普段本を読まない人向けミステリー小説10選を読み終わった人向けミステリー小説10選 9月7日(日)


「普段本を読まない人向けのミステリー小説10選」なんてサイトは見飽きたしもう大体読んでいるから、誰か「普段本を読まない人向けミステリー小説10選を読み終わった人向けミステリー小説10選」を作ってほしい!

作りましょう。

選考基準は「ミステリー小説 初心者 おすすめ」と検索して上位に表示されたいくつかのサイトで選出されていない作品。シリーズ作品では1作目を挙げる。あと俺がほとんど日本人作家の作品しか読まないから日本の作品だけ。あと作品についてあまり調べないで書いてるから間違っている箇所が多少あるかも。黙れ。


・珈琲店タレーランの事件簿/岡崎琢磨
上記のサイト群で紹介されていないことに驚き。俺が見逃しているのかも、と思うほどおすすめの作品。京都の珈琲店が舞台の、俗に言う「人が死なないミステリー」。だからといって軽くて物足りない訳ではなく、暗い場面はしっかり暗く、トリックも適度に複雑で難解。可愛いバリスタのお姉さんが自信満々に謎を解いていく。ラブコメ要素が多少あるので、取っ掛かりやすい気がする。早く続編が出てほしい。

・眼球堂の殺人/周木律
堂シリーズ第1作。綾辻行人の館シリーズよりも建物に依っているミステリー。森博嗣のS&Mシリーズとよく並べられるけど、そこまで理系ミステリーって感じではない。まず、トリックが壮大かつ荘厳。本格ミステリー味が強く、館シリーズが好きな人は絶対に好きだと思う。ちなみに、堂シリーズは順番通りに読まないとよくわからなくなる。俺は失敗した。売ってなかったんだもん。

・その可能性はすでに考えた/井上真偽
これはまじで凄い。奇蹟を追い求めている探偵のもとに奇蹟っぽい謎が持ち込まれ、やったー!と叫んでいる探偵を周りの人がありとあらゆる可能性を挙げて奇蹟じゃないよと論破しようとする話。奇蹟ではない可能性が0ならば奇蹟、という背理法が軸なので、宿敵たちが数パーでも成立する推理を挙げたら探偵の負けという非常に不利な盤面を、探偵が華麗に乗り越えていく。探偵による解決編のない珍しいミステリー小説。

・アリス殺し/小林泰三
怖いし、難しい。現世と不思議の国を行き来する構成の作品で、しっかり読んでいないと置いて行かれる。しかし、不思議の国の住人たちの会話は支離滅裂で、真面目に読んでいたら気がおかしくなりそうになる。グロいシーンがあって、読み飛ばしたくなる。読まなきゃいけないのに、読む気になれない。ぐちゃぐちゃになりながら結末までたどり着いたら、結局読み返すことになって、しっかり読んでおけばよかったと思う、そんな作品。

・火蛾/古泉迦十
宗教×ミステリー。論理が求められるミステリーに神秘的な宗教という要素が組み込まれ、共存している。俺にとっては、前半はほとんどファンタジーだった。後半になるとミステリー要素が強くなり、最終的には二重解決というミステリーの中でも謎に重きを置いた作品でよく見られる形式が使われており、さらに推理はバチバチ論理で、それをシャーマンみたいなやつが煙の中で語るという最高に興奮する展開。前半は耐えよう。

・楽園とは探偵の不在なり/斜線堂有紀
2人以上殺した人を地獄へ落とす天使という存在がいる世界が舞台の、特殊設定ミステリー。天使に関する謎と、トリックに関する謎の双方を考えなければ解くことは出来ない、頭を使う作品。また、人物描写が丁寧で、作品に入り込みやすい。普通のミステリーを読み飽きた人におすすめ。特殊設定ではあるけど内容は本格ミステリーだから、俺は本格しか読まないよ何故なら死んじゃうからね、という人も安心して読んでほしい。

・紅蓮館の殺人/阿津川辰海
王道本格ミステリーシリーズ、館四重奏シリーズの第1作。表紙、タイトルがあまりにも本格ミステリーすぎて、出てすぐ本屋で見つけて嬉しくなっちゃって即買ったことをまだ覚えている。中身もしっかり本格ミステリー。トリックに重点が置かれつつ、ところどころで読者を驚かす要素がある。探偵が高校生で、探偵としての生き方について思い悩んでいるところも面白い。本格ミステリーの探偵なんて大体は好奇心旺盛で子供みたいな中年男性だからね。ページ数が多くて読みごたえがある。個人的には2作目の蒼海館の方が好き。

・月光ゲーム/有栖川有栖
学生アリスシリーズ第1作。超超超王道本格ミステリー。良い意味で古臭い。クローズドサークルでダイイングメッセージも出てきて、ミステリーの醍醐味が詰め込まれているのに綺麗に纏っている。登場人物が大学生で、青春モノとしても面白い。推理小説サークルのメンバーということで、他のミステリー作品が作中に登場するのも、身内ネタみたいで楽しいね。

・翼ある闇/麻耶雄嵩
メルカトル鮎シリーズ第1作。問題児。一応本格ミステリーの様相をとってはいるが、本格ミステリーという基礎の上に違法建築を建てました、という感じ。まず、探偵の名前が「メルカトル鮎」。性格はゴミ。セリフも何を言っているのかよく分からないし気障ったらしい。多分ここまで挙げた作品が好きな人の半分は好まないであろう作品。でも俺は好き。メルカトル鮎シリーズでは無いけど、同じ作者の『神様ゲーム』もおすすめ。

・虚無への供物/中井英夫
ぎゃー!!!何故なら長くて難しいから。1964年刊行で、舞台も文章も古くてお前らみたいな乳臭いガキには馴染みがなくて読みづらいと思う。でも、ミステリーとして完璧に近い作品。登場人物、トリック、舞台設定のどれもが美しく、作者のパワーを感じる。特に注目されるのが結末なんだけど、今では同様の結末の作品は沢山あるけど、恐らくこの作品が走りだと思う。日本三大奇書のうちの一つだけど、他2冊に比べたら圧倒的に読みやすい。


以上。どれも有名な作品だけど、俺は「他にも沢山読んでいるけど、まだミステリーをあまり読んだことがない人のために有名どころを選びました!」なんてダサいことを言うつもりはなく、サイトで紹介されていなかった作品のうち面白い作品を10作品挙げた。有名な作品は面白い。有名な作品から読んだ方がいい。賞を取っている作品を読め。メフィスト賞を読め。

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