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誰かの恋愛模様を覗く様な「都会の男女の恋愛法」

韓国ドラマや映画が好きとはいえ、なかなか「ラブコメ」ジャンルには手を出せずにいまして…(もともとラブコメをあんまり見ないので)それよりもサスペンスとかノワールが見たい!という気持ちが見たかったのですが、最近好きな俳優さん、リュ・ギョンス氏が出演しているという事で見始めてみたらめちゃめちゃ良かったです。食わず嫌いしててごめんなさい…そしてリュ・ギョンス氏はラブコメでも最高でした。(えぐい役のイメージが強すぎる)

あらすじ

海のそばで出会った、束の間の恋の相手。その自由奔放な魅力にすっかり心奪われた建築家は、多くの人が行き交う大都市ソウルで、彼女との再会を願うが...。

Filmarksより

特殊な作りのショートドラマ

「インタビューを受ける男女6人の恋愛模様」という変わった構成で、基本的に皆さん第四の壁は越えてくるし、ジャンプカットも手ぶれも、何でもアリ。ドラマというより本当にインタビュー映像の様なドキュメンタリーの様な作り。もちろんドラマパートもちゃんとあるのですが、ところどころでインタビューパートが入ってきて、これがまた面白いのです。私の様に「王道ラブコメ」みたいなものに苦手意識があるタイプには、こういう変わり種から入ったのは良かったのかも。

オフィシャルサイトより。バチバチにカメラ目線でこちらに話しかけます。

インタビュアー側の突っ込みがテロップで出たり、露骨なPPLが入ったり(そしてそれに「いきなり?」とか「また?」って突っ込むキャラクター達)も愉快で良かった。韓国のPPLって日本人には馴染みがないから、余計に引っかかる事が多いのですが、本作はその違和感をうまく逆手に取って面白く演出していました。コールドブリューのPPLも入るのですが、BTSパッケージなのでジミンちゃんやテテ、RMがチラッと写ったりするのも笑いました。

OSTへのこだわり

劇中で流れる曲はどれも良いものばかりで、ストーリーに合った曲ばかりうまく見つけてきたなあ…と思っていたら、どれもこのドラマの為に作った曲ばかりなのだとか。「Hello My Beach」や「Kiss me Kiss me」は本当に往年の名曲って感じがするから凄い。流れる時に注釈が入ったりするのですが、世界観に合わせた説明が入るのですっかり騙されてしまいました。そこまでこだわって作り込んでるのもすごい。因みに「Hello My Beach」はキャストがMVを演じるおもしろエンディングが流れる回があるのですが、みんなノリノリでこれまた良かった。
私はSURANのOne in a Millionがお気に入り。可愛らしい爽やかな曲です。

サントラはAmazonにもあるけど、YouTubeの公式動画からも聴けるみたい。

冬のソウルはなんでこんなにロマンチックなのか

ジェウォンの回想である襄陽でのシーン以外、現在進行形の舞台は冬のソウル。私、めちゃめちゃに冬のソウルが好きでして。梨泰院クラスもヴィンチェンツォも冬が舞台で、めちゃめちゃ好きでした。コートなどのファッションが好きというのもありますが、日本よりもずっと寒そうで、鼻や耳が赤くなって、白い息を吐きながら喋るキャラクター達を見ているととにかく魅力的で…本作も劇中ずっと冬で、いいなあ〜と思いながら見ていました。

THE SWOONより。雪の中歩く2人が素敵。

各キャラクターの家がいい

これは美術面ですが。ウノとゴンの雑多だけど好きなものだけが並んでそうな家、ジェウォンのハイクラスなこだわりを感じる家、リニの明るくてポップな家、どれも素敵でした。ウノとゴンの家は、リビングも各部屋も屋上もよく登場する事もあってかなり印象に残っています。特別キレイって訳ではないし、結構年季は入ってそうですが、それぞれが快適に過ごせる様に、好きなものだけで構成されたものがいっぱいの家が魅力的でした。

リニの家も、彼女が好きなものだけが詰め込まれた宝箱みたいな部屋でした。陽の光が入って明るい事が多くて、彼女のキャラクターも表している様な雰囲気。手作り感があって、一見バラバラに見えるものも不思議と統一感があって良かった。

ジェウォンの家は、憧れるハイソな家!って感じでした。古い家みたいに見えるエントランスの中に、完全に計算された真っ白の部屋。障子があったり柱が残っていたりするけど、バランスよく今風にリノベーションされてる?昔のニュアンスを残して新しく建てた?みたいな雰囲気でした。建築家のジェウォンらしいこだわりとハイクラス感を感じる家でしたね。どの家も真似してみたい〜!(ジェウォンの家はハードル高いけど)

キャストの良さ

もともとはリュ・ギョンス氏目当てで見始めたのですが、その他の5人もめちゃめちゃ良かったし、登場人物みんな魅力的でした。それぞれカップルなのですが、三者三様、みんな違って少しずつどこかに感情移入できるのがうまくできてたなあ。

ジェウォン&イ・ウノ

本作のメインキャラクターで、基本的にはこの2人の諸々を中心に進んでいくカップル。登場シーンも一番多い。すれ違い、勘違い、素直になれない、など、私がイメージする韓国ラブコメの基礎をしっかり踏んでいて良かった。笑
チ・チャンウク氏は絵に描いたような美男子で、背も高くパリッとしているのですが、も〜未練たらしいし、情けないし、イラついて分かりやすく荒れたりするし、酔っ払って警察に迷惑かけるし、そのギャップが良かったなあ。イケメンが情けないのって、スクリーンの中なら最高に面白いんですよね。笑

THE SWOONより。情けない時のジェウォン。

イ・ウノは、自分が嫌いだから自分に厳しくて、誰にも知られたくない過去があって(とはいえウノは全く悪くない事だし、きっとこれは彼女のプライドの問題なんだろうけど)ジェウォンは好きだけど、自分の事が好きじゃないから自信がなくて…一番多くの人が共感するキャラクターだった気がします。色んな制約を自分で作ってしまったが故に、素直に生きられないという悪循環。釜山でのエピソードがシリーズ中で一番泣いてしまいました。
襄陽での思い出は、ジェウォンだけでなくウノも持っていて、後半でも回想として何度か登場しますが本当に美しくてエモーショナルなシーンでした。冬のソウルでの2人もとってもロマンチックでしたが、襄陽でのビーチでキラキラ輝いた2人も一夏の思い出感がかなり強くて素敵でした。

ギョンジュン&ソ・リニ

キム・ミンシクが演じるギョンジュンとソ・リニのカップルはとにかく可愛い!2人とも小さくて明るくて、長らく付き合っているからこその余裕がある。

THE SWOONより。キスシーンさえこの可愛さ。

劇中ずっとラブラブだったので、最後の最後に別れるとは思っていませんでした…(エピローグでも別れたまんまで、遠くに離れているギョンジュンをゴンが「こっちおいでってば!」って引っ張ってくるのも良かったし、リニがサッパリしてるのも妙にリアルだった)
別れの原因が致命的な部分のすれ違いで、これまたギョンジュンが「ちょっと失言して怒らせちゃった」って感じに捉えているのが絶望的。きっとあの2人はもうヨリを戻さないんだろうなあ…リニが良かったのは、定職に就かずフラフラしていて、割と守ってあげたい感じに見える=弱そうに見えがちなのですが、実は一番強かった。ギョンジュンが好きだから一緒にいたまでの事であって、「誰かと一緒にいたい」というタイプじゃないんでしょうね。自分の好きな事は貫き通す、人間としての強さを意外にも一番感じるキャラクターだったなあ。
リニが強いなあと感じるのは、ウノの元婚約者に食ってかかるところとか、泣きながらウノが告白した時にハッキリと受け止めた事、ウノが襄陽にいて家を開けていた間、冷蔵庫に付箋を貼りながら部屋に通っていたこと、どれを取っても芯が強くてしなやかな女性なんだなあという印象でした。ああやって自分の好きなものに正直に生きていけるってなかなかできないと思う。だからこそ、情でギョンジュンを許したりしないんだろうなあ…
ギョンジュンは自信もあってプライドも高いの…かな?リニに対する想いは本物だったと思うし、大切にしていたんだと思いますが、自分の中の常識やスタンダードから抜け出せないでいたのでしょうか。大学も出ていないし定職にも就いていないという事は、韓国では日本よりもっと深刻な話だとは思うけど、それを正直にリニに伝えられず、回りくどく嘘をついて新しい家具を買ってあげたりしちゃうところがねえ…あの時、お互い正直に話せていたら別れなかったかもしれないのにね。

カン・ゴン&ソニョン

ソニョンとゴンのカップルは…もう…大人か…!リュ・ギョンス氏が好きなので贔屓目に見ているところはありますが(笑)ゴンみたいに、手は差し伸べないけどそこにいてくれるみたいな人、とても優しい。でも、その代わり引き止めもしてくれないし、追い縋ってもくれない。ある意味とても残酷かも。ソニョンはきっとゴンの事を本気で好きになれたんだろうけどゴンが動かないから去っていったのかな。最終話で諸々モノローグがあって、ゴンから「ソニョン?殴りたいだろう?」って挑発するけど、ソニョンは「良い人見つけてね…」とあくまでもさよならの体制。ゴンはソニョンを待ってるっぽいけど、ソニョンはもう戻らないんだろうなあ…。そしてやっぱりハイライトは2人が居酒屋で別れるシーン。一番泣いてしまった。ソニョンもゴンも素直になれば良いのに!ソニョンは別れる原因にもなった幼馴染(ウノ)との同居が未だに気になっていて、ずっと関係を疑っているのですが、この居酒屋で「イ・ウノが好き?」って聞いたらゴンすぐ否定して、ソニョンは「初めて否定したね」って見つめ合って…ここでヨリを戻してくれるかと思ったけど!そうはいかなかった!!!泣

オフィシャルサイトより

なんだかんだあって、ソニョンはもう寂しくても連絡しませんって言って去っていってしまって…十分気持ちは双方伝わってると思うんだけどなあ。ゴンは追いかけるほどの体力も気持ちもないのかな。それが分かるからソニョンは別れを告げて涙したのかもしれない。ゴンのキャラクターは「選択的シングル」とされていましたが、その情熱のなさも含めて現代の「選択的シングル」なのでしょうか。そもそもソニョンに対する「お母さんが寂しくなったら俺を訪ねておいで」というゴンの申し出が良すぎる。別れた女性にそんな事言えるでしょうか。いやあ、そう簡単には言えないでしょう。そして実際に訪ねてきたソニョンにちゃんと付き合うゴンも良い。少しでもどこかでどちらかが素直になっていれば別れなかった2人の様に感じるから、居酒屋のシーンからエピローグまでの一連の2人のシーンが切なかったなあ。
ソニョンを演じたハン・ジウンは「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」でちょっと頼りないキャラクターを演じていたイメージが強かったので、今回のガールクラッシュ!なキャラクターは意外でした。

THE SWOONより。ソニョンはいつだってかっこいい。

が、似合ってた!ロングヘアに長身スタイル、キュッと吊り上がった目尻を強調するメイクも似合ってたなあ。ソニョンだけは、他の5人とほぼ関わりがなく、飲み会やなんだって集まっている時にいないので登場シーンが少なくて残念だった…でもこの「絶妙に知り合いじゃない」感じってリアルかも。仲間の彼氏彼女って顔も名前も知ってるけど一緒に遊ぶほどじゃない…ってあるあるですよね。そしてそれに嫉妬するのもあるある。笑


タイトルが「都会の男女の恋愛法」という事で、ラブコメ甘々を想像していましたが、恋愛要素だけでなくそれに付随にする色んなものも絡んでくるドラマで、30分×17話なのが一瞬でした。生き方、自分の信念、人との関わり、周りのしがらみで素直になれない事、時々痛いほど図星をつかれてドキッとするシーンやエピソードが多々ありました。
また恋愛したいなあ…とか、こういう人と出会いたいなあと思えてしまう素敵なドラマでした。
スタンダードな恋愛ドラマを求める人には「あれ?」って思うところもあるかもしれませんが、意欲的で挑戦的な演出も良かったし、ぜひとも見てみてほしいです。6人の恋愛模様をぜひ覗いてみてください。

THE SWOONより。アンニョン。

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