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スマホは最新のドラッグだ


Twitterのアプリを立ち上げてみてほしい。画面が青く染まり、中心の白い鳥が拡大してスクリーンを埋め尽くすほど大きくなる。それから突然、ツイートが現れる。

これはログインに時間がかかるわけでも、接続状態が悪いせいでもない。待たせることでドーパミンを分泌させ、スリルを増加させている。この遅れは我々の脳の報酬システムを最大限に煽るよう、入念に計算されている。スロットマシーンのリールが動き出すとき、ワンテンポ遅れるのと同じメカニズムだ。

頭の良い人たちはそうやってユーザーの脳を支配し、「みんなの注目」を集めようと躍起になる。「みんなの注目」が金を生むからだ。みんなの注目が集まるところに企業は広告を出し、広告費を上乗せされた商品をみんなが買う。TwitterやInstagramやfacebookは無料で使える代わりに、これでもかと我々の時間を奪っていく。

平均で1日4時間、若者の2割は平均7時間もスマホを使う。自ら進んでスマホを使うわりに、使えば使うほど幸福度が下がることは全世界の様々なデータから読み取れる。自ら進んでTwitterでレスバトルして疲弊し、Instagramで他人と比較して喜びと幸福を奪われる。

誰かが言った。
「スマホは最新のドラッグだ」

僕が2022年に最も感銘を受けた著書といえば『スマホ脳』。うつ傾向のある方全員に読んでもらいたい名著だ。

著者はスウェーデン人の精神科医・アンデシュ・ハンセンさん。幸福度が高いと言われている北欧は、日照時間の短さのせいかうつ病患者が多く、人口1000万人のスウェーデンで毎年、1500人も自殺している。スマホがうつを助長し、睡眠障害を誘発し、学力をも下げる…そんなことがデータと共にまとめられている。

「スマホは危険だよー。使うなら1日2時間以下にしてー」と警鐘を鳴らし、うつ病なら薬を服用するより、適度な運動、充分な睡眠、健康的な食事をするべきと説く。結論は実に当たり前のことが書いてあるが、これを守れる人がどれほどいるのか。

この著書が優れているのは、一貫して「現代人の脳は原始人のものとほとんど変わらない」という進化心理学をベースに説明しているところ。

「なぜ我々は愚かな選択をしてしまうのか?」

分かっているのに食べ過ぎたり、ダメだと思いつつもスマホに手を伸ばす。これは我々の報酬システムという、生きるための欲求がそうさせている…この説明のために登場したカーリンとマリア、2人の女性の対比が秀逸だった。

10万年前のサバンナ。カーリンの前に甘い果実の実る木がある。実を一個だけ食べると、満足して去っていく。翌日またお腹が空いてあの木のところにやってくると、誰かに全部取られて実はなくなっていた。

同じサバンナに住むマリアの前に、カーリンと同じ甘い果実の実る木がある。マリアは一つでは満足できず、食べられるだけお腹に詰め込んだ。翌日またお腹が空いてあの木に行くが、残しておいた果実は誰かに全部取られていた。しかし、前日にたくさん食べたおかげで、カロリーはまだ身体に残っている。

人口の2割が飢餓で亡くなっていた時代において、生き延びる確率が高いのはマリアだ。カロリーは脂肪として蓄積され、食料が見つからないときに餓死を防いでくれる。マリアの方が遺伝子を遺す可能性が高く、後世にはカロリー欲求の高い遺伝子が増えていく。

もしカーリンとマリアが現代社会にいたら。カーリンはマックでハンバーガーを1個買い求め、ほどよく満腹になって店を出ていく。しかし、マリアはビックマックセットとサムライバーガー、アップパイとアイスクリームまで注文し、はちきれそうなお腹で店を出ていく。翌日、マリアは空腹となってまたマックに行くが、10年前のサバンナとは違い店は食料で溢れている。マリアは昨日と同じメニューを注文する。

数ヶ月後、暴飲暴食がマリアの身体を蝕み始める。肥満体型となり、二型糖尿病も発症した。カーリンとマリアの立場は逆転。生き延びるためのカロリー欲求は、カロリーが実質無料のような現代には適していない。現代人は飢餓よりも過食で死ぬ。

社会の凄まじい変化に比べて、脳は10万年前から変わっていない。食料が余るようになってほんの100年やそこらしか経っていないけど、脳の進化がそれに追いつけるわけがない。人体の進化はそこまで早くないのだ。

サバンナで生き延びるための様々な欲求により、現代人はスマホに手を伸ばしてしまう。知的探究心や繋がりを求めてTwitterを開き、承認欲求によってInstagramを開く。ヒトがゴシップ好きなのは、10万年前は死因の1〜2割が殺人だったから、コミュニティの人間関係を知ることが生死に直結していたから。噂話が好きなのは、身を守るための本能だ。何も恥じることはない。

幸せならそのままで良い。しかし、著者は「スマホを使えば使うほどうつが増え、学力は下がり、不幸せになる」と断言している。

どうすればいいか?
欲を無理やり抑えようとするのではなく、物理的に距離を置くしかない。なぜなら人間の欲求とはかくも抗い難いものだから。著者は「スマホは1日2時間以下。睡眠障害があるなら寝室にスマホを置くな」と言っている。

僕もスマホに時間と集中力を奪われることに嫌気がさし、何度もスマホを捨てようと試みた。が、できなかった。タバコも辞めれんような男がスマホを辞められるわけがないと悟り、本著を読んでから徐々に徐々にスマホを触る時間を減らしている。僕にはこれが精一杯。

ジョブズやビル・ゲイツは、自身の子供のスマホ使用を著しく制限していた。あれだけ売っといて自分とこだけ何なんだとは思うが、それほどの脅威があるということだろう。

落ち着きなく活発な娘に、GPS付き連絡用ケータイを持たせようと考えている。もしものときにあると便利だけど、依存性を考えると躊躇する。さて、どうしたものか?

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