ショートショート「+ドライバーの日」
みなさん、12月25日は何の日でしょう。ご存知、クリスマスです。しかし、幼少期の私にとっては違う日でした。25日は+ドライバーの日でした。その日は、好きなドライバーを買って、今年最後に回したいネジを回す日でした。
私は、クリスマスの楽しみ方がわからない大人になってしまいました。24日の夜、仕事から帰ってテレビを見ながらソファに座ると寝ていました。目を覚ますと時刻は朝6時。
このままでは、今年もクリスマスを棒に振ってしまう、そう考えた私は
おもむろに外に飛び出しました。
冬の外はまだ暗くどこ行くアテもなく彷徨っていると近所の公園に着きました。ふと足元に違和感を感じて下を見ると白いひげを蓄えた真っ赤な服の老人が倒れていました。
普段なら放って置くところですが、今日の私は違います。
「おじいさん、大丈夫ですか!?このままじゃ凍死してしまいます。これを羽織って!」
私は、自分の着ていたコートを差し出しました。
しかし、冬の朝は寒すぎました。震える私を見かねて老人は私にコートを着せてくれました。何と良いおじいさんでしょう。
その時、私は今日この老人に尽くそうと心に決めました。老人になぜ倒れていたか事情を聞くとトナカイと喧嘩別れをしてしまったようです。意味はわからないですが探すのを手伝うことにしました。
なかなか、トナカイは見つかりませんでしたがようやく見つけると罠に捕まっていました。老人が拘束具を外そうとしましたが+ドライバーがないと開けられないようでした。私はポッケから+ドライバーを出しました。初めて自分の家の悪習が役立つ時がきました。時刻はお昼頃、ひとまず二人とお昼を取ることにしました。トナカイはお店に入れないのでドライブスルーを利用しました。トナカイでもドライブスルーは受け入れてもらえるという知見を得つつ二人が喧嘩別れした経緯を聞きました。
老人は言いました。
「私の生き別れた娘がこの辺にいるらしいんだ。
帰りに寄り道したら迷ってしまって。」
トナカイは言いました。
「私はやめようといったら喧嘩に..」
娘さんの名前を聞きました。驚くことに私の上司と同じ名前でした。
「その人の家なら知ってます。案内しますよ」
上司の家に着き、事情を説明すると上司が出てきました。
「お父さん・・・」老人は涙を浮かべ上司の顔にも次第に涙が溢れて行きました。これは邪魔してはいけないと思い黙って立ち去りました。
家に着くと、すっかり夜になっていました。ソファに座りふと気づくと机の上にメッセージカードが置いてありました。
メッセージカードにはこう記してありました。
「メリークリスマス、ポジティブな君に素敵なプレゼントを サンタより」
ふと外を見ると雪が降っていました。外は雪に家の明かりが反射して街全体に明かりが灯されているような幻想的な光景広がっていました。
少し、クリスマスの楽しみ方が分かった気がした。
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