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働くを考える話④靴職人編


何者でもない

週5日、せっせとPTとして働き、疲れ果てて眠り、時に愚痴を吐き、時に泣き、毎日ぎっしりと詰まった予定をこなしながら

週末が来れば、靴職人たちに混じって靴を作る。

自分には何が出来るのか。理想はあるけれど、たどり着くには程遠い。

医療現場の現実と、少しアートな職人たちの世界とを行き来しながら

ここに接点はあるのか、今までやってきたことが繋がる日が来るのか。

何でも出来るようで、まだ何者でもない自分に不安と焦りを感じていた。


相方が旅立つ

いつの間にか付き合うことになっていたコーヒー店長。(この話はいつか)

大手食品企業で働いていた彼も転職することになった。

長野の有名な珈琲屋さんで働く事が決まり、準備が進む。東京と長野で少し離れて住む事になり、これをきっかけに自分の時間の使い方も改めて見直すことになる。

お互いに、思い思いの事を精一杯やること。私たちらしいスタイルだと思う。

思えば、靴教室に通う時背中を押してくれたのも彼だった。離れる寂しさはあるものの、お互いに新しい場所で学ぶことは、きっとこれから先、もっと豊かに考えたり話し合ったりできることに繋がるはず。


大人の学校

靴教室は、まさに大人の学校だった。 靴の事だけでなく、革のこと、デザインのこと、お店作りのこと、人との繋がりのこと、物を見る感性、物の価値、多様な生き方、、、 全てが学びの連続だった。

靴職人という、突然出くわした職業と、そこに集う人たちに刺激を受けていた。


ある日、革包丁で思い切り手を切ってしまってパニックになっていたら、目の前座っていたハワイから学びに来たというロン毛の彼が、必死に止血の方法を教えてくれた。

英語が物凄く苦手な私的な解釈だと、

『スーパーゲルっていう薬があって、それを塗れば一発で傷口なんて閉じるさ!ちょろいもんだぜ!元気だせ!』的な事を言っていた。

私は話せないなりに、『ホント〜!?そんなもん近くに売ってるんか?キズパワーパットのこと?めっちゃ痛いんやけど、これどうなるんやろ?教えてくれてありがとー!』みたいな事を伝える。多分伝わっていないが、お互いジェスチャーで分かった風になった。今でもその傷は薄らと手に残っていて、たまに思い出す。

今思うと笑ってしまうが、緊張しながら通っていたその場所も少しずつ居心地が良くなっていた。

なんだかみんな寛容で、一生懸命で、それぞれが個性を大切にしていた。

必死な大人、楽しそうな大人を見たのも久しぶりだったかもしれない。


手を伸ばすもの、手離すもの

自分が心地よいと思える選択をしよう。

今まで週5仕事、週2学校だったのを(これもまぁまぁ無理してた)

週4日学校、週2日仕事、週1日色んな物を見にいく日に変えた(一番行ったのは美術館、とにかく街を歩く、作家さんの作品を見に行くなどなど、放浪)

決断をしたものの、一番心配だったのはお金。東京の一人暮らしの家賃と生活費を賄うのは、まぁまぁ大変だった。

前の職場の先輩がたまたまPTのバイトを紹介してくれて

時給2100円×8時間×週2日(この時給に初めて国家資格を実感)

今までの貯金を切り崩しながら、生活費と教室代を払う。

そして、甘く見ていたが、材料の革や道具の高いこと。

手元に残るお金はほとんどなくて、スーパーで安売りの鶏肉を買うのに15分悩んだ日もある。

狭いワンルームのアパートで細々料理していた日々は忘れられない。

計画性のなさと、見積りの甘さで銀行口座の残高が35円になったときは、さすがに怖くなって部屋の隅で丸まって泣いた。

阿保過ぎる。

泣く泣く実家に電話する。本当に本当に情けない。

実家から届いた段ボールいっぱいの食料と母からの身体を大事にね、という手紙に胸が苦しくなる。

あぁこんな娘ですいません。猪突猛進、なんとかなると思って生きてきたけど、なんとかしてもらってる甘ったれ。

好きなことを仕事にするなんて、自立して自分の足でしっかり立っている人がやっと言えることではないか。

生活すら危うくて何が叶うのか。結局お金がないと始まらないのか、でもお金を貯めて、計画を立てて、安心材料を作って、、、とかそうこうしている間に貴重な時間と経験はどんどん過ぎ去ってしまうのではと不安になる。

自分で勝手に決めたタイムリミットに追われ、そんなことをぐるぐる考えながら生きていた。


この長々した記事を読んでくれている方はもうお気づきだと思うけれど

本当に0か100かの人間で、

丁度良い、いいバランスみたいなところを見つけるのに物凄く時間がかかる。だから無茶して痛い目見るまで走っちゃうのかなぁ?(反省しろ)

良い塩梅。むずかしい課題



この靴教室に通う間にも、本当にいろんな出会いと想いがあったけれど

キリがないのでこの辺りに。

とにかく、見たことのない初めての世界に

心が揺さぶられる日々だった。


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