銀色のおくりもの(夢で見たお話エピソード6をもとに創作しました)

「姫さま、王様からの贈り物が届きました。」

「それならば、いつものようにこちらまで運んでくださらない。」

「姫さま、大変申しわけないのですが、姫さまにいらして頂きたいのでございます。」

重臣は部屋に入り、姫さまに深々と頭を下げると背すじをすっと伸ばし、手を差しだしました。

いつもワガママも聞いてもらっている姫さまですが、重臣がこの表情をしている時は無理。
姫さまは一つため息をつき立ち上がりました。
今の姫さまにとって贈り物なんて、どうでもよかったのです。

お姫さまは、お友だちの王子さまと、またケンカをしてしまいました。その日から一週間も過ぎたのに、まったく音沙汰無いことがとても気になっていたのです。

重い足どりで広間に出ると、ピンク色の大きなリボンがかけられた、銀色の大きな大きな箱がありました。 

重臣が、パンと手をたたくと、ピンク色のリボンがするするとほどけて、静かに銀色の箱が開きます。

お姫さまが目を丸くして見ていると、中から銀色の車があらわれました。

「さあ、さあ、お嬢さん!ぼっーとしていないで、君のライフカードを差しこんでおくれよ!!」と突然、車がしゃべりだしました。

ライフカードとは、この国で暮らす全ての人が持つカードです。そのカードには、生まれた時からの情報が自動的に記録されていくのです。

「しゃべる車なんて、気持ち悪いわ」とお姫さまがつぶやいた時、目にも止まらぬ速さでお姫さまのライフカードは宙を舞い、車に吸い込まれてしまいました。

「よし!君の情報は分かった。さあどうぞお乗りくださいオードリー姫さま。」

ライフカードと命は一心同体、しぶしぶお姫さまは銀色の車に乗りました。

「さあ、オードリー姫、君の好きな場所へどこでも行こう。」

「えっ、どこにでも行けるの?」

「そう、どこにでも行けるのさ。君は行きたい場所をイメージしたり、言葉を思いうかべるだけでいい。」

「わかったわ。」

お姫さまは。お友だちの王子さまのことを考えました。

次の瞬間、激しい雨が降る水面の上にいました。

「おいおい、車がさびちまうよ。ここはどこだ?ははーん、君の涙の湖水だな。一週間の間、こっそりと、そして、わーんわーんと泣いていた。」

「どうしてわかるの?」

「何たってぼくたちは今、一心同体。テレパシーでわかるのさ。」

「あっ、ライフカードのせいね。勝手に読まないで、気持ち悪いわ。」

「おいおい、また言ったな。キモチワルイ!
オレ様はその言葉が大嫌いなんだ。キモチワルイなんて失礼じゃないか!」

「何を言ってるの?私のライフカードを取ったのはあなたよ。」

「ストップ、ストップ、ストッープ。それより早くここから抜け出そうぜ。雨つぶが雪に変わってきた。」

お姫さまが辺りを見わたすと、一面真っ白な世界になっていました。お姫さまはもう一度、王子さまのことを考えました。

「まったく素直さのかけらも無いんだな。」と銀色の車がぼやきました。

お姫さまが目をあけても何も見えません。

「ここはどこ?」

「君の心の闇の中さ。ぼくも早くぬけだしたいね。」

「私はただ、会いたい人を思っただけよ。」
お姫さまの目から、先ほどの雨のような涙があふれてきました。

「おい、やめてくれ、本当にさびちまうよ。」
銀色の車は困ったようにそう言いながら、お姫さまのライフカードを高速で読みました。

・2歳 母親である女王さま亡くなる
・義理の母は、人前で一緒にいる時は優しいが、本当はとても冷たい
・王様は本当は再婚したくなかった。6歳のお姫さまと別の国へ逃げる計画は阻止された。
・義理の母から、お城から一歩も出ないように命ぜられている
・人前では涙をみせないと決めている
・お友だちの王子さまは、義理の母の目から届かない国から重臣がこっそりお呼びした方
エトセトラ、エトセトラ

『ふーん、なんて陳腐な人生なんだ。これじゃ巷にあるおとぎ話を真似したみたいじゃないか。ちぇっ、つまんねー。』と銀色の車は思いながらも言葉には出さずに言うのです。

「そっかあ、オードリー姫も色々と大変なんだな。それならば相手への気持ちを心の中でつぶやけばいい。」

「そうなの?わかったわ。」

と、次に移動した先は、巨大なラビリンスが広がっているのでした。

「自由自在のタイムマシーンなのに、こんなに不自由なことは初めてだ。』そう銀色の車が叫ぶと、フロントガラスに文字が浮かび上がりました。

『キミノ ナカニ アル マコトノ キモチ タダ ソレダケヲ コトバト セヨ』

「簡単に言うとな、太古の昔から、人の願いは100%叶い続けているんだ。ただ、オーダーの出し方を間違えている。ウソやオソレ、イカリやカナシミ、ミエヲハル、ニゲル、カンジョウニナガサレル。てやんでい!人間は進歩してねぇなぁ〜。お友だちの王子さまに会いたいんだろう。」

お姫さまは、こくりとうなづきました。

「本当は言っちゃいけないルールなんだ。ライフカードで全てみえてしまうからこそ、主導権は君にある。でも、これ以上迷子でいられない。」

お姫さまは、仲なおりの印と、いつも野でつんだ花を届けてくれる王子さまを思い出していました。
「好きなのに、大好きなのに、こんな私では愛してもらえないと思うの。」

「お〜、いいね。今の言葉を正しく言ってごらん。そうしたら、きっと、彼に会えるよ。」

「私は、あなたを愛しています。」

どどどどどどど・・・と掘りおこすような音がして、ぽんと洞窟のような空間へ飛び出しました。そこでは戦いが繰り広げられていました。

「あっ、あそこに王子さまが」

ピューンと魔法のじゅうたんのように、銀色の車が空を飛び、王子さまをつかまえました。そして助手席に王子を放り込むと「姫!早くご自分の部屋を思い浮かべて!」とさけびました。

王子さまの話によると、お姫さまからという手紙が届き、あけてしまったところ眠ってしまったそうです。

目が覚めたら見知らぬ場所にいて、地面の下の小さな国の使いだという人物が現れた。
妃さまがそなたのことを気に入ったのでお迎えしたいと伝えられことわりました。

そうしたら使いの人物は、巨大なミミズにかわり、ぐるぐる巻きにされ、牢屋に入れられてしまった。でも何とか抜け出して戦っていた時だったそうです。

昔のおとぎ話のような話しですが、ともかく無事で良かった。めでたしめでたし。

「オードリー姫、短い間だったけれど、最高に楽しかったよ。ぼくはもう行かなくちゃいけない。」

ポンとライフカードを飛ばして姫さまに返すと、車は走り出しました。

「どこへ行くのですか。」

「地面の下の小さな国のお妃さまのところさ。今度は彼女のハートを癒さなくちゃね。」

そう言うと銀色の車は流れ星のように見えなくなりました。

走りさった銀色の車を見つめていた、もう一人の人物がいました。お姫さまの重臣です。

実は、あの贈り物は、重臣が王さまにはないしょで届けたものでした。それにしても、銀色の車といつ知り合ったのでしょうね。

そのお話はまた夢でみれたら、その時にお届けしましょう。おわり




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