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ep24.写真係


二川家、屋号・羽田屋と言えば歌舞伎界の象徴、梨園の心臓。その当主・蟹蔵はいわば、歌舞伎界のトップオブトップ。そのブログは古来のファンはもとより、ミステリアスな歌舞伎界を知るきっかけとして世に受け入れられた。

歌舞伎役者を映画やドラマに起用して知名度を高めたのは、歌舞伎を牛耳る梅竹株式会社の集客戦略。もちろん蟹蔵も後押しを得て活動の場を広げていったのだが、それは歌舞伎界の未来を憂いていた蟹蔵の思惑とも一致した。

蟹蔵は斜陽で閉鎖的な歌舞伎に新たな風を取り入れようとしていた。積極的に新作歌舞伎を公演したり、自身でイベントを開催したりと奮闘し、ブログもその一環という位置付けだったのだろう。ブログはファン層の拡大に貢献したばかりでなく、その報酬は本業を上回るほどにもなった。

蟹蔵のブログは基本的には日常や裏側の紹介、そして華やかな家族。家族の思い出をブログに投稿するだけで報酬にも繋がるから、記録という点でも収益の多角化という点でも良いことづくめ。

家族の写真、とりわけ2人の子供は自然体の写真ほど評判が良い。蟹蔵が出張のときなどは麻莉が写真係となり、子供たちを撮影して蟹蔵のブログに投稿していた。しかし、その麻莉が亡くなってしまう。

蟹蔵は付きっきりで子供たちの写真を撮ることはできないから、ブログのために誰かに写真係をしてもらわなければならない。

麻莉の代わりにスタッフが写真係となれば良い、という問題ではない。自然な姿を撮影するためには、写真係は子供たちが心を開いている人物でなければならない。そこで伯母である麻奈の出番となる。

子供たちをアクセスアップに使いたい麻奈としても、写真係は願ったり叶ったり。可愛い姪甥と遊びながらアクセスアップ間違いなしの写真も撮れる。蟹蔵に恩も売れる。

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