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碧の夢 -序章-

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かなり長いファンタジー小説です。 構想が長過ぎるから、書き始めないと終わらない。 不定期に更新していきます。
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2020年12月の記事一覧

碧翠の矢 ⇔ 紅橙の剣

緑が生い茂る穏やかな小道は、そよぐ風にサワサワと優しい音を立てていた。
ついほんの10分ほど前に、数人の無関係な者たちを殺め、建物を破壊し、父親だと尊敬していたはずの人物さえ殺してしまった。
空を見上げながら、不思議とジルの気持ちは落ち着いていた。
「これは現実なのか?本当に、ボクが彼らを、父を殺したのか……?」
信じがたい事態に、現実感を失った彼の脳内はふわふわと浮ついていた。部屋に戻り、一晩過

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碧翠の弓矢

張り裂けそうな胸の内を碧色の光に変えて、彼の身体は空を疾り抜けていく。
誰も彼も、おそらく吹き抜けた風ですら彼の姿には気付けない。音速を越える脅威的なスピードで、彼は一点を目指して飛び去っていく。
グラベル大聖堂、その堅固な門の僅かな隙間を煌めく光の矢が擦り抜けていった。門番は後を追う風に少し首を傾げたが、何も気付けるはずなど無かった。
碧翠に輝く矢は大聖堂の中を雷の如く疾り抜け、館長室の扉を激し

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