人の気も知らないで

『〇〇な人もいるんです! △△の気持ちも考えてください!』と口に出して言ってしまえば迷惑な人になってしまうけれど、そう思うこと自体はある。めちくちゃある。自分でも止められない。どうしてもその部分を重く捉えてしまって許せないのだ。いや表面的には十分に許す気持ちになっていて腹も立たないしなんとも思わないし枝葉末節であることは理解してるしやり過ごせるのだが、心の奥底ではくすぶっている。

なんだよ。

人の気も知らないで。

ただ、人の気も知らないでとすねている方も他の人の気を知っているわけではない。おいしそうにアイスを食べやがってダイエット中の人の気も知らないで、と思った向こう側の誰かにとって、そのアイスは事故に遭って味覚を失った中で唯一甘さを感じられる食べ物なのかもしれない。

人の言動の重さは傍目からは決してわからない。人の気を知ることはできない。

そのなかで許せない重さがだんだんさらに重くなっていく。許しているつもりで許せていない。自分とこの世界のつながりに対する恨みがある。この世界と自分の絆だ。煮詰めたタールの底に沈んでいる太い縄と心の底にある錆びた楔だ。まさにそこで世界と繋がっている。

生きていて、どうにもできないことができてしまった。それが本当にどうにもできないことを深く深く確かめていくように生き延びている。

人の気も知らないで生き延びている。

呪われた装備の重みがわたしにある。きみにもきっとある。こんなふうにしか世界と繋がることができないという絶望と、きみもそんなふうにしか繋がれないのかもしれないという曖昧な希望、つまり生きてると色々あるよね大変だよねほらあんなふうにと笑って指差す何かを作れればいい。

あーあ、またこんなことを性懲りもなく、人の気も知らないで。泣いてもどうにもならないよ。


続けられるかわかりませんが過去作の曲の単品販売に使おうかなと思ってます