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ミノムシの蓑の中には秘密がいっぱい詰まっている~じいちゃんの小さな博物記㉒
「ミノムシの蓑細工を知っていますか」と谷本さん。今は見る機会が減っていますが、ミノムシの蓑で財布など作ることができるそうです。で、谷本さんもチャレンジしてくださいました!
『草木とみた夢 牧野富太郎ものがたり』(出版ワークス)、『週末ナチュラリストのすすめ 』(岩波科学ライブラリー)などの著者、谷本雄治さんの「じいちゃんの小さな博物記」第22回をお届けします。
谷本雄治(たにもと ゆうじ)
1953年、名古屋市生まれ。プチ生物研究家。著書に『ちいさな虫のおくりもの』(文研出版)、『ケンさん、イチゴの虫をこらしめる』(フレーベル館)、『ぼくは農家のファーブルだ』(岩崎書店)、『とびだせ!にんじゃ虫』(文渓堂)、『カブトエビの寒い夏』(農山漁村文化協会)、『野菜を守れ!テントウムシ大作戦』(汐文社)など多数。
暦の上では春になったが、まだまだ寒い。芽吹き前のガイコツみたいな木々を見ていると、なおさら寒く感じる。
そんなときは、ミノムシ探し隊の出撃だ。
「目標はオオミノガのミノムシだからな」
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「わかってる!」
返事が頼もしい。隊員である孫たちには標本を見せて、しっかり教え込んである。
ミノムシは昆虫名ではなく、国内に50種ほどいるミノガ科の蛾の幼虫がつくる防護・防寒服のニックネームだ。オオミノガが代表種で、黒っぽい蛇腹のような寸詰まりのイモムシが中にいる。
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だが、蓑の外から中は見えず、名前が「ミノムシ」ゆえの誤解も生まれる。虫なのだから、あのミノムシの姿のままどんどん大きくなると思う人が少なからずいるのだ。
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それよりも深刻なのが、ミノムシを見る機会が減っていることだろう。1990年代後半に中国から入った寄生バエによって、全国的に激減した。その後、その寄生バエに寄生する在来の寄生バチなどの活躍で復活しつつあるらしいが、オオミノガを絶滅危惧種に指定する県もまだある。
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残念だが、わが家の周辺ではまだオオミノガのミノムシは少ない。
と思っていると――。
「あ、みーつけた!」
子どもの目は鋭い。予習した通り、5センチほどあるオオミノガの蓑である。
「よく見つけたなあ」
「だって、大きいもん。あそこにもあるよ」
幸運な日で、5個見つかった。一度にこれだけ見つかれば大漁だ。
「蓑の中を見ようか」
気の毒だが、はさみで開く。「ほんとだね」のひとことで終わったが、自分の目で見ることが大切だ。夏になるとオスは、はねのある蛾になって外に飛びだす。メスはイモムシのまま、蓑の中で産卵して一生を終える。
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切り口を閉じておいたら、数日後には補修されていて、ほっとした
孫が言った。「色紙で新しいみのをつくらせようよ」
本で紹介されていたそうだが、体力が関係するのか、寒いとうまくいかない。失敗した経験があるので、別の提案をした。
「それより、蓑皮細工なんてどうだい?」
ぼくの部屋には、これまでに集めた蓑がある。中身は空っぽだから、それを使って、何かつくろうと考えた。
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羽化したあとの中身が空っぽの蓑だから、工作に使えるね
傷んだものを除くと、使えそうな蓑は約30個。表面の小枝や枯れ葉を取り除き、一辺3センチほどの正方形に切りそろえた。木工用の接着剤で布にはりつけると、それっぽい蓑皮シートの完成だ。
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大きさは縦10センチ・横20センチ。さてどうしようと思ったとき、頭に浮かんだのが財布だ。幼虫の身を守るからか、ミノムシの蓑皮財布はお金がたまるといわれてきた。
とはいえ、欲をかくとロクなことはない。材料も少ない。小銭入れがやっとだった。
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さて、ミノムシ効果はどうだろう。幼虫みたいに、お金が育てばうれしいけどね。