言う。

「へぇーーー、よく知ってるね。そんなに鳥に興味あったっけ?」
「前に来たことあって、調べたんだ…あ。」
彼はヤバイ。と言う顔をした。
私はピーンと女の勘を働かせた。
「わかった。過去に女の人連れてきたんでしょ。それで、カッコつけるために調べたんでしょ?」
彼は、なんでわかっちゃうの?!と言う顔をして私を見ていた。

素直だなあ。

すぐ顔に出ちゃうから、わかりやすい。
そう言うところがまた可愛いんだけど。

「ははは、そんな、うちらいくつだと思ってるの?そんな過去に彼女と来るために勉強した。なんで聞いても、なんとも思わないよ。」
「そうなの?」
「そうだよ。今が大切だもん。過去があるから、今があるんでしょ?」

そうなんだ。
そう、安心したような顔をして、私と手を繋ぐ。
2人でゆっくり湖畔を歩く。

「で、可愛い彼女だったの?」
私はなんだか少し意地悪をしたくなった。

「そうだね。今までで1番綺麗な子だったな。」

そこは、素直に言うんかい!!
私は言葉を返さなかった。

ふふふっ
と彼が笑う。

「何よお。」
「ふふふ、だって。わかりやすいなあと思って。」
そう言って私の正面に回り込む。
「意地悪のつもりで言ったら思いの外素直な反応だったから、つい。
ふふふ。可愛いなあ。」

この人はいつでもそうだ。
もう30も超えた女の人に対して、素直に「可愛い」と言う。
ずるいなあ。そう言われたら、大抵のことは許してしまう。

「ハクチョウ、可愛いね。」

私は、少しごまかしながら、ハクチョウよりもあなたの方が可愛いよ、と心の中で叫んだ。


あとがき
ある動画を見て、妄想デートしました。
妄想なんで、甘々です。あーしあわせ。


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