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フィリピンで詐欺にあった話

4年前、僕はフィリピンへ語学留学へ行った。「しっかり英会話を勉強して、良い留学にしよう。」そう思いながらフィリピンへ飛び立った若者が海外で遭った詐欺被害エピソードをシェアしようと思う。少し長いので、興味がある人だけ読むことをオススメする。

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フィリピンの首都マニラ、ニノイアキノ空港には4つのターミナルがある。といってもそれぞれのターミナルは別々に位置しており、ターミナル間の移動には一旦空港の外に出て、バスやタクシーで移動しなければならない。僕が降り立ったのは第一ターミナルだった。留学先の学校は "バギオ" という都市にあり、マニラからバスで移動して学校の寮へ入居するという手続き。
流れとしては

空港でフィリピン人スタッフが生徒お迎え

マニラのバス乗り場まで車で移動&バス乗車

バギオの高速バス乗り場にて下車

日本人スタッフがお迎え

スタッフと一緒に学校到着

という感じ。なかなか面倒な乗り継ぎだが、他に選択肢はなかった。

空港に降り立った僕はイミグレーションを通過したあと、フィリピン人スタッフに会うために予定の集合場所へ向かった。スタッフの顔と名前は事前に聞かされていたので、それらしき人物を意識しながら歩いていた。
すると、集合場所の少し手前らへんで体格の良い男Aが声をかけてきた。
以下やりとり↓


男A :「スクール?スクール?」

僕 :「あなたは○○?(もしかしてスタッフか?)」

男A :「あぁ、そうだよ!!○○だよ!さぁいこうか!」

僕 :「オッケー(写真ではもう少し若く見えたけど昔の写真だったのかな?)」

男Aは僕が乗車する前に一服したいと言い、ターミナルの駐車場近くでタバコを吸い出した。その時に同時に電話をしていて、誰かを呼びだしているようだった。
その場で5分くらい待っていると、先ほど電話をしていた相手だと思われる人物が、僕と男Aを迎えに来た。
筋肉隆々の体つき、タンクトップを着て刺青だらけ、坊主頭という外見の男B。それが留学生を迎えるという状態に違和感を覚えた。

しかし男Bは手際良く僕のスーツケースを車の後部に収納し、乗車するように誘ってきた。同様に男Aも助手席に素早く乗車し僕に乗車を促した。一瞬乗車をためらったが、スーツケースはすでに車の中。しかも僕はフィリピンの空港に降り立った時に現地のSIMカードを購入していなかったので、ケータイの電波通信が一切使えない状態。もちろんフリーWi-Fiなんて空港の外には無い。目の前の男たちは本当に留学先のスタッフなのか?不安になってくる。
乗車拒否して一旦空港に戻ることも考えたが、結局はうまく断る理由が見つけられなかったので、このまま乗車することに決めた。

僕が乗車すると厳つい外見の男Bはすぐに車を走らせ、同時に機嫌良く色々と質問してきた。僕は不安を消し去るように英語を使って頑張って会話を続けた。
5分くらい移動して、車が止まった。男Bいわく、「フィリピンペソまだ持ってないだろ?外貨の交換レートがここは一番良いんだ」という。車のドアから外を覗くと薄汚い小さな駄菓子屋らしきものが。どうやら僕に両替をさせる気らしい。事実、僕は一万円分のペソしか日本で両替しておらず、現地の交換所で両替するつもりだったのでこれ自体は悪い話ではなかった。
男Aが続けて「いま現金いくら持ってきてるんだ?」と尋ねてきて、僕はその時財布の中にあった4万円を見せた。スーツケースの中にもう少しまとまった現金を忍ばせていたので、財布の中の現金は全額フィリピンペソへ両替するつもりだったのだ。

男Bは車内で待ち、男Aは僕に同行した。僕がレジのおばちゃんに両替したいと伝えたあと、男Aが横からゴニョゴニョと現地の言葉でおばちゃんに話していた。怪しい。
おばちゃんに両替してもらったあと、男Aがペットボトルの水を奢ってくれた。その後再度車へ乗り、男Bが車を走らせたとき男Aが僕にこう聞いてきた。

「で、どこに行きたいんだ?」

僕はこの時すべてを悟った。 "やられた!!" と。なぜなら留学先のフィリピン人スタッフが生徒の送迎中に「どこ行きたい?」なんて聞いてくるはずが無いからだ。「どうしよう?スーツケースを捨てて自分だけでも逃げるべきか?交渉するべきか?」と色々考えていると「この辺はスラム街なんだよ」と脅しとも取れるようなことを言ってきた。確かに車を走らせている脇道の景色、人間の雰囲気が総じて貧困のそれを醸している。いわゆるストリートチルドレンがたくさんいて、ホームレスらしき大人がじとっとした目で車の窓を見つめてくる。とてもじゃないが逃げられる状態ではない。僕はすかさず車のドアロックを確認した後、精一杯平静を装いながら「バスの乗り場もしくは空港の別ターミナルへ行ってくれ」と伝えた。男Bは「バスの乗り場って第三ターミナルだったな?」と男Aに聞いたあと、「乗車料金はさっき両替した金額の半分(2万円)で良いよ。君もお金いるでしょ。」と言ってきた。

この時点で相手はぼったくりのペテン師だと確定したが、とにかく無事に奴らから逃れたい一心で僕は了承した。
相手は強そうな男2人。しかもここはフィリピンのマニラだ。犯罪者が銃やナイフを所持していている可能性は十分にある。そんな相手に、大きなスーツケースを抱えた丸腰旅行者が抵抗できるわけがなかった。

第三ターミナルに到着し、男Bが僕のスーツケースを降ろすのを確認してから10,000ペソ(約2万円)を男Aに渡しすぐに降車した。別れ際に男Bはハグを求めてきたが、僕はテキトーに「サンキューサンキュー」と言いながらスーツケースを抱えて急いでその場から離れた。

第三ターミナルに到着した僕は、一刻も早く日本人スタッフもしくは学校直通で自身の状況を伝えなければと思い、外にいた空港スタッフに助けを求めた。SIMカードの購入やロードの仕方にいたるまで空港スタッフに手伝ってもらい、苦戦しながらもどうにか日本人スタッフにコンタクトをとることができた。事情を聞いた日本人のスタッフも驚いた様子で、僕を第三ターミナルで保護するようフィリピン人スタッフに伝えてくれた。

それから20~30分ほど経って、フィリピン人スタッフとようやく合流することができた。相手の方から名前と学校名を申し出てくれたのですぐに分かった。日本人スタッフから連絡がくるまで、本来の集合場所で僕のことをずっと待っていたらしい。彼は笑いながら許してくれたが、僕は繰り返し謝罪した。その後はバスの乗り継ぎも無事に済んだが、本来の予定よりも乗車時刻が大幅にズレたため、最終的に学校に到着したのは深夜だった。

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僕個人の危機意識の低さ

ここまで書いてきて、自身で思うことは
当時は本当に「危機意識」が足りなかったということ。
海外に行くのに現地の情報を全く知らない。いや、知ろうとしていなかった。ネットで調べればタクシーのぼったくり被害や手口なんていくらでも情報収集できたのに。その他SIMカードの差し替え、ロードの方法についても同様だ。
さらには服装についても問題があった。留学前まで僕はアパレルの販売員として働いており、オシャレに対する意識が高かったのが完全に裏目に出た。

詐欺にあった当時の服装↓

上はTシャツにリネンのジャケット、下はスキニーパンツに綺麗な革靴。
小物もバッチリ装着。
財布はレザーの長財布。基本はズボンの後ろポケットに収納。


この日本人の若者のオシャレ感覚でマニラへ行くのだ。実際に現地を探索したことがある人なら、それだけでどれだけ浮く存在か分かるはずだ。僕を騙した詐欺師たちから見れば、僕の立ち居振る舞いはカモがネギを背負って歩いているようにしか見えなかっただろう。

日本人はカモにされやすい

日本は本当に安全な国だ。僕の危機意識の低さは先述したが、そんな僕でも、日本国内で詐欺にあったりぼったくられた経験はなかった。自分は大丈夫だと思ってしまっていたのだ。これがいわゆる「平和ボケ」というやつだが、恐らく個人で海外に行ったことの無い人の多くが該当すると思う。こうした人たちを狙って詐欺や強盗、時には殺人事件にまで発展してしまう。

僕は現在でも不定期にフィリピンへ行く用事があるので、現地環境にはかなり馴れた。その中で、現地のタクシー運転手や友人に「中国人、韓国人、日本人の中でどの国籍の人間が一番騙されやすいと感じるか?」を聞いたことがあるが、全員ほぼ即答で「日本人」だと答えた。
中国、韓国の人は良くも悪くも自我が強く、少しでもおかしいと感じれば即抗議するのだそう。たとえ英語が話せなくても構わず声を張り上げる人が多いので、詐欺を仕掛ける側もかなりリスクを背負うことになる、ということらしい。日本人はその辺りの特徴を備えていないため、狙われやすい。ここで重要なのは、日本人は騙しやすいという認識を他国で持たれてしまっていることだ。

この経験から言いたいこと


当たり前だが、日本の特徴として挙げられる「親切、謙虚さ」が、結果的に外国人に「騙されやすい」理由になってはならない。日本人が無条件に舐められる状態になるのは良くないと思うので、それぞれの国のマナーを守りつつも、不当な出来事には毅然とした態度で挑む強さと勇気を持って欲しいと思う。

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