おめでとうメールと謝罪


マヤさんは誕生日を迎えた。
誤解して一方的に罵って疎遠になった、母親からのおめでとうメールを待っていた。

自分からは死んでも連絡できない。今日は私の誕生日だよ!と母親にアピールして、期待してただただ待つ。他力本願のマヤさんらしい。だってあっちが悪いんだからと強がりつつも、母親からのメールを渇望している。

話がしたい。
誕生日がきっかけになるかも。
出来ることなら仲直りしたい。

でも私からは絶対に連絡しない。だって悪いのは向こうでしょ。連絡したいけどできないもどかしさでイライラが募り、身近な人に当たり散らす。プライドが高いとかくも生きにくい。

0時ぴったりにメールはこない。
丸1日、待てど暮らせどなかった。

着信が鳴るたびに「お母さん!?」とスマホを確認するが、全て友達からのメール。一応、返信するが、こいつらのメールはどうでもいい。上っ面のありがとうメールを返す。

「何でメールしてこないの!?」

焦燥感と苛立ちを抑えながら丸2日待ったけど、遂に母親からメールがくることはなかった。せめて誕生日のおめでとうメールくらいはしてくれると信じていた。マヤさんはなぜ母親からメールがこないのか分からない。落胆が徐々に怒りに変わる。

「何でこんなに簡単なことができないの!?」「私のことなんてどうでもいいわけ!?」

しかも誕生日の当日に、母親が妹の子供と楽しく食事会をしていた、と知り合いが教えてくれた。

どういうつもり!?
頭おかしいんじゃないの!?

プチン。もう我慢できない。

イライラをそのまま文章にして、ブログに罵詈雑言を並べる。悪態をついていたら悲しくなり、枕に突っ伏して目が腫れるまで泣く。

眠れない。また書いて、また泣く。何度も書いて、何度も泣く。

疎遠になったのはそもそもマヤさんが原因だが、自分は間違ってないと譲らない。傍から見ればどう考えてもマヤさんが悪いが、本人は自業自得という思いに至ることはない。

これは病気なのだ。相手を思い切り罵倒して立ち直れないくらいの傷を負わせたとしても、何があろうと相手が悪い。何がどうなろうと自分は被害者。私は悪くない、私にここまで言わせる相手が悪い。

おめでとうメールしない相手が悪い。どこまでいっても「そっちが謝れば許してあげる」というスタンスは覆らない。完璧な認知の歪み、完全なる病気。鬼籍に入るまで勘違いは治らない。

他責傾向の他力本願。つまり相手に期待しているのだ。それが叶わぬと裏切られた気持ちになる。自己中心的だから勝手に期待して、勝手に落胆して、勝手にブチ切れる。

執着が織り成す一人相撲。対戦相手も行司もいない。土俵にはマヤさんしかいない。

当初、満員だった客席も、あまりの滑稽さに最近では空席が目立つ。一応、土俵には上がったが、対戦相手は誰ひとり現れない。母親どころか家族知り合い全員からスルーされている。

マヤさんはどうすれば良いのか?

簡単だ。
謝ればいい。
プライドなんか捨てればいい。
ついでに今の旦那捨てればいい。

ただし、謝れば許してもらえると期待するのは良くないし、謝るべきだと決めつけるのも良くない。どちらも一方的な決めつけだから、認知の歪みと言える。

ただ謝る。
相手に赦してもらおうとせずに。
反省して思いやりを持って接していれば、必ず自分にとって良い結果になる。まずは自分から謝らなければ接することすらできないから、思いやりもクソもない。ただ謝ればいい。


マヤさんは「悪いことしたら謝るのが当たり前」と考えている。小学生に教えるならそれで良いが、世の中は複雑だ。深く掘り下げれば善悪も曖昧で、立場により善悪がひっくり返ったりもする。

そして何があろうとも自分が悪いことはないのだから、絶対に自分からは謝れない。もはや憐れとか生きにくそうとかのレベルじゃなく、ただの病気だ。

謝罪とは。
相手に許して欲しいからするものだ。どうでもいい人とか、この先、関わるつもりのない人なら別に謝る必要はない。

謝罪するのは愛じゃない。
メリットがあるから謝罪する。
それを赦すのが愛だ。

マヤさんには分からない。だって「身体はオバサン、頭脳は子供」だから。

逆コナンのマヤさんには立場により善悪がひっくり返ることも、「愛とは赦すこと」の意味も分からない。なぜなら謝罪も赦すこともできないのだから。コナンくんのメガネもキラリと光る。

人から食べ物を盗んでも「私を空腹にした人や世間が悪いのよ!」と考えるような人種だ。こんな低レベルでみみっちい犯人では、コナンくんも本気を出せない。

足し算の分からない人に掛け算は理解できない。小学生に教えるようにとりあえず、やってはいけない行動を一つひとつ教えていくしかない。

まだ意味や本質を諭す段階ではない。小学生に教えるように「嘘をついてはいけない」「悪口を言ってはいけない」と、行動を制限する段階だ。理解できるようになったら意味を教えればいい。

年齢は関係ない。
バカは自分がバカだと認識できないから一生バカのままであり、欠点を病識できないのも同じメカニズム。治らない。

小学生で分かる人もいれば、オバサンになっても分からない人もいる。本質が理解できないなら、世の中で生きるためにしてはいけないことを教えていくしかない。

「私に落ち度があったのかも」「もしかして私が間違ってるかも」

こう考えられるようになればもうバカではない。あとは思いやりと節度があれば、自己中な言動や傍若無人な態度はなりを潜める。だから自己評価は高すぎてもいけない。マヤさんはプライドと自己評価が高すぎた。

【マヤさんの高いもの】
プライド、承認欲求、自己評価、他罰思考、自利

【マヤさんの低いもの】
自己肯定感、経験値、思いやり、自己認識、他利

まさに子供そのもの。
マヤさんをワガママな小学生だと思えば、突飛な言動にいちいちイラつくこともあるまい。

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