ep3.転校

父親が転勤族の銀行員という仕事柄、仲林家は引っ越しが多かった。麻奈が高校を卒業するまでに、なんと6回も転校している。

姉妹は人見知りせず誰とでも仲良くなれる性格ではあったが、転校ばかりで仲良くなった友達ともすぐに離れてしまう。ただ、姉妹だけは離れず常に一緒にいる。このことが仲良し姉妹の結束をさらに強くした。

姉は妹を守り、妹は姉を頼る。姉は勉強を教え、妹はメンタルが崩れがちな姉をサポートする。互いを補い合う理想的な姉妹像。

行く先々の学校で姉妹は目立ち、耳目を集めた。転校してくる美少女なんてまるで漫画の世界の話であり、男子生徒が色めき立ったのは必然といえる。

しかし、すぐにクラスに溶け込む麻莉とは対照的に、麻奈は何かと問題が絶えなかった。クラスに馴染めなかったり、ときにはいじめられたりもした。

麻奈はこの現象について、「同じような姉妹なのに、なんでこうも違うんだろ」と悩んだ。それは後に妹への嫉妬や羨望、ライバル心に繋がっていく。

そういうネガティブな感情を認めたくなかったのもあったのだろう、麻奈は自分だけがいじめられることについて、「私が麻莉ちゃんよりも可愛いからだ」「麻莉ちゃんは自分を抑えているからだ」と結論づけた。自己中は常に自分に都合の良い結論を導き出す。だからこそ自己中となる。

麻奈が番組で「学生時代は6日に1回のペースで告白された」と語ったことがある。これはサービス精神もあってテレビ用に盛ってはいたけど、モテたことは事実だ。

「初めまして♡仲林麻奈です♡よろしくお願いします♡」

麻奈としては普通にあいさつしただけなのに、なぜか女子には嫌われて、男子にだけは好かれた。彼女が言う「演技してるつもりはない」は本心だろう。生まれ持っての媚び体質。天性の男たらし。

その才能を使って目立ち、就職し、魑魅魍魎がうごめくテレビの世界で第一線を走り続けたのは、素直に尊敬できる。その結果、日本中に素性が知れ渡り、大多数の女性に嫌われたのも必然なのだろう。