文系が、独学でITストラテジスト(ST)取得するまで
2017年度のITストラテジスト試験に独学で合格しました。勉強期間は約6ヶ月。
文系(あるいはIT未経験)がITストラテジスト試験に独学で合格することは可能だということを伝えておくことは、これから受けようとしている人にとって多少の参考にはなると考え書き残しておくことにします。
ITストラテジスト試験について
IPAの公式ページによると以下のような対象者をITストラテジストとして設定しています。
試験方式は4つに別れます。一つ前の方式をパスしていないとそれ以降は採点されずに不合格になります。すべての方式の及第点獲得以上の対策を行う必要があります。
1.【午前Ⅰ(四肢択一)9:30~10:20(50分)】
参考:過去問(令和元年度午前Ⅰ)
全30問中30問マークシート回答。応用情報技術者試験合格等で科目免除の対象にもなっています。
とのことなので、基本的には応用情報技術者試験の午前対策とほぼ同等の対策をすることになります。
2.【午前Ⅱ(四肢択一)10:50~11:30(40分)】
全25問中25問マークシート解答。ストラテジ系を中心にマネジメント系+セキュリティ分野から出題されます。基本的に過去問で対策する形になると思います。
3.【午後Ⅰ(記述式)(90分) 12:30~14:00(90分) 】
記述式で3題出題され2題を選択して解答。ITストラテジストとして必要な観点を持ちつつ、問題文を適切に読解し、問われている内容を本文から忠実に答えていく必要があります。対策はやはり過去問がベースとなります。ただし、過去問の解答のみの参照では、なぜその答えなのか理解が追いつかないことがあります。その際に役に立つのが、解説書です。適宜利用するといいと思います。
4.【午後Ⅱ(論述式)14:30~16:30(120分)】
論文形式で3題出題され1題を選択、課題について実務体験をもとに概ね2000~3000文字程度で論述します。A〜Dの4つのランクで採点され、Aランクで最終的に合格です。120分で課題の読解、文章の構成、組み立て、記述を行う必要があるため基本的に時間との勝負になると思います。
やったこと
私が行ったことは以下です。
0. ITパスポート試験の受験
1. 午前1:空き時間でWebアプリで過去問を解く
2. 午前2:全過去問の印刷→繰り返し解く
3. 午後1:全過去問の印刷→繰り返し解く
4. 午後2(1):「ITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集」の事例を模写する
5. 午後2(2):事例を用意する
0. ITパスポート試験の受験
まったくの未経験がいきなり情報処理技術者試験のスキルレベル4の試験から挑む際、何から手を付けていいのかわからないという壁に当たりました。ITの知識は実務で必要なweb系の知識のみしかなく、基礎数学やコンピュータの仕組みに関してはほとんどありませんでした。そこでCBT方式のITパスポート試験を受けることにしました。結果としてよかったと考えています。理由は主に2つ。①ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系を浅く全体の範囲を把握することができる。②出題形式になれることができる、です。
期間は2週間後あたりに設定しました。参考書一冊と過去問の繰り返しでさほど大きな壁なくクリアできるかと思います。
私はこの書籍で基礎的なところから押さえました。パラパラめくって雰囲気を掴んだら、過去問を解きました。私の場合、過去問は、市販で中古で売っているものを使用しましたが、今後受けられる方は、「ITパスポート過去問道場」を利用しましょう。これはITパスポートをこちらで十分だと思います。過去問を解きながら常に正答率を60%以上を保つように解き続けられれば、合格はさほど難しいものではないと思います。
1. 午前1:空き時間でWebアプリで過去問を解く
午前1は基本、応用情報技術者試験の午前対策と同じと聞いていました。したがって行うことは、応用情報技術者試験の午前の勉強と過去問を解くことでした。
上記をテキストとしながら、上記のITパスポート過去問道場の応用版「応用情報技術者過去問道場」をひたすら解いていました。基本的に過去問を解きながら、わからないところがあれば、テキストを開いて理解する、というのを繰り返します。過去問道場には、問題はが1000問以上あり解説もついています。それから、過去問道場を繰り返しているうちに、過去問は繰り返し再度出題されること、独特の出題形式であることを肌で感じました。
過去問を解くタイミングは、できる限り通勤時間やスキマ時間に行っていました。スマホのホーム画面に追加し、電車に乗ったらやるのように自分なりの行動トリガーを持つと良いと考えました。
2. 午前2:全過去問の印刷→繰り返し解く
残念なことに、過去問道場にはITストラテジストの午前2対策がありません。(ネットワークスペシャリスト、プロジェクトマネージャ、データベーススペシャリストには午前2過去問道場がある)そこで私は、公式サイトの過去問題からすべてのITストラテジストの午前2の問題PDFをダウンロードし、USBメモリに入れ、問題と解答をキンコーズで印刷しました。印刷代が嵩むので、A4に2枚印刷する形で行いました。ついでに午後1、午後2の問題も印刷しています。
午前2は過去問が繰り返し出題されます。したがってすべての問題の解答を覚えることが点数の底上げには有用であることがわかりました。25問の出題内容過去10年分を覚えることは労力としてそれなりに掛かりましたので、問題をできる限り、理解もするようにしました。
私の場合は問題に書き込む形で、問題を理解するほうが、性にあっていましたが、PCやスマホで勉強することも可能だと思います。印刷される場合は、同じ問題を2部ずつ刷ることをおすすめします。一つは書き込んで問題を理解するノート用途、もう一つは何も記入せず過去問を繰り返し解く用途として活用するとよいでしょう。書き込みされた情報がヒントになって、答えられる場合があるからです。理想状態は、問題を見ただけで、解答がすぐに想起される状態。ややもすると条件反射のように答えられるようになると、試験の際の精神的な負担も小さくなるでしょう。
なお、毎年試験には新問も出題されます。それらは応用のストラテジ系の過去問を除けば、普段からのIT・経営に関する情報収集がものを言う世界になり、勉強時間の投資に対する回答率が悪くなると考えられます。試験自体は60%程度取れれば合格圏内に入りますから、午前2に対する過度な対策は本末転倒になる可能性出てくるように思います。
私の場合は、捨てるか、2択に絞れるくらいにまで直感力を鍛えておこうくらいに考えていました。試験直前になれば、なるほどもっと広く勉強すべきではないかと心配になるのはよく理解できますが、合格に直結する勉強以外はしてはいけないが、試験の鉄則です。そして殊、ITストラテジスト試験の勉強に関してはすべて過去問がベースにとらえたほうが効率がよい。独特の試験形式、問い方は、現実の事象や現場で使っている言葉から、キャッチアップするには、あまりに抽象的、かつ変則的すぎます。
個人的な見解を述べると、過去問を解きながら、問われ方の感覚を養ったほうが結果として新問の解答率は高くなるのではないかとすら思っています。
3. 午後1:全過去問の印刷→繰り返し解く
いわゆる「国語」の試験と言われる、午後1は記述式。国語とやや揶揄されているようにも言われるのにも、それなりの理由があります。文中にヒントとなる文言が必ずあって、その文言を使わないと減点対象となる可能性があると考えられているからです。
その際、問題を解きながら意識していたのは、出題者の意図。勉強する際は、出題者は答えてほしい、使ってほしい言葉が必ずあると考えながらノートに答えを書いて、解答と見比べます。合っていなければ、意図に応えられなかったということで、日をおいて解き直しです。上記の午前2と同じように、同じ試験問題を2部、印刷して1部は線を引っ張ったり、パラグラフごとで○を囲って、どういう位置づけの文章なのかを把握したり、知らない言葉の意味を書き込んだりする理解用として用いて、もう1部は繰り返し過去問を解くためのもの用。ひたすら出題者の意図を理解しようと努めました。
なぜこのような勉強方法をとったのか。それはIPAの採点講評には殆どと言っていいほど、「理解してほしい」という記載があるからです。
「筆者の意図を理解し答えよ」、なんだか文系がテストにおいて理系に唯一マウントが取れる問いの出され方ですが、システム系の知識は必要で、システム、経営に関する専門用語は随所に出てきます。午前1、午前2をある程度勉強し知識を身に着けつつできる限り早く解き始めて、試験形式に慣れるのがよいでしょう。
私の場合、試験の約3ヶ月前から過去問を説きました。平成21年度から、前年まで全てすべての過去問を繰り返し解くのが理想ですが、すべてを解くのはかなり大変だと感じました。例年、全3問のうち、最後の問題は「組み込み系」の問題です。Web上がりの私にとって門外漢でしたので、ほとんど解いていません。2問で100%を目指す勉強を採用しました。それで十分だと感じています。
問題の中には、文意を理解できず、意図を汲み取るのにも苦労する問もありました。その際は、適宜参考書を利用します。
私が参考にしたのはこれです。全部読むのは、効率が良くないと考え、わからない問題があったら読む程度にとどめてました。局所的な理解において非常に助かったと思っています。間違っても教本を通読してから過去問をやろうという発想は捨てたほうが良いと考えていました。まずは、過去問を解くこと、形式に慣れること、自分の理解の現在地を把握することに注力しました。
4. 午後2(1):「ITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集」の事例を模写する
ITストラテジストで検索をかけると、合否を分ける一番の難関として、位置する午後2とブログや記事の随所に書かれています。しかし私はそのように考えていません。午後1と同様、出題者の意図を理解し、時間内に意図に沿った文字数を論理的に書けば十分に合格圏内に入ることができると考えています。
むしろ難関なのは、試験形式よりも、午後2の勉強のとっつきづらさです。どうやって勉強すればいいのかわからぬまま、試験直前になって慌てて、自分の経験を掘り下げて、文章を書こうとすると合格はかなり厳しくなるでしょう。
では、どのように勉強したか。私はとっつきづらさを分解し、ステップを3つに分け勉強を進めることにしました。
1. お手本をまねる(模写する)
2. お手本の文章をベースに自分なりの経験にアレンジする
3. 自分の事例を用意する
これは何をベースにしているかというと、武芸における「守破離(しゅはり)」の概念です。ここでも文系のお家芸というべき文化的な言葉を引っ張ってきて、文系が理系に対してドヤ顔するところですね。もっとも、このようにおのずと収斂しただけであって、当時はここまで勉強法を整理できていたわけではありません、あとから思い返したらこうなっていただけであって、試験勉強中は勉強法を分類できるほど余裕も意味もありません。とにかくとっつきづらいものは、ベイビーステップにして早く取り組むのに越したことはないと考えました。模写であれば、何も考えずに手を動かすだけでも勉強をすすめることができます。とにかく形式に慣れること、これのみに注力しました。
この本は、おすすめです。何本か模写してみると、肌感覚で問題の形式、文章の書き始め、文の構成の仕方、どのレベルまで抽象的に書いていいのか、またどのレベルまで具体的に書くべきなのか、時間内に書くにはどのくらいのスピードで書けばいいのか、どの程度の知識レベルが求められているのかなどの誰も教えてくれない(教えられない)細かなレベルまでわかるようになります。36本とたくさんサンプルがありますが、自分に合いそうなものを3~4本も模写すれば、十分わかるようになります。あとは勉強に飽きたときにでも流し読み程度しました。
ただこの本は分量があるので持ち運びには苦労しました。私はどうせ売る気もなかったですし、カフェや会社で勉強したかったので、背表紙を切って、バラバラにしました。そして論文ごとにホチキスで止めて、どこでも模写・黙読できるようにしてとにかく接触回数を増やしました。
模写もやっていくうちに、だんだんと自分の経験や想像と比較ができるようになります。守破離の「破」の段階です。私も似たようなことをやったことがある、とか、私のときはこうした、とか過去の経験がなければ、私だったらこうするなどの想像が働くようになります。そういう体験を何度かしていくうちに、自分なりの文章を組み立てられるようになってきました。そして過去の経験と想像の狭間(はざま)の中で、少しずつ自分なりの事例というものが朧気ながら見えてくるようになりました。
自分なりの事例を用意するのには理由があります。当日の試験は当然過去問とは別の問題(または問い方が異なる)として出題されます。他者の事例は所詮応用が効きません。自分なりの事例を用意するということは、その問題に合わせた柔軟性を持ち合わせたものであることを意味します。出題者の意図に沿った解答をすること。ITストラテジスト試験では、常にこのことを念頭に置く必要があります。
5. 午後2(2):事例を用意する
最後、自分なりの事例を用意する段階です(守破離の離)。過去の経験でできる限り汎用的な事例を考えテーマを作ります。私の場合、会議室のシステム開発に携わったことがあるのでそれをベースに考えました。数パターンあるのが理想ですが、ない場合は自分が携わったことがなくてもできる限り想像が膨らませやすい事例から作ってみます。そして、過去問をベースに、時間の許す限り、自分のテーマで論文を書いていきます。
その際、時間の関係上(やる気も含めて)私の場合、2本程度のみ全文書きました。あとは、パラグラフごとのまとめたセンテンスを書くようにして、論理展開だけ練習するようにします。文章はいくらでもふくらませることができるので、全体の文意を逸らさずに、わかりやすく書く。その際、気をつけるのは2つ。一つは繰り返し伝えていますが、出題の意図です。もう一つは「あなたはITストラテジストである」ということです。それらから逸れる文章は無用どころか減点対象と考えたほうが合理的です。
おまけ
ずっと勉強していると、疲れるので、こういう本も読んでいました。とにかくシステム開発の経験がない私にとって午後2の事例を用意するというのは、大変な作業でした。システム開発全体の流れを理解するという意味で役に立ちました。なによりも面白い。文系はこういうのを読むのを億劫がらずに読めるのも、有利ですね。
16巻セット
最後に
いかようにも書き直せる論理展開ができるテーマが数個用意して、私が臨んだITストラテジスト試験では、合格しました。勉強法は多種多様に分かれるべきですし、決まった方法があるとも考えていませんが、ひとつのサンプルとして、書くことは意味があるように思えました。
私が勉強した際、検索で出てくるITストラテジストに関する情報はあまりに、内容が乏しく文系の私にとって、独学での突破は高い壁のように感じました。試験勉強は基本孤独との戦いです。勉強のルートが一つでもあれば、多少楽になったのになという当時の気持ちを思い出して書きました。
もしこれからITストラテジスト試験を受けられる方でなにか相談があればお気軽にコメントください。応援しています。
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