愛と哀しみのQVC⑤

第四章:ジュエリーデイ
 経営が軌道に乗り始めたころ、初めて24時間生放送の『ジュエリーDAY』というイベント番組を放送することになった。
 先ず思ったのは、いつもは15時間の生放送を24時間生放送で乗り切れるかどうか、という不安だった。特に深夜帯は生放送の経験がないので、お客様が購入の動きに出るのか、そのため番組を観てくれているのか、という懸念があった。
 とにかく次から次にジュエリーが飛び出してくる24時間だ。
特段のイベント用の演出というのはまだ無かったが、先ずは初めて24時間フルに生放送を乗り切ることに勇んで臨んだ。
 ジュエリーといってもピンからキリで、例えばQVCのレギュラー番組にもなっていた「ダイヤモニーク」というものは、直訳すると”ダイヤもどき”だ。
 女性は指輪を沢山集めてジュエリーボックスにためて喜ぶ。
ただ、そのジュエリーボックスを埋めるにはそれなりの数のリングなどがないといけない。大金持ちならいいだろうが、一般の人々がそうするのは懐事情として難しい。一つの大金をはたいて購入した勝負リングとその他廉価のものなどが大勢、といったところだろう。
 そこで、見た目はいかにもダイヤそのもの、だけど実はダイヤの”ような”安価で買いやすい、ジュエリーボックスを埋められるリングであるダイヤモニーク、こうしたものから、本当にテレビ通販としては目玉が飛び出すような超高級なものまで取り揃えて24時間の編成が組まれた。
 中にはルースといった原石そのものも登場したが、画面に映像が出た途端に飛ぶようにSOLD OUTになってゆく。まさにお祭り騒ぎだった。
バイヤー側も目標としていた売り上げを達成できたようで、初めてのイベントは成功裏に終わった。
 放送終了後のスタジオで「お疲れさまでした!」と、成功の高揚を共有できたのが何よりも嬉しかった。これはテレビ業界を経験したものだけが持つ高揚感なのかもしれない。
 もちろん、一般企業でも何かイベントなどがあって、打ち上げをしたり、成功の喜びを分かち合うということはあるが、放送の場合はそれらとはその感じるものが少し違う。 
放送を通じて共有した労苦や結果の喜びに対し、文章では表現しきれない高揚感が湧きあがるのだ。こうした気持ちになったのは久しぶりだった。

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