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脳が吸うのをやめれなかった

脳が吸うのをやめられなかった

初めてチャトラムーを飲んだ友人が第一声で発した言葉である。カオサンで合流した筆者たちは、まだタイの位置関係を知らず、友人に逸材ドリンクを布教したいがために、1時間半かけて店舗を探した。季節は絶賛雨季。スコールに降られ、びしょびしょになりながらなんとか辿り着いた。

ここまで友人に無茶をさせたのに美味しい茶は無いなんていう冗談は避けなければならない。到着までの苦労のせいで、否が応でも期待値はあがる。布教師としてのプレッシャーにお腹が痛む。あぁこれは昨晩の屋台ガパオのせいか。一つ傘の下で、ここまで歩かせておいてそこまでの味だったら帰りのタクシー代は払ってもらうぞという友人の声が聞こえそうになる瞬間、チャトラムーは現れた。

速攻で注文し、イートインコーナーで最初の一口を吸う。しかし友人は待てど暮らせどうまぁ!を口にしない。帰りのタクシーを奢らないといけないのか!?と不安に駆られたとき、友人は突如、


「脳が吸うのをやめられなかった。
息するのを忘れた。」


と叫んだ。見ると彼女は既に3分の2を飲みきっていた。
その後友人は筆者のまだ一口しか減っていない容器を見て、


「なんでまだそんなにあるの!ずるい!なんで私もっと考えて飲まなかったの?!ばか!!」

と駄々なのか後悔なのか反省なのかを述べていた。

この反応には筆者もなかなか満足した。筆者だけが究極の美味しさと感じていたわけではなかったことにも安堵した。

その後、我々はチャトラムーに魅了される余り、チャトラムーは日本で手に入るのか、いくらで買えるのか、極めつけはインターンを募集しているのかまで調べることに興じていた。たった一口で人間はここまで興奮できるのだなぁという感心から、筆者はチャトラムーを麻薬的だとよぶようになった。もちろん合法だし、人様に迷惑もかけない(よっぽど何杯も飲んで人様のトイレを借りるとなるとまた別だが)ので、あくまで前向きな意味での麻薬である。近くのスーパーでインスタントのパックを見つけ、これまた合法に密輸した。

教えてくれてありがとうと友人には感謝されたが、むしろ感謝したいのは筆者の方で、チャトラムーが明らかに美味しいのだと確信を持つきっかけの日となった。

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