ポプラ社 こどもの本編集部
本棚のいちばん下に、ずっとある本に。 ーー「かえるのエル」シリーズ 乗松葉子さん×おおでゆかこさん 座談会
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本棚のいちばん下に、ずっとある本に。 ーー「かえるのエル」シリーズ 乗松葉子さん×おおでゆかこさん 座談会

ポプラ社 こどもの本編集部

昨年6月に1巻目、今年12月に2巻目が刊行された幼年童話「かえるのエル」シリーズ。子どものピュアな視点で描かれた物語と、想像力をかき立てる絵が特長です。

2巻目の刊行を記念して、作者の乗松葉子さんと、絵をご担当のおおでゆかこさん、担当編集者の3人でオンライン座談会を開催!「かえるのエル」シリーズの魅力をお伝えします!

おおでゆかこさん(左)、乗松葉子さん(右)、潮紗也子(右下)


ひみつをいいたい!


担当編集者・潮(以下、潮):まずは12月に刊行された最新刊について伺っていきたいのですが、どんなお話なのか、ポイントをうかがえたらと思います。

かえるのエルの お母さんになりたい! 

乗松葉子さん(以下、乗松):最新刊のお話は、(主人公の)エルが、大好きなアールちゃんがおままごとでお母さん役をやっているのが羨ましくなっちゃって、「自分がお母さんになればいいんだ」と、とてもストレートに自分の欲求を追求するお話がひとつ。それからもうひとつは、「ひみつをいいたい!」っていうものです。

これはですね、私の娘が本当にそんな感じで、全く秘密を隠しておけないっていうタイプだったんです。言っちゃおうかなどうしようかなあってうろうろしてて、「なに?」って聞いてあげないといけないぐらい。

成長過程で、親に秘密を持つようになることってありますよね。なんでも話してたけど、これはちょっと言わないでおこうみたいな。そういうちょっと秘密を持つって、一段階大人になる瞬間だなと思っていて。エルがお母さんにひみつを言わないでおこうかなって思う、そういうときのお母さんとの関係を、お話に書いてみたかったんです。

おおでゆかこさん(以下、おおで):読ませていただいて、(1巻目より)さらにあたたかいお話で……登場する動物がとても多くて、さらにエルの世界が広がるような、とても賑やかで鮮やかな世界だなと思いました。秋なんですよね、季節が。なので、このあたたかい雰囲気を出せたらなとは思っています。

2巻の中面。色鮮やかな木の葉が目を引きます。


かえるの種は、くもの巣?

: 主人公のかえるのエルは、どこにでもいる子のようであって、でも今までいなかったおとぼけキャラクターという感じがするのですが、このエルはどんなことから生まれたのでしょうか? 

乗松:元々はかえるのエルではなくて、「くものおばさん」がおはなしの種なんです。

「かえるのエル」シリーズに登場する、人嫌いの「くものおばさん」

テレビですごくきれいなくもの巣の映像を見て、「すごい! これ、くもが一人で作ったの?」って思いまして。そうすると疑問がどんどん湧いて。本当だったら、もうくもに直接聞きたいほど。

でももし、くもにインタビューができるとしても、くもってとっつきにくいイメージあるじゃないですか。何か怖そうだし……。ちょっと聞きにくいなあって想像したりして。私の性格ではちょっと聞けない感じだったので……そこに、こう、ずんずんって入っていってくれる「かえるのエル」という存在が自然と生まれました。エルのキャラクターが生まれると、つぎは、しっかり者のお友だちのアールちゃんが。この二人のコンビがバーッと動き出して、とても自然に物語を作ってくれました。

主人公のエル(左)と、お友だちのアールちゃん(右)

私は児童文学サークルに所属してるんですけども、そこに切磋琢磨する創作仲間がいるんですね。あるとき、くものおばさんの話を持ってって読んでもらったら、割と面白いねって言ってもらえて、調子にのっていくつか書いたんです。それを合わせてポプラ社の担当者さんに見てもらったっていうのがはじまりですね。

おおで:くものおばさんから生まれて、世界が広がったなんてすごい話ですね。

:最初から他の生き物と迷われることなく、かえるにしようって思われたのですか?

乗松:そうですね。エルは、アマガエルなんですけども、小さなアマガエルが草にちょんって乗ってる姿が愛らしいなと思って。あとかえるってぴょーんって跳ねるので、すごく活動が広がるっていうか。お話がテンポよく展開する感じがありました。

かわいらしさもそうだし、かえるの顔って、すごくユニークでお喋りな感じの顔じゃないですか。ぜったいよく喋りそうだなっていう。会話をいっぱい入れたお話にしたいなと思ってたので、ぴったりだったんじゃないかな。

作中のエル。おおでさんの手によって表情豊かなキャラクターに。


幼年童話は、本棚の一番下にいつまでもある本

:おはなしづくりの上で、悩んだところとか、難しかったなあっていうところはありますか?

乗松:基本的に、私、幼年童話にすごく親しみがあるんです。ふつうは、だんだん学年が上になると、幼年童話は卒業してどんどん厚い本に移行していくと思うのですが、私も移行して、小説や漫画を読んだりはしましたけれど、それとは別に、幼年童話っていつまでも本棚の一番下にあって。

ちょっと「宿題やりたくないなあ」みたいないときにスッて手に取って開くんです。何度も読んでいて、ストーリー展開はもちろんわかっているので、ドキドキもワクワクもないんですけど。

パラパラとめくって、「あ、知ってる知ってる」みたいな感じで読んで、「よし。しょうがないから宿題やろう」みたいな……。なんかそういう安心感があるので、幼年童話はリラックス状態にしてくれる存在なんです。なので幼年童話を書くっていうことは、創作の苦しみよりも、どちらかと言えば、書いていて楽しいなあ、気分が落ち着くなあと感じることが多いですね。

これといった決め事はないのですが、エルはちょっとずれているのが魅力なので、そのずれを修正しない、というところだけは、唯一こだわったところかもしれません。ずれっぱなしを周りの誰も訂正しないまま、おはなしが成立する、という感じ。それが許される世界みたいな。

おおで:絵本の世界でもそれはあると思います。ずれたまま、その世界を受け入れて、物語の中で楽しめるというか。

乗松:そのまま崩さないように、ちょっと教育的にならないようにみたいな。

おおで:すごく子どもらしさを感じますよね、エルには。

:本当に、私も拝読していてリラックスした状態というか、素の自分でいられる感じがするお話だなって思っていました。乗松さんご自身がやっぱりリラックスして、楽しんでピュアな気持ちで書いてくださっていたっていうことですね。

乗松:緊張状態が苦手で、楽な方へ楽な方へ……リラックスを一番重視しているので(笑)

おおで:すごくピュアな気持ちや、リラックスした雰囲気が伝わってくるので私もすごく描きやすかったですし、伸び伸びと描いていいのかなっていう気持ちでした。


エルたちが見た世界を、読者にも知ってもらいたい


:イラストのこともどんどん伺っていきたいなと思うのですが、最初に「かえるのエル」のお話を読まれた時にどういう印象だったか、ちょっと振り返っていただけたらなと思います。

おおで:かえるのキャラクターって描いたことなかったんですけど、デザインによって親しみを持ってもらえる動物だとは思っていたので、それを読者に感じてもらえたらいいなと思ってました。アマガエルって私の中では、すごく愛らしい存在だったので、描くことに全然苦労はありませんでした。

:かえるのキャラクターそれぞれが、性格が全然違うなって絵からわかりますよね。同じカエルなのに。それに私は感動しました。

乗松:本当ですよね。カエルでもお母さんはちゃんと、お母さんらしい顔なんですよね。

おおで:お母さんは、なんでも受け止めるあたたかい感じがあったので、ちょっと小太り気味にして、「もう私に任せなさい」みたいなイメージでした。エルの方はやっぱり、好奇心旺盛で体も小さくて軽いイメージがありました。アールちゃんは、すごく女の子らしくて、それでいて、エルの全部を受け止めてくれておしゃべりで、物知りの女の子。エルよりちょっと背が高いイメージでした。

「かえるのエル」シリーズはセリフが本当にたくさんあるので、そこから表情がコロコロ変わるイメージが自分の中であって。いろんな顔がでてきたのですが、チャームポイントは大きく見せたいなと思いました。

「かえるのエル」シリーズのキャラクター紹介


:家具などの小物もとても素敵に描いてくださってたので、おおでさんのお部屋は小物もかわいいお部屋なんだろうなって勝手に想像しています。

おおで:家具のカタログ見るのはすごく好きですね。使っていると、なんか愛着がわいてくるような感覚っていうのかな、そういうものが好きです。エルのベッドとかも、長くつかってるイメージ。アンティークっていうか。ちょっとペンキがはがれてたり、そういう雰囲気を出しました。

:細かい物すべてにも愛情が感じられるから、見ていて気持ちがいいのかもしれないですね。エルの家の細部もとても素敵です。

1巻目に登場するエルの家

おおで:窓枠がカタツムリになっていたり、エルが描いたのかちょっとわからないですけど、ハッピーな虹を入れてみたり、家族の写真を入れてみたりしました。本当にかわいい世界観で、わくわくして描くことができました。

:おおでさんは、自作の絵本もありますし、お仕事ではグッズのイラストを手がけられることもありますが、「かえるのエル」ではこれまでのお仕事との違いを感じられたことはありましたか?

おおで:そうですね。表紙作りのときは結構グッズと似ていて、「ぱっと置いて絵になる」というか、かわいらしくしたいなと思って描いていました。文章のほうは、時間の流れというのがありますよね。読んでいきながら、おはなしの中に入り込めるように、時間経過というのを意識して書いてますね。エルたちが見た世界を読者にも知ってもらいたいって思って。

乗松:本当に一緒に体験してるような感じですね。

:なんか覗いてる気持ちになりますよね、彼らの生活を。葉っぱをよけると、現れたみたいな。蝶々とか芋虫とかもそうですけど、どのページもみんながのびのび楽しそうに生きてる感じが伝わってきます。

おおで:虫の世界っていうのがもともとすごく好きで。小さな世界をのぞいているような感覚で、楽しく描いていました。

:こういう世界が、じつは地面の下にあるんじゃないかってやっぱり思っちゃいますよね。そういう想像の楽しさというか、リアルにもちょっと繋がってきてくれるような、でも夢みたいな世界を描いてくださってているので、読んだ子たちも見える景色が変わりそうな感じがします。

おおで:それがいちばん感じてほしいところかもしれないですね。あとは、子どもに読み聞かせをしてくださるお母さんもいらっしゃると思ったので、子どもの頃に感じたなつかしさとか、「むかし見たことあるな」ってものを思い出してもらえたらって。

自然豊かなエルの世界。よく見ると虫や魚の姿も。


心を遊ばせて

:何年経っても、乗松さんがおっしゃってたみたいに、本棚のいちばん下にずっとあって、大人になってパラパラって見てもすぐ幸せになれるような、そういう安心感をお話にも絵にも両方込めてくださって、すごく嬉しいです。エルがこれからどうなっていくか、私はちょっと気になってますけど。

乗松:私も気になってます(笑)

:最後に、これからエルに出会ってくれる人たち、子どもたちに、なにかメッセージをおねがいします。まず乗松さんどうでしょうか?

乗松:この本を手に取ってくれる大人も子どももですけど、コロナ禍で、すごく我慢したり、窮屈な毎日なのかなって思います。だからページを開いてぱっと物語の世界に入って、それこそこの森で自由にのびのびと遊ぶというか、心を遊ばせてくれるみたいな、そういう本になったら嬉しいなって思います。

さっきもう言ってしまったんですけど、私が子どものときにそうだったように、繰り返し読んで、好きなときにいつでもぱっと世界に入れる、そういう本だったらいいなって、思います。

:ありがとうございます。おおでさん、いかがでしょうか?

おおで:読んでくださる読者の方には、子どもから大人まで、幅広くいらっしゃるかと思うんですけど、子どもたちにはやっぱり心に残る作品であってほしいし、大人のかたには、ひらくと子どもの頃の記憶が蘇ってくるような作品になったら、素敵だなと思っています。

やっぱりエルみたいに、好奇心旺盛でなんでもチャレンジしてみると、世界が広がって、とても面白いかもしれないので、そんな機会がこの本から生まれればいいなと思います。


:ありがとうございます。そういうかけがえのない1冊になって、友だちみたいな存在になってくれるといいなと私も思ってます。

おふたりとも、本日は本当にありがとうございました!





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ポプラ社 こどもの本編集部
ポプラ社で「こどもの本」を作り届ける人たちです。日ごろ絵本を担当しているメンバーが、小さなチームを作り、記事を発信していきます。大人になったあなたも、久しぶりに、こどもの本にワクワクしてみませんか?