サラットナさん 第十六章

キッシュが美味しい喫茶店で、はるかちゃんと会った。残念ながら旦那はキッシュが作れないのだ。

「素晴らしい巫女さんが、また一人いなくなったと神主さんたち泣いてましたよ。」

「大丈夫ですよ。他の巫女さんたちも育ってきていますし、今は心強い貝塚さんもいらっしゃる。」

「いえいえ私なんて、3時のお茶が楽しみで行くようなものだもの。ところで気分が悪くなってしまうのよね。」

「すみません、その話に入っても大丈夫ですか?
ご飯を食べるとすぐ気分が悪くなってしまうんです。あと婦人科のお医者さんから妊娠しづらい体型してるって言われて。」

思わず、はるかちゃんを2度見してしまった。
何だその医者の目、節穴か?運動神経抜群で難しい巫女舞はもちろん神社の中核としてテキパキ働いていたんだよ。大祭の時、後輩巫女さんや私への指示が的確だったこと。趣味のブレイクダンスだって楽しんでいる素敵な子じゃないか。

「貝塚さん、すみません。ちょっと席を外します」と、はるかちゃんが席を立つ。

さっ、と誰かがテーブルにメモを置く。
【体全体をみよ】
?、動く人影の方を振り向くとサラットナさんが誰かといる。

「話の途中ですみませんでした。それで、不妊治療をはじめようかと家族で相談中なんです。」

「はるかちゃん、オレンジジュース飲み終えているから喫茶店でましょう。私も食べ終わってるし。体全体を見たいわ。」

お会計を済ませて外に出た。ちょっとあやしい人かもと思いながらも、喫茶店の壁にそって、はるかちゃんに立ってもらう。ものすごい反り腰だ。

見た目は美しいけれど、腰は思いっきり後に引かれ、胸とお腹は前方に出ている。

まず、頭の後、背中、お尻、ふくらはぎ、かかとが壁に自然につくような姿勢を心がけることをすすめた。歩く時も、壁で整えたその姿勢で歩く習慣をつけること。極端な反り腰だから、もしかすると胃が気持ち悪くなるのは、胃が圧迫されているのかもしれないことも伝えた、

帰宅後、先月購入したボディ図鑑を開く。はじめて役立てると本が嬉しそうにみえる。
内臓が安心していられるように、本来はゆりかごの役割をしている骨盤の図を見つける。
反り腰のために骨盤が後ろにいきすぎて、胃をはじめとする内臓が、うまく骨盤におさまっていないことが想像できた。

その図を写メって、はるかちゃんに送る。
おなかの気持ち悪さが取れると良いなぁ。



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