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ep4.ブログ


麻莉は姉の後を追い、メディアの世界に身を投じることになる。実は妹の方がミーハーであった。

姉は局アナ、妹はタレントとして別々の道で活躍し、美人姉妹として一挙手一投足に注目された。そしてブログを始める。当時は有名人の発信ツールと言えばブログであり、今のTwitterの位置づけだ。

麻莉のブログは素晴らしかった。記事は一所懸命さと思いやりに溢れ、見る者をほっこりさせてくれた。血が通っていたとも言うべきか、もちろん文才も遺憾なく発揮していた。

実は麻莉は30歳でガンになり、3年の闘病の末に亡くなっている。闘病の記録を綴ったブログは世界中の人に読まれ、多くの人の涙を誘った。家族のため、読者のため、そして自分のために辛いときもブログを綴った。

そのブログはアメリカの大学の図書館に保存されている。「後世に遺すべき大切な資料」と世界的に認められたわけだ。そこらの芸能人のブログとは覚悟も熱量も違うのは当然だ。

一方、麻奈のブログはどうだったか。ひねりのない日常の報告と、手垢の付いた耳障りの良い薄い言葉。ちょいちょい挟むステマによる広告を、上手いこと誤魔化して記事にしていた。投稿すれば報酬が貰えるのだから、クソ記事でも何でも投稿して数だけはこなす。

どこまでも自分、自分、自分。「金儲け」と「承認欲求」の匂いしかしない自己中心的な文章。こんな駄文で高い報酬を得られるのだから、そりゃみんな芸能界に縋るってなもんだ。

麻奈はテレビ局を辞めてから今までずっと、空白期間はありながらもブログを書いている。しかし、僕はしっかりと読んだことはない。人間の本質とは「何を言ったか」ではなく、「何をしたか」に表れるという持論をもっている。嘘の多いブログで惑わされた人も多いから、読まなくて正解だったのかもしれない。

情報収集として何度か読破しようと試みたことがあるが、読もうとしても言葉が頭に残らない。と言うか読んでいると苦痛で反吐しか出ない。心を折られ、いつしか諦めてしまった。

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