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ぽっぺのひとりごと(37)さようなら中洲大洋劇場 今まで映画をありがとう


福岡中洲大洋劇場が78年の歴史に幕を下ろすことになった。それは特別な映画館。文化の殿堂と言ったらいいだろうか。


昭和21(1946)年4月3日にオープンしたというから、終戦の翌年だ。創始者の岡部重蔵氏は敗戦で家族を亡くし家を失くし、笑顔を失った人々に娯楽を与えたかった。「市民に元気になってもらいたかった」と語っていたそうだ。当時、1000席を有する豪華な映画館は大変な話題となったことだろう。
記念すべき第1作は『チャップリンの黄金狂時代』(1925年製作)。4月3日から17日までの2週間で、6万624名の入場者を数えたという。料金は4円50銭だった。


人々に夢を与え続けた大洋劇場は躍進を続け、時代の要望に応えスクリーンを増やしていった。
大洋1は301席、2は150席、3は80席、4は50席へと変貌を遂げた。1階にはキネマカフェもある。映画館専用の椅子を作っているフランスの会社から買い入れた、深紅の座席は素晴らしい。

私がこの劇場を初めて訪れたのは、METの「ライブビューイング」を観るためだった。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場での公演を撮影し、サブタイトル(字幕)を付け、世界中の映画館で上映するという夢のような企画。しかも、公演の約2か月後というスピードで。許可されているのは巨大なスクリーンと高品質の音響設備を備えた映画館に限られている。全国で20か所。九州では福岡中洲大洋劇場と熊本ピカデリーのみ。

初めて鑑賞したオペラはドニゼッティ作曲の『連隊の娘』だ。ナタリー・デセイ(ソプラノ)とファン・ディエゴ・フローレス(テノール)の輝くばかりの歌声と世界最高峰の演技に心を奪われた。2008年のことだった。
私は「ライブビューイング」の虜となり、毎年10作品の中から2、3本選んで観に行くのを非常な楽しみとしてきた。一人で、時には友人と、いそいそと通い続けた。
『運命の力』『マクベス』『椿姫』『薔薇の騎士』『ルサールカ』『マノン・レスコー』『ウェルテル』『ファウスト』など、何10作ものオペラを楽しんだ。

高速バスに乗り、大洋劇場に足を運び、わくわくしながら階段を上り、深紅のシートに身を預け、ドキドキしながら幕が開くのを待つ。それは特別な時間。夢の世界に誘われる私。

いつもチャップリンが出迎えてくれた

大洋劇場は老朽化により3月31日をもって閉館する。3月いっぱいは「さよなら興行」として名作のアンコール上映22本、どれでも1000円。
ラストショーはチャップリンの『黄金狂時代』『独裁者』『街の灯』だ。


行こうかな・・・。きっと泣いてしまうだろう。やめようかな・・・。思い出の場所に、心の中で一人そっと「サヨナラ」をつげようか。でも、最後にやっぱり・・・。

みなさん、さようなら

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