「自分だけの経験」をノンフィクションとして書くとき、作家が考えていること
時子さんが亡くなる前、何気なく、ぽつりとつぶやいた一言。
「私の人生を、書き留めておけばよかった……」
その言葉を聞いたとき、私の口をついて出た言葉は、自分でも予想外のものでした。
「それなら、私がいつか時子さんの物語を書きます!」
そう、あきれるほど簡単に、私は反故にはできない、重大な約束をしてしまったのです。
佐藤由美子『ラスト・ソング――人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)より
最初にお断りしておくと、今回の記事はだいぶ私的な動機にもとづいて作成されている。テーマは、