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エアレースに魅せられた女(フェラーリ599の怒涛の推進力)

俺は今、ピニンファリーナのデザインによるベルリネッタを走らせている。腕にはヴィンテージのRolexデイトナを巻いて。
ショットガンにはまた別のレディだ。

俺のマシンはフェラーリ599。
このFRのV型12気筒モデルは「フェラーリ599 GTB フィオラノ」が本来の車種名だが、日本では数字だけの名称「フェラーリ599」になった。
「GTB」(トヨタ自動車)も「フィオラノ」(オートバックスセブン)も商標登録されて経緯があり、「599」は、単純に5,999ccのエンジンだからだ。

深掘りすると「GTB」はグランツーリスモ ベルリネッタの頭文字。
「ベルリネッタ」とはイタリア語で高性能の屋根付きクーペの事であり、ドイツのベルリンでその昔に二人乗り馬車が、ベルリン式馬車(berlinetta/ベルリネッタ)、と呼ばれていことに由来している。
「フィオラノ」はその地名にあるフェラーリのテストコース名に由来する。

こうした名称一つとってもフェラーリは興味深い。

ロングノーズのこの美しいプロポーションを手がけたのは、ピニンファリーナ在籍のジェイソン・カストリオタというのが通説だが、同じくピニンファリーナ在籍の日本人デザイナーによるという伝聞もある。

性能面では6リッターV12エンジ620hp、62.0kgmをほこり、強めのショックを伴いながらも0.1秒でシフトする「F1スーパーファーストギアボックス」を搭載など、カタログ上のスペックは優秀だ。

しかし、フロントヘビーのV12は少しデリケートであり、200キロ超えるとカーボンブレーキながら心もとない。特に下りコーナーでは想定以上にリアが滑ってカウンターを充てる事もざらで、むしろパワースライドを楽しむ。

フラッグシップの599と言えども、走りは文字通りの跳ね馬だ。

リストウォッチは、フェラーリ伝統のV12の鼓動には、あえて手巻きロレックス・デイトナがいいだろう。
ヴィンテージデイトナのコレクションからレファランス6240を選んだ。
実は日本で誰もが知る人気のメンズアイドルグループのメンバーが、かなりのヴィンテージデイトナのコレクターでもあり、彼らと競って手にした逸品でもある。黒いプラスチックベゼルとシルバーの文字盤に、特に溝のないプッシャーは特徴的だ。この品番6240はプロトタイプではないかとも言われてくらい希少で珍しい機種だ。

さて、599にどのレディを乗せるか。
今回は航空自衛隊の百里基地へのツーリングだ。エアレース好きの彼女なら喜ぶだろう。

彼女は以前から知り合いで、エアレースパイロットの追っかけをしていた。
空のF1と言われるエアレースのパイロットには、単発プロペラ機ながらF1の10倍以上の12Gフォースもかかるらしい。
戦闘機をより近くで眺望できる百里基地は、やはり楽しめた様子だ。

わー、凄い迫力で、こんなの見学出来て嬉しい。

スクランブル発進だったのか、戦闘機複数が矢継ぎに飛び立つ姿を見て、150センチくらい小柄な身体を震わして感動していた。

基地見学は早々に引き上げ、帰路はまだ空いていた。

スロットルペダルを思い切り踏み込み、太いが高らかなエグゾーストノートが響き渡ると、フルオーケストラの演奏会に居るかのような領域に至る。

心地良いV12の鼓動と共に、怒涛のパワーで車体を前へ引っ張り上げる加速感にレディも悦に入っているようだ。 
ふとメーターを見ると300近くまで到達していた。

そう言えば、英語のPropeller の語源はラテン語のPel =Drive (駆り立てる)から来ている。pro = forward 前へ pel 駆り立てるなので、propel (推進する)であり、名詞がpropeller になるのだ。

その後、二人がベッドでプロペラを回していた時、手巻きデイトナのプロペラも渦巻いていた。

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