Aさんとマヤさんの事件背景がリンクする




青森県の集落で家が全焼し、焼け跡から5人の遺体が見つかった。遺体の一人は近くに住む被害者の兄のAさん(92)とみられている。

火勢の強さなどから可燃性液体を使った放火の可能性が高く、現場近くにポリタンクを積んだAさん(92)の軽乗用車が停めてあった。警察はAさんが放火したとみている。



【事件の背景・時系列】

  • 十文字家にAの母親が後妻として嫁ぎ、Aの妹も十文字家の嫡男と結婚。

  • Aは十文字家の近くで家族と仲良く暮らしており、十文字家とも交流があった。ところが、孫が大学一年生のときに自殺し、娘が病気になり、その後、奥さんも亡くなってしまう。Aは一人ぼっちに。

  • Aと十文字家は最近まで交流があった。

  • そもそも十文字家は近隣の村に本家があって、分家がこの集落に移り住んできた。

  • この集落の人間の血がないとここには住めない掟だから、この集落の血を残していくためにAの母親に後妻として嫁いでもらい、さらに妹も十文字家の嫡男の先代と結婚することになった。

  • ムラの掟とはいえ、Aさんは十文字家に対し複雑な感情を抱いていた。

  • ところが十文字さんの次女はこの掟を破って、外の男を連れてきて結婚して村に住んだ。さらにその夫婦が祭りの運営まで関わるようになっていた。

  • Aさんからすれば、「血を分けてやった一族のくせに、掟まで破って本家ヅラしている。これでは自分の本家にも顔が立たなくなる」と忸怩たる思いがあった。

  • A家は江戸時代から続く名門で、他にも主要な一族が血を受け継いで存続してきた。そもそも今回の火事で燃えてしまった家は、もともとA家のものだった。しかし妹の結婚に伴い、その家を十文字一家に明け渡すことになった。

  • つまりAさんは追い出されるような形で今の家に移った。さらにAさんの田んぼを潰して十文字家の家を建てるという話まで出ていた。

  • 村の女性やAさんの分家たちは励ますどころか、『Aがよくないことしたからこんな事が起こったんだ』と噂を広めた。掟のことを外部に話したんじゃないかとか、食べてはいけない時期に四つ足の動物を食べたせいで氏神の祟りが起こったとか。

  • 5年前くらいにAさんの家が火事になっている。Aさんは酒が入ると怒りっぽくなって『殺してけらあ!』とか激昂していた。


5年前に自宅が家事になってもいるし、Aさんが十文字家を道連れに焼身自殺した可能性は高い。何が原因というか、積み重ねてきた鬱憤が爆発し、老い先短い自分の命もろとも決着をつけようとしたのではないか。

「なんで俺だけ不幸なんだ!」「よそ者のくせに幸せそうにしやがって!」「ムラの掟を守る!」「この家だってもともと俺のもんだ!」

「ムラの掟」「祟り」とはいつの時代の話かと驚愕するが、田舎ではそう珍しいことではない。小さな価値観の違いや逆恨みから大きな事件に繋がることはままあるし、田舎ほど小さな既得権益にこだわるもんだし。

Aさんは家族の死により少し扱いづらくなってしまったようだけど、十文字家はその後も親密に交流している。複雑な事情はどうあれ、少なくとも十文字家はAさんを受け入れていた。しかし、Aさんは逆恨みして十文字家に火をつけた。Aさんの忸怩たる思いも一笑に付すことはできないものだし、何とも悲しい事件だ。

どうしてもあの人のことが浮かんでしまう。

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