降給のこと 1/4
1.従業員の給料を下げたい
従業員の賃金を下げたい、ということがあると思いますが、そういうときどうしたらいいんでしょうね。これは、懲戒処分としての減給のことではなくて、会社の業績が振るわないので、とか、従業員の能力不足による降給のことを想定しています。
2.法律
このことを考えるためにまず見ないといけない法律は、労働契約法8条です。
契約の内容は契約当事者の合意があるときは、変更できます。裏を返すと、契約当事者の合意がないときは、労働契約の内容を変更することはできません。まあ、労働契約も契約であることから考えれば、そりゃそうかなということになります。
降給は従業員にとって不利益な労働条件の変更ですから、嫌です、と言われることがあるでしょう。
降給に合意してもらえないなら、仕方がない、残念ですがお給料払えないので労働契約を終了させましょうか、ということになるのですが、降給に応じないことを理由とする解雇はできません。ここも法律を見ておきます。労働契約法16条です。
降給に応じないことは、この条文の「客観的に合理的な理由」にあたりません。なので、降給に応じてくれないからといって、解雇して人件費を減らすこともできない、ということになります。
そうなると急に手がなくなります。自発的にやめてくれる人を募集するか、無理やり退職させるか。希望退職者の募集は一つの方法でしょうけれど、自発的にやめてくれる人は、会社にいて欲しい人かもしれません。
というわけで、嫌がらせやパワハラなどを伴う退職勧奨が、世上行われたりする、ということになります(退職勧奨自体は違法ではありません。態様に違法がある場合があるということです。)。ニュースなどになるのは、このへんの軋轢です。
降給させられない、解雇もできない、だと、初めから、できるだけ人は雇わないでおこう、とか、そもそも給料はなるべく上げないでおこう、と考える会社もあるかもしれません。
特に解雇については、随意雇用(at-will employment )が原則であるアメリカとの違いで、随意雇用ができれば、雇用契約で初めから高い賃金を出せるケースも増えるでしょうし、解雇が容易にできますから降給できなくて困るということも起きません。
3.就業規則
そうはいっても給料を下げないと事業が苦しい、あるいは、この人にこの賃金は払えない、ということでさらに考えるとすると、労働契約では、他の法律分野と異なって、就業規則という契約条件を集団的にマネジメントする仕掛けがありますので、就業規則の利用を考えます。
就業規則は、労働基準法に定めがあります。
賃金に関することは、就業規則に書いておかないといけないことになっていますので、ここに、「給料は減らすこともあるよ。」と書いておけばいいんじゃないか?そんなこと本当にできますかね?
(続く)
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