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こどもの学びが未来をつくる

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ポプラ社社長の千葉均が、こどもたちの「生きる力」を育む学びのヒントを探しに、全国各地で先進的な取り組みをなさっている自治体や団体の方々のもとにうかがう対談企画です。 (2024…
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#まちづくり

【後編】アートによって育む想像力と多様性への理解~立川市・轟誠悟さん、立川市地域文化振興財団・岡崎未侑さん、ファーレ倶楽部・松坂幸江さん~

前編ではファーレ立川のアート群の価値を、まちぐるみで向上させていった経緯をおうかがいしました。 後編では、市内全小学校でカリキュラム化されているアート鑑賞教室など、官民連携体制のもとで子どもたちにどのような学びが提供されているのかをお聞きしていきました。 皆さんのお話から強く実感したのは、子どもたちの想像力を育む上で、アートがいかに大きな力を持つのかということ。 ありふれた感想と思われるかもしれませんが、アプローチ次第でその効果はどこまでも高くなるものなのです。そのことを、ア

【前編】官民一体で高める、「芸術文化のまち」の価値~立川市・轟誠悟さん、立川市地域文化振興財団・岡崎未侑さん、ファーレ倶楽部・松坂幸江さん~

今回のインタビューで訪れたのは東京都立川市。本企画では連載6回目にして初めての都内自治体への取材となりました。 テーマは立川駅からほど近い市街地エリア、「ファーレ立川」を軸に行われているアートのまちづくり。1994年に整備されたこのエリアには、世界各地のアーティストによる109点ものパブリックアートが設置されており、立川市の文化的な風土を高める中心地となっています。 インタビューを受けていただいたのはお三方。行政側からは市地域文化課長の轟誠悟さん、イベント企画などの実働を担う

【後編】身近な自然への気付きが、子どもの可能性を開く~横須賀市・堀井靖世さん、松田真和さん、NPO法人三浦半島生物多様性保全・天白牧夫さん~

前編は里山環境の保全活用の話を軸に、自然を介したゆるやかな人と人のつながりが生み出す学びについて語り合いました。 この後編では、小学校での環境学習にフォーカスを当てていきます。話題の中心となった「学区の自然環境体験事業」は、学区内の自然環境に対して子どもたちが抱いた興味関心に応じて、各クラス独自のプログラムを提供する取り組みです。 一定の考え方を押し付けるのではなく、子どもたちのワクワクを引き出す。自然での学びの本質を理解している大人たちが連携し合えば、学区という小さなエリア

【前編】自然とふれあいながら自然を維持するまちへ~横須賀市・堀井靖世さん、松田真和さん、NPO法人三浦半島生物多様性保全・天白牧夫さん~

今回のインタビューで訪れたのは神奈川県横須賀市。 横須賀と聞くと、「米海軍基地のまち」というイメージが強いですが、軍港だけではなく生き物たちの棲み処である海や山に囲まれた、自然豊かな地域でもあります。 このうち樹林地や田畑、草地などが市の面積を占める割合は半分にものぼり、横須賀市は「みどりの中の都市」づくりを進めています。 ポプラ社としては2年前から横須賀の環境保全事業に参画させていただいていますが、今回は保全事業の現状に加えて、行政と民間が手を取り合って行っている先進的な環

【後編】『ヒト』を尊重してつくる、質の高い教育環境~千葉県袖ケ浦市・前沢幸雄さん、松井恭子さん

袖ケ浦市の子どもたちが取り組む探究的な学び。前編ではそれがもたらす「生きる力」について語り合うことができました。 後編ではさらに、子どもたちの豊かな学習環境を実現するために、まち全体でどのようなシステムがとられているのかという点をお聞きしていきました。 「システム」というと、やや無機質な響きもありますが、それを形づくっているのは、地域の一人ひとりの精力的な働き。学校司書と教職員の皆さんが職域を超えて連携し合う様子は、多くの自治体にとって参考となるはずです。 袖ケ浦市の大人たち

【前編】子どもの可能性を信じれば地域が手を取り合う~石巻市子どもセンター「らいつ」館長・NPO法人ベビースマイル石巻代表理事 荒木裕美さん

今回は私のふるさとである宮城県石巻市の児童館、石巻市子どもセンター「らいつ」を訪れました。 ご存じの通り、石巻市は2011年3月11日の東日本大震災における最大被災地となった地域。らいつは、国際子ども支援団体のセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)による被災地支援の一環で整備された市内唯一の児童館です。 一般的な児童館と大きく異なるのは、小学校から中高校生世代の利用者たち自身が地域と連携しながら主体的な施設運営を行っているところ。「子どもの権利(right)」と「未来の光

【後編】「好き」で輝く大人の姿が最良の教科書~株式会社オガール・岡崎正信さん、紫波町図書館・藤尾智子さん、手塚美希さん

岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」と、その一環で設立された図書館について、前編では現在に至るまでの経緯を中心におうかがいしました。 そこには公共の文化施設を維持し得る経済システムの構築と、行政が民間視点を活かすことについての重大な示唆が含まれていましたが、私が「学び」の場としての紫波町に関心を惹かれるのには、実はもう一つ大きな理由があるのです。 それはつまるところ「出会い」や「ふれあい」といった言葉に集約されるコミュニケーションの場所として活発に機能していること。後編では

【前編】民間主導の循環型経済で実現する学びの持続可能化~株式会社オガール・岡崎正信さん、紫波町図書館・藤尾智子さん、手塚美希さん

岩手県のほぼ中央に位置する紫波町。このまちは、「オガールプロジェクト」と名付けられた公民連携事業による町有地開発を行い、定住・交流人口の増加や地域内の経済循環を実現したことで、まちづくりの成功例として広く知られています。 開発エリア内は統一感ある景観が広がり、芝生広場を挟むようにして文化・産業・スポーツなどの各種公共施設やテナント店舗、分譲住宅地などが整備されています。そんな中でも、独自の取り組みでコミュニティを育むと同時に「稼ぐ公共施設」の役割も果たしている紫波町図書館は、

【後編】夢持つまちの一手が世に共感を広げる~いすみ市・鮫田晋さん

地域を変えるには、まず子どもからーー。冒頭から新しい気づきをくださった千葉県いすみ市農林課の鮫田さんとのお話。前編ではいすみ市の環境保全活動が、有機米の生産や学校給食への導入、そして子どもたちへの教育まで発展していった経緯を詳しく伺いました。そこには情熱を持った地域の大人の存在が不可欠だということも。 後編では、いすみ市の取り組みのどんなところを他の自治体が参考にできるのか、そしていすみ市は、まちや子どもたちの未来をどのようにイメージしているのかにまで話が広がっていきました。

【前編】子どもを軸にしてこそ生まれる地域転換~いすみ市・鮫田晋さん

この企画の最初におうかがいしたのは房総中部に位置する千葉県いすみ市。海と里山、田んぼといった豊かな自然を有する人口約3万6000人のまちです。 ここはコウノトリの飛来するまちづくりの一環で有機米の生産を始め、現在では市内全小中学校の給食に100%提供するまで発展、全国から広く熱い注目を集めています。特徴的なのは農業の活性化はもちろん生物多様性の保護や食育まで分野横断的に官民が連携して取り組み、子どもたちの教育へとつなげていること。 お話のお相手は行政側のキーマンの一人、農林課