愛と哀しみのQVC①

プロローグ

 現在、通販はテレビ・ネット、そして従来の紙媒体と活況を呈している。
特に2020年から世界中を巻き込んだパンデミック下では、外出が制限され、その役割は一層大きなものとなった。
 小売店やファストフード店も宅配サービスを強化しており、今やこうした購買方法は当たり前のような時代になった。
 テレビ通販がインフォマーシャルという制作番組で深夜や独立U局などで放送されていたのが主流だった時代、1996年に住友商事系の『ジュピター・ショップチャンネル』が開局し、そして2000年にアメリカのQVCが三井物産とジョイント・ベンチャーの形で『QVC JAPAN』が設立され、生放送の通販番組の体制が本格的に始まった。
 それまでのインフォマーシャルとは全く異なるスタイルは、ローンチの際に入社したスタッフにもイメージが皆目沸かず、暗中模索の中で開局に漕ぎつけた。
 以後は徐々に認知と売り上げが増えてゆき、イベント番組開催など新しい取り組みで事業規模を拡大してゆく。
 その中で、テレビ通販に関わらず、そもそも会社という組織で働くものにとって当たり前の勤務態度の常識を逸しても、これといったお咎めもなく、全社で取り組むべき業務をそうした要因でスムースに進めることが困難になる時期を迎える。そして、それは私の在籍中に解消されることは無かった。
 画面には華やかに商品を次から次に紹介し、購買意欲をそそっているその裏で、現場の理不尽・不条理な労苦があったことは、私がQVC JAPANという会社にローンチから入社し、成長を共にしたこともあり「愛情」もある反面、そうした負の側面によりそれが「愛憎」という相反する感情が同時に湧きあがることになった。
 私は、現在のQVC JAPANの内部がどうオペレーションされているかはわからない。
しかし、風の便りで聞く話などでポジティヴなものはこれまでには無い。
それでもなぜ企業としての体をなし続け、商品が購入され続けているのかが、私の在籍時の経験上からは不思議で仕方がない。
その理由となるだろう、私がQVC JAPANで経験した事柄をここに記してみた。
 大好きな会社でありながら、大嫌いになった会社、そんなところで働いたことなどなかった。
勿論、こうした私の私情も含め現在のQVC JAPANを否定し、商売の邪魔を意図するものでは全くない。
 ただ、創業期に私が経験した良・悪、数々の事柄をつまびらかにし、私のこの「愛憎相交わる」気持ちの理由を知ってもらいたかった。そうなるように私のQVC JAPANでの経験を忠実に表現し、ここに書き表したものである。


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