RTA in Japan Summer 2021 技術ボランティアレポート&今後に向けた改善提案
今回もイベント期間中は全て休みを取って、とことん RTA in Japan Summer 2021 を楽しませてもらいました。
毎回振り返るときに「今回は史上最高に楽しい RTA in Japan だったな!」と思っている気がするんですが、今回もまるで当然のように個人的満足度を更新してしまいました…一体どれだけ面白くなっていくんだ、このイベント…
自分も走者として応募していましたが残念ながら今回も採用には至らず、再びボランティアスタッフの技術担当として参加していました。
楽しかった作品の話はとても書ききれないですし、他の方が書いてくれることでもあるので、この記事ではボランティアスタッフとして行ったこと、そしてイベントの改善点についての話を掘り下げていきたいと思います。
関連リンク
イベントスケジュール
アーカイブ動画
※Twitchの方がリアルタイムのチャットも楽しめるのでオススメです。
前回の技術ボランティアレポート
技術担当ボランティアの役割
本番1ヶ月程前に運営の方から各ボランティア担当の分担とシフト表が共有されました。
今回は技術担当スタッフの2つの役割のうち「プロデューサー」を任せてもらいました。
もう1つは「ゲームシーン管理」で、それぞれの仕事の説明はこんな感じです。(Hoishinさんのチャットでの説明をそのまま引用します)
この説明だけではよく分からないと思うので、今回の RTA in Japan で採用された配信システムの全体図もお見せします。(※赤枠で囲んだところがプロデューサーが関わる部分です)
パッと見でどうなってるかよく分からんけどなんか凄そう!と思った方は僕の最初の感想と同じですね。
自分も具体的に詳しいレクチャーを受けたわけではないので微妙に間違っているかもしれないですが分かる範囲で説明します。
まず図の通り約10台のPCで構成された配信システムになっており、走者から送信される映像・音声はまず「ゲームシーン構成A・B」PCに送られて、ゲームシーン管理担当の方が本配信に乗せられる状態になるまでセッティングを行います。
「配信映像構成」PCでは「ゲームシーン構成A・B」PCでセッティングしたレイアウトがNDI(IPネットワークを経由してビデオとオーディオストリームを伝送する方式)によりそのまま送られるので、下記画像のように即時シーン切り替えが可能になっています。
つまり最終的に RTA in Japan のTwitch配信に映される映像・音声のスイッチングがプロデューサーの主な役割ということになります。
前回までは前のRTAが終了して待機画面に切り替わってから次のRTAの映像や音声のレイアウト調整を行っていたのでセットアップにかなりの時間を要していましたが、2つのスタジオで2作品までの準備が可能になったことで、前回と比較して格段にセットアップ時間が短縮されました。
(9/10追記)
同じく技術ボランティアとして参加されていたアジーンさんが、さらに詳しい説明をレポートで書いてくださっているので是非こちらもご覧ください!
ボランティア担当スケジュール
ちなみに自分がプロデューサーとしてシフト担当したのはこのスケジュールの時間帯になります。
前回同様に事前準備としてこの時間帯の走者提出動画は全部見て、それぞれどんなゲームでどのようなRTAを行うのか、タイマー計測タイミングなどの情報を自主的に把握してから本番に臨みました。
実際のプロデューサーのお仕事
仕事量的にはプロデューサーよりもゲームシーン管理の方が大変なので、ゲームシーン管理担当の方に自分の作業に集中してもらえるように、その他の連絡や進行のための準備を行っていました。
作業の流れとしては、現在走っている作品の進行状況を見てゲームシーン管理担当の方に次の作品の準備を始めてもらう指示を出す、完走後に走者の方に締めてもらうようチャットで伝える、待機画面へ切り替えてから必要に応じてCMを流し、準備が整ったら次の作品へ切り替える、という繰り返しです。
今回初めてやってみたこととして、RTA出走時に走者提出動画を合わせて再生して完走予測時間を把握しやすくするということを裏で行っていました。
余裕を持って裏方準備を進めていく上であとどのくらいで完走するかというのは重要な情報なので、このおかげもあって想定よりも早く終わってしまって慌てるということはありませんでした。
音量調整について
その他の大事な作業は音量調整です。
ゲームシーン管理の方が走者・解説間の音量バランスの調整を行ってくれるので、プロデューサー側ではゲーム全体の音量と走者・解説全体のマイク音量のバランス調整を担当します。
これは Voice Meeter という仮想オーディオミキサーを使用して調整していきます。
ある程度このあたりに設定しておくと良いという目安はありますが、最終的には出力される音声を自分で聴いて、あるいは他裏方スタッフの方からの助言、チャットでの反応を伺いながら微調整を行います。
これは個人的な考えなんですが、海外視聴者と比べて日本の視聴者はゲームBGMを大事に考える傾向が強いのではないかと思っています。
ゲーム曲のコンサートが各所で頻繁に開催されていたり、BGMの話題で盛り上がることが多かったり、そういう愛好者は多いはずなのでRTAイベントといっても好きなゲームBGMにも期待して見に来ている方も少なからずいるのではないでしょうか。
僕自身も同じ気持ちを持っているので、走者・解説者のマイク音量を邪魔しない程度に出来るだけBGMを楽しめる音量調整を心がけていました。
また、レースの場合はゲームシーン管理の方が各走者ごとのゲーム音声切り替えを担当しています。
忙しい展開の中でその状況によって最適な画面を判断し、素早く切り替えを続けていくのは集中力を要する作業で、職人技ともいえるものです。
Live配信中にも気づいた方はいらっしゃったと思いますが、これからアーカイブをご覧になるときにもそういった細やかな工夫に気づいてもらえたら嬉しいですね。
ボランティアの仕事を終えて
今回は自分の担当する時間帯では大きな問題もなく無難に終えられたと思います。
同じシフトで作業していたボランティア・運営の方にもとても助けてもらいました。
裏方として参加する度に感じることですが、運営陣の皆さん、他のボランティアスタッフの皆さん、走者・解説者の皆さん、その全員が「良いイベントを作ろう」という思いで同じ方向を向いている感覚が本当に気持ちいいです。
これだけ大きく成長したイベントを支える一員として貢献できたやりがいは格別なものがあるので、今後もチャンスがあれば是非また力の限りお手伝いしたいと思っています。
コマーシャル
ーーーコマーシャル開始ーーー
2020年から年1回のペースで「不思議のダンジョンRTAフェス」というRTAイベントを主催しています。
不思議のダンジョンRTAフェス(略称:不思議RTAフェス)は、「不思議のダンジョンシリーズ」及び「その他のローグライクゲーム」をテーマにしたRTAマラソンイベントです。
次回は来年初頭に第3回を開催する予定です。日程が確定したら告知を行いますのでご期待ください!
■不思議RTAフェス 関連リンク
【Twitter】イベント情報はこちらから発信します、フォローお願いします!
【Discord】どなたでも入室自由ですのでお気軽にどうぞ!
ーーーコマーシャル終了ーーー
今後に向けた改善点
個人的には楽しいが9割9分で本当に幸せな5日間でした。
一方で、視聴者としても裏方スタッフとしても、イベントとして改善されて欲しいところというのは毎回出てきます。
この記事の後半では、今回の RTA in Japan だけではなく以前から問題の種になることもあったESTについて私見と改善していって欲しい点をまとめていきたいと思います。
なお、受け手によっては一部強めの表現に感じられてしまう部分もあるかと思いますが、特定の人物を貶めたり責めたりしたい意図は全くなく、あくまで今後の改善を願って意見させてもらいました。何卒ご容赦ください。
ESTの定義
EST=Estimated (time) の略で、予定時間という意味でRTA界隈で使用されている用語です。
そしておそらく多くの視聴者の方は認識違いをしていることでもあるんですが、このESTはほとんどのRTAイベントではRTA開始から終了までの時間という意味を指していません。
RTAイベントにおけるESTとは「各参加者に与えられた(前説と後説の時間も含む)持ち時間」です。
これはOengus(RTA in Japan が利用している応募サイト)の応募説明にも明記されていることです。
イベントをご覧になっている方は各走者の方がRTAの出走前後に説明や感想、余興などを行っているのはご存知だと思いますが、そのプレイ前後の時間の使い方の是非についてRTAプレイヤーの間で話題になることがあります。
プレイ前後の解説時間の是非
イベントに出るからには限られた時間で精一杯そのゲームの魅力を伝えたい、見せたいという思いは参加者の誰もが考えていることだと思います。
ただそういう思いが高じてか、プレイ前後の解説(余興)に長く時間を費やす人は年々増加傾向にあるように感じます。
前説だけで10分近くの時間をかけたり、完走後に熱が入りすぎてESTをオーバーしても喋り続けてしまうなどの状況も色々なRTAイベントでここ数年何度も見かけました。
ESTをどのような配分で使うかは各参加者の裁量に委ねられているので、作品の性質や見せたい内容に合わせて自由に決められるようになっています。
自由な発想の妨げになってはいけないので安易に制限を設けるべきではないと思いますが、「ESTを越えないようにする」ルールを守ることは大前提だと思います。
裏方スタッフの立場から感じること
また、裏方スタッフへの配慮という意味でももう少し気にして頂きたいことでもあります。
長い前説を行っているときはタイマー管理を行う担当者はその間ずっと待ち続けることになります。
完走後の画面切り替えのタイミングを待っている担当者についても同じことです。
あまりに度が過ぎていると判断したら進行を促す指示を出すこともありますが、晴れ舞台を出来るだけ気持ちよく走ってもらいたい思いが当然ありますのでとても言いにくいことです。
完走後に思いつきのように「余興を見せたいのでこれやってもいいですか」と尋ねられるのもかなり困る質問だったりします。
ボランティアスタッフの権限では簡単に決められることではないので運営の方に判断して頂くことになりますが、そのやり取りの間にも時間は過ぎていきます。
待機画面への切り替えまで可能な限りスムーズに進めていきたいのに、その確認時間が非常に無駄ですし、そもそも出走する前にあらかじめ伺いを立てておくべきことだと思います。
実際のところ、ある作品でESTを越えたとしてもイベント全体としてはいくらでも辻褄を合わせることは出来ますし、1日で終了する小・中規模のイベントならば許容できることではあります。
ただ、RTA in Japan のような複数日に渡るオールナイトイベントで、かつバックアップ枠を設けている場合はまた別の問題が関わってきます。
バックアップ枠とは
バックアップ枠(ボーナス枠とも言います)はイベントのスケジュールが巻き進行になったときの調整のために追加されます。
この調整が行われなければ本来告知された予定から残り全ての作品がどんどんズレていくことになり、視聴側としては「見たかったのに見逃してしまった」、走者側としては「(用事などで)走ることが難しい時間になってしまった」などの問題を生む可能性が出てきます。
イベントを円滑に進行させるために非常に重要な役割を担っているのがバックアップ枠担当の参加者の方たちですが、お察しの通り巻き進行にならなければ参加するチャンスが得られないということでもあります。
今回の場合は、1時間以上巻ける見通しが立ったらその後の時間帯に入れるかどうかを呼び掛けて、そのときに手を挙げたバックアップ枠の方の中から運営陣でその場で選考して決定していたようです。
つまり、バックアップ枠の人たちはイベント期間中の5日間、自分の出番が回ってくることを期待しつつ、いつ呼び声が掛かっても応えられるように最後まで備え続けていたわけです。
出来るだけ多くの人が報われて欲しい
あくまで自分個人の意見ではありますが、参加者全員で協力してスケジュール全体の時短を少しずつ達成していって、終了したときにもっと多くの関係者が喜べるイベントになって欲しいと僕は思います。
今や応募者のほとんどは選考で不採用になり、バックアップ枠として選ばれることさえ難しいのが RTA in Japan の競争率の激しさの現状です。
今回は4作品がバックアップ枠の中から選ばれて走られましたが、そのいずれも本スケジュールの作品と見劣りしない走りと解説で魅せていたのはイベントをご覧になっていた方にはご存知の通りです。
それが出来たのは当然のことながら4作品のバックアップ枠の皆さんが、確実に訪れる保証のないチャンスのために入念な準備をして臨んでいたからです。
不運にも走る機会が得られなかった他のバックアップ枠の方もきっと同じだと思います。
参加者全員がベストを尽くしたとしても難しいことかもしれませんが、より多くのバックアップ枠の方が報われるようになればその作品が走られることを期待していた視聴者としても嬉しいことですし、イベントとしての満足度をさらに高められると思います。
改善策の提案
まず前提として、設定したESTの範囲内であればどのように時間を使っても全く問題ないと思います。
参加される方は見ている人に楽しんでもらうという目的のためにたくさん準備して臨んでいるので、ESTを越えてしまうのはそんな善意の気持ちが昂ぶったためについ時間を忘れてしまったというケースがほとんどなはずです。
自分の頭ではなかなか良い解決方法が思い浮かばないですが、少しでもEST内に収めやすくする改善策について挙げてみたいと思います。
・適切なESTを設定する
多少のイレギュラーが発生しても越えてしまうことのないESTを設定して応募することがまず一番大事だと思います。
RTAの所要時間が短くても前後の説明時間は体感している以上にかかるものです。
特に喋る人の数が多い場合は順番に喋っているだけで気づいたら数分経ってしまっていることもざらだったりします。
ゲーム以外にかかる時間も十分に考慮して余裕のあるESTにすれば、それだけでESTを越えてしまうことは少なくなると思います。
・画面切り替え後からの経過時間を計測しておく
これは自身でESTの経過を把握しておくことで残り時間を気にする意識を高めるための案です。
ちなみに自分が見聞きした中でも、自分自身で待機画面からの切り替えから完走後の切り替えまでをタイマーで測り、ESTを越えないよう気をつけているという人は既にいらっしゃるようでした。
最後に
楽しいイベントに関する記事なのにすっきりさせられないお話になってしまい申し訳ありません。
本来であれば難しい問題に口を出して無闇に波風を立てたくはないのでこういう話題は避けるようにしているんですが、数年前から気になっていたことでもあったのでこの機会に自分の考えを書かせてもらいました。
この記事を読んでこういう考え方もあるんだなーという気づきになればそれで十分だと思っています。
こうすれば良くなるかもしれない、と思っているだけでは何も変わらないので、発信することでもっと良い意見や解決法が他の方からも出てきてイベント全体の改善に繋がればよいなと思います。