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ポップインサイト創業記(35)〜クラウドソーシングの利活用のコツ

前回の記事に続いて、採用のコツを紹介します。リモートワークの記事でも書きましたように、私はポップインサイトに続いて、クラウドソーシングの会社を起業して運営して来ました。その際には、案件によって数百人を一度に雇って仕事をしてもらう場面も度々発生しました。今回はそんな経験から培った大多数の人を採用する為のノウハウをお伝えしたいと思います。

大多数を短期で採用する時は、テスト&減点方式

多くの人を短期間採用する場合は、個々の人を長期間雇用するのとは、採用のアプローチを全く違う形へと変える必要があります。

少人数を長期的に採用する場合は、多面的に検討して応募者から選りすぐるという形ですが、大多数を採用する際は、大きな問題が無ければOKにするというアプローチになります。つまり、少数を選ぶ時は良い人を選び、大多数を選ぶ時には悪い人を除くというイメージです

加点方式と減点方式、または、ホワイトリストを作るか、ブラックリストを作るかといった違いとも言えます。これらを仕事の規模感と期間によって、意識して使い分けます。

これは、クラウドソーシングでない、一般的なアルバイト採用の現場も同様です。例えば工事現場とか、コンビニエンスストアのアルバイトも、経験を積んで長期的に勤めて欲しいというケースと、忙しい時期だけ超短期で入って欲しいケースがあります。超短期的にスポットで入って欲しい時には、よほどさぼったりとか過度に信用できない人は不採用、そうでなければ採用、といった選び方になる訳です。

私がクラウドソーシングで行っていた実例で説明しますと、例えば300人のワーカーを集める必要があるプロジェクトがあったとします。仕事内容は、指定された文章を手書きで書かれたものを収集したいというもの。

この場合、どのように採用するかと言うと、まず応募者にテストを受けてもらいます。1〜2件実際の仕事と同じ作業を行ってもらうのです。そして、作業内容に失敗や誤りが無ければ採用、間違ってしまったら不採用にすると。

実は、こういったテストは、多くのケースがとても簡単なものなのです。普通に説明文を読んで行えば、あまり失敗しないようなものが大半です。しかし、実際には、驚くほど多くの人が間違えて来てしまいます。どうしてこんな間違いになってしまうんだろうと首をかしげる様な事が多々あります。

それはさておき、私は多人数を一度に採用する時には、この様に極簡単なテストを課して、失敗してしまった場合は残念ながら不採用という形を採ります。

2つのNGパターンと、依頼主としてのスタンス

そして、テストに合格した人たちには一回目の作業の割り振りをします。例えば、今回の例のような300人を募集するケースなら、全体で1万件位の作業があるので、最初は1人10件ずつ3,000件分を割り振ります。そして、最初の割り振り分の作業が完了した人から、どんどん追加作業を渡して依頼していきます。

ちなみに、採用前のテストには合格したのに、その後にNGが出てしまうというケースがありますが、このケースには2つのパターンがあります。

1つ目のNGパターンは、仕事自体を約束通り行ってもらえないパターンです。納期までに納品がなされないとか、そもそも作業してくれないというケースです。この場合は仕方がないので、その人の分の作業を別の人に依頼して、その人への依頼は終了になります。

2つ目のNGパターンは、納品内容が合格として受け付けられないケースです。例えば、基準を満たしてなかったりとか、作業ルールに則っていなかったりする場合です。

私は、この納品内容が合格として受け付けられないケースに対しては、2つの対応方法があると思っています。

1つ目はダメだしをして「全て直して下さい」というパターン。「これとこれはダメです。一から全てやり直して下さい」というケースです。完全に問題なく出来上がったものでなければ納品を認めないという、「拒否パターン」と言うべき形。

2つ目は、「これとこれがダメだったので、次回以降気をつけください」という感じでOKを出して受け付ける「条件付OKパターン」。

この2つのパターンがあると思いますが、基本的に私は「条件付きOKパターン派」です

私の場合は、多少NG要素があっても、そこにちゃんとやる気が感じられるのであれば、ダメだった理由をきちんと伝えて、継続して作業してもらうようにします。

例えば、「この点がちょっとダメだったので、次回以降はこの様にお願いします」と、動画で修正内容を伝えたり、わかりやすいマニュアルを渡して、次回以降も続けてもらうのです。

なぜ私が条件付きOK派なのかと言うと、少々最初の内にミスをしてしまう人でも、できる限り作業してくれたら、全体の作業が進みます。その分、私達としては得な訳です。勿論、ワーカーの人達にとっても得なのは言うまでもありません。やりたいという気持ちがあるのであれば、できるだけその人ができるようにした方が全体として良いのです。

このように、多人数を採用してプロジェクトを進める全体的なイメージとしては、最初に簡単なテストを行って採用、不採用をバーンと分け、全体で作業を行っていく中で、条件付きOKを出して進めて行く。そうして行く内に、質量ともに良い形でやってくれる人とそうでない人が出てくるので、全体的な方向性を良い形でやってくれる人に寄せて行く、という流れでプロジェクトを進めて行きます。

なぜ「条件付きOK」を出すのか

私が「条件付きOK派」であるもう1つの理由に、大手クラウドソーシング企業の姿勢を見て、疑問に思う事が多々あったという事があります。

大手クラウドソーシングの案件には、得てして凄い量のマニュアルがあります。数10ページのマニュアルがあり、これを全て読込んで完璧にしてから作業して欲しいと。

実際にマニュアルを読んで理解して、問題のない完璧な作業ができるようになるまで、数十時間かかったりします。

この場合、給料や報酬は、当然の様に納品ベースです。つまり、マニュアルを読んで理解するなどのトレーニングに当たる部分は、全く報酬が支払われないケースが大半です。これは働く側のワーカーの視点だと相当キツいことだと思うのです。

例えば、コンビニエンスストアや飲食店のバイトなど、一般的なリアルの時間を拘束するアルバイトでは、最初何もできないにしても、時間を拘束してる分時給が払われますよね?

しかし、大手クラウドソーシング会社の仕事の場合は、多くの場合そうではありません。業務内容を理解したり、マニュアルを読んだりといった事前準備の時間は全て報酬外になっている現状があります。私は、これを全て報酬外にするのはいかがなものかと思うのです。

例えば、PhotoshopやExcelの使い方などジェネラルスキルなどは、そもそもできる人が応募条件になります。ですから、そういったスキルの習得は各自の責任です。

しかし、普通に考えて、ライティングのルールとか、入力ルールなどのその作業固有のルールは、元から知ってる人などいる筈がありません。それはその会社の固有のものですから外部の人は知る由がないのです。

それを理解してもらう時間というのは、雇う側の都合で長時間拘束してるわけです。その時間を全く評価せずに報酬を払わないというのは、良くないのではないかと思うのです。

私は、その点は「追加で払いたい派」です。マニュアル確認に2時間かかるのであれば、2時間分の給料は最初に払いたいと。「時間を使ってもらった分はお支払いします。これ以降は案件ベースで頑張っていきましょうね」という風にしたいのです。

普通に考えて、全く初見の仕事をしてもらう時には、1件や2件の小さな間違いはあって当たり前です。特にクラウンドソーシングの多くの場合は、あまり高くない報酬で仕事してもらう訳です。それで、少しのミスを拒絶して全て一から直してくださいというのであれば、その作業を始めてから全て完了するのに、時給で考えると数円とか数十円になってしまう訳です。「それってどうなの?」と、私としては強く疑問に感じます。

それはあまりにも不義理ではないかと。コスト感を考えたら、「次回以降頑張ってくださいね」と、条件付きOKの形で進めて行くべきではないかと思うのです。

しかし、大手クラウドソーシング会社やそのディレクターには、そういった配慮が見られない事が多々あります。私はそういった様子をたくさん見てきたこともあって、ワーカーの方への配慮は絶対に疎かにしたくないと考えているのです。

発注者は、働く状況や仕事内容をもっと知るべき

大手クラウドソーシングのディレクターの多くにワーカーへの配慮が足らないのは、受注者としての経験が無いことと、それによってイメージができないことに起因していると思います。

私は、今は発注側になる事が大半ですが、受注者も経験していますし、発注者と受注者の間に立つディレクションも多数経験しています。

さらに私の場合は、仕事を依頼する時には、これまで自分自身でやってきた作業をお願いすることが多いので、その大変さなどがよく分かっています。ライティングも20万字以上書いて来ましたし、入力や文字起こしなども多数経験してきました。そういった自分が行ってきた仕事を、より全体的な効率を上げる事を考えて、アウトソーシングする為に依頼している訳です。だから、その作業がどれほど時間と労力を要するか理解しています。

その上で、さらに仕事をお願いしている方たちとは、毎週「ワン・オン・ワン」ということで、一対一の打ち合わせを行うようにしているので、働いてる様子がよりイメージできます。

例えば、ある仕事を依頼している主婦がいるとします。その人には子供がいて、子供を寝かしつけた後の夜中の貴重な時間に、テレビを見たり晩酌する時間を置いて仕事を頑張ってくれていると。子供が大きくなった時の事を見据えて、一生懸命仕事をしてくれているという様子が目に浮かぶのです。

そんな人が、始めたばかりの仕事で、業務理解がまだあまりできていない部分があって、少しのミスをしてしまったと。そう考えると、「マニュアルを見返して、全てイチから修正して再提出して下さい」と、受け取りを全拒否してやり直しをさせることなどできません。

勿論、ワーカーが明らかに目茶苦茶に適当な感じで作業しているのであれば、話は別です。しかし、真面目にやってくれている中でミスが出る分にはしょうがないと思うのです。

悪意がある訳でもありません。分厚いマニュアルを一生懸命読みながら、初め取り組む作業にトライしてくれている・・・私には、そういう画が目に浮かぶので、全否定してイチからやり直しという形には到底できません。

しかし、クラウドソーシング会社のディレクターが見ている管理画面からは、そういった画は見えないのです。納品が届きました、納品完了のメッセージが来ました、ミスが見つかりました・・・という画面を見ているだけでは、その先の作業をしてくれた人の想像などできないと思うのです。

つまり彼らは相手が機械に見えてしまっているのではないかと。だから、「間違っているから直してよ」「ルールと違う形になってるじゃん」と、あたかも機械に言うように全修正の上再提出という形にしてしまうのではないかと。想像力の欠如に課題があるんじゃないかと思うのです。

リモートワークの記事でも書いたように、やはり相手の事をいかに想像するかということがとても大事だと思います。そして、その「想像する」ということもなかなか難しいので、相手の話を良く聞くことが重要だと思うのです。

想像できたとしても、実態は結構違います。だから、現場や働いてくれる人のことを正確に把握するため工夫として、私のようにワン・オン・ワンなどの対話を重ねて相手の話を良く聞いていかないと、本当に理解することはできないと思うのです。

もし実情が理解できたら、「全否定して全てイチからやり直し」などという形には絶対にならないし、できないはずです。

しかし、こういった主張をどれだけ投げかけても、現実や世間や人を変えるのはとても難しいことだと思います。

私にできることは実践と啓蒙だと思うので、こういった意見をブログや書籍で発信し続けて行きたいと思っています。

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