見出し画像

FIREにも種類があるって本当?自分にあった将来設計を目指そう

近年、ミレニアル世代からZ世代(1981年以降に生まれた生産労働者)を中心に、自由度の高い生き方や働き方を求める声が高まっています。

そんな流れの中、「FIRE」という生き方が話題となっています。「FIRE」とは「Financial Independence, Retire Early」の略で、「経済的自立に到達して、早期退職を実現するライフスタイル」を指します。最近、SNSなどでよく目にする言葉ですね。

以前の記事でも紹介しましたが、FIREと一口でいっても実はさまざまな達成の仕方があり、フリーランスやパラレルワーク同様、多種多様な選択肢があることをご存じでしょうか。

今回はFIREの種類やその内容に焦点を当て、実際にどのような働き方や暮らし方をしているのかを掘り下げてみます。

以前のFIREに関する記事はこちらです。あわせてお読みいただくとさらに理解が深まるので、ぜひご一読ください。

FIREの種類

FIREにはいくつか種類があります。FIRE後に働くか働かないか、FIRE後の生活費をどのように使うか、どれだけ早くFIREするかなど、さまざまな切り口で分類されています。

FIRE後に働くか働かないか

まずはFIRE後に働くか働かないか、という切り口によって分類されるFIREを確認しておきましょう。

「働く」FIRE:Full FIRE(フル・ファイア)

「Full FIRE(フル・ファイア)」は早期退職を達成した後に、「働かない」FIREを指します。フルタイムで働かないだけではなく、パートやバイトといった就労を一切行わないというライフスタイルのことです。

生活の選択肢が無限にある一方、早期退職する前に余裕のある資金を準備するのはもちろん、年金収入と投資資産からの収益に限定されるので、それなりの元本が必要になるため、FIRE達成が遅くなる可能性があります。

「Full FIRE」には2種類あり、「Fat FIRE(ファット・ファイア)」と、「Lean FIRE(リーン・ファイア)」に分けられます。この2つについては次の項で説明します。

「働かない」FIRE:Side FIRE(サイド・ファイア)

「Side FIRE(サイド・ファイア)」は、FIRE達成後も副業などを行い、働くことを続けることで資産の取り崩しを防ぎ収入を補填するFIREです。

「Full FIRE」と比較すれば、働くことでの制約はある程度残ることになりますが、ある程度の収入が得られることで、早期退職までに準備する元本はより少なくて済むことになります。

欧米では「Side FIRE」という表現が使われることはあまりなく、「Side FIRE」にあたるFIREとして「Barista FIRE(バリスタ・ファイア)」「Coast FIRE(コースト・ファイア)」の2つがあります。こちらも後ほど解説します。

FIRE後にどのように生活費を使うか

FIREを達成した後の生活費の使い方で分類すると、FIREは「Lean FIRE」「Barista FIRE」「Fat FIRE」の3つに分けられます。それぞれの違いを見ていきましょう。

「節約する」FIRE:Lean FIRE(リーン・ファイア)

「Lean FIRE(リーン・ファイア)」とは、節約を常に心がけることで、そもそもの支出を可能な限り減らした状態で早期退職する生き方のことです。ミニマリストやシンプリストというような言葉で表現される価値観を持っている方に当てはまるのではないでしょうか。

「Lean FIRE」の場合、FIREに必要な資産額も低くなります。達成までのハードルが低くなるので早く早期退職したい人向けのFIREです。

しかし、経済的自由はあまりないため、もともと節約や質素な生活に違和感のない方向けかもしれません。お金の本質が「自由」であることを認識したうえで、豊かさよりも自由な生き方に焦点を当てたい、という希望が強い方向けだと言えます。

例えば、物価の安い国外に居住を構えたり、自給自足の生活をしてみるといったように、生活をよりシンプルで自由度を高くアレンジしていくことができるようになるかもしれませんね。

「所得を得る」FIRE:Barista FIRE(バリスタ・ファイア)

「Barista FIRE(バリスタ・ファイア)」は、働き続けることで得られる労働所得と働かずに得られる不労所得で年間支出をまかなえる状態で早期退職するFIREを指します。

日本で言う「Side FIRE」とほぼ同じ意味ですが、この言葉が生まれたアメリカでの「Barista FIRE」の真の目的は、社会保険に加入することなのだとか。日本のような保険制度がないアメリカでは、あえて労働を行うことで健康保険に加入して医療費の軽減をはかることが必要となるようです。

余談ですが、この名前はカフェのバリスタが由来となっているようです。日本ではコーヒーのプロという印象が強い「バリスタ」という言葉は、イタリアではもともと「バーで働く人」という意味の言葉です。ある程度の生活費をバーで働きながら生活していく、というイメージでしょうか。

「準備金を十分に用意する」FIRE:Fat FIRE(ファット・ファイア)

「Fat FIRE(ファット・ファイア)」とは、生活していくうえで必要な支出だけでなく、+αの資金、例えば趣味や娯楽のために使うお金までもカバーした状態で早期退職することを指します。他のFIREと比べて「早期退職後の生活を豊かにする」ことに重きを置いているのが大きな特徴です。

最低限の生活費が不労所得でまかなえるだけで、生活における幸福度は格段に上がりますが、趣味や娯楽のために使うお金も用意されているなら、リタイア後の生活の充実度も格段にアップしますね。

しかし、そのためにはより多くの準備金が必要です。誰もが憧れる理想的なFIREではありますが、このFIREを実現しているのは事業などで成功を収めていたり、元々経済的に不自由のない生活を送っている方が多いようです。
そういった意味では、大富豪でない限り達成するのに最も難易度が高く時間もかかるFIREだと言えます。

どれだけ早くFIREするか

FIREのタイミングによって分類される2種類のFIREがあります。「Fast FIRE」「Slow FIRE」です。こちらも違いをしっかり確認しておきましょう。

「早くリタイアを目指す」FIRE:Fast FIRE(ファスト・ファイア)

「Fast FIRE(ファスト・ファイア:Fast FIとも言う)」とは、支出を最小限に抑えて収入を最大限に増やし、できるだけ多くのお金を投資に回す生き方のことです。貯蓄率と投資の最大化に焦点をあてていることで、FIRE達成のための効率を重視した方法とも言えるでしょう。

達成までは節制と我慢の生活が続くと予想されますが、できるだけ早い段階でリタイアできる可能性が高いかもしれません。

しかし、FIREの本来の目的は「人生の価値を広げ、自由で豊かに生きる」ことです。達成までの道のりが険しすぎると、その段階での幸福度が下がってしまったり、最悪の場合挫折するリスクがあることには気を付けましょう。

「ゆっくり達成を目指す」FIRE:Slow FIRE(スロウ・ファイア)

「Slow FIRE(スロウ・ファイア:Slow FIとも言う)」とは「Fast FIRE」と正反対。ゆっくりと理想的な生活を目指していくFIREのことです。

自分の幸福度や充実感を最優先にするため、達成までのスピードは決して速くはないかもしれませんが、無理せず達成することができますし、ゆっくり目指すので、途中で方向転換することも可能です。

FIREらしくないFIRE

最後に少し変わり種のFIREを。「Coast FIRE」はFIREらしくないFIREです。なぜなら早期リタイアを目指さないからです。

「老後の不安をなくす」FIRE:Coast FIRE(コースト・ファイア)

「Coast FIRE(コースト・ファイア)」は早期リタイアをめざすのではなく、退職後の生活をまかなうのに十分な資産を貯めるFIREです。ポイントは老後の安定した生活に重きを置いているところです。

「Coast FIRE」における退職は必ずしも早期退職を意味せず、定年退職を含みます。そのため、通常の労働と変わりないように見えますが、先に老後の不安をなくすことで、自然と「今を豊かに生きる」という考え方になるのだとか。

日本では自分の貯蓄や退職金、確定拠出年金などを最大限運用して国の年金制度に頼ることで、老後の不安はある程度クリアできると言われています。そのため、あえて「Coast FIRE」を目指す、というタイプの人は少ないようです。

そもそも、通常通りの労働を続ける「Coast FIRE」は「FIREを達成した」という感覚はほとんどないかもしれません。資産的に早期退職の条件をクリアしていても、仕事にやりがいや充足感を持っている方は自動的にこの FIREに位置づけられるかもしれませんね。

FIREのメリット・デメリット

元々はアメリカで生まれた概念のため、日本人のスタイルには合わないものもあったかもしれませんが、前項で解説した通り、FIREにはさまざまな生活スタイル・資産状況・将来設計に合わせた方法があります。
この項ではFIREを達成することで期待できるメリットと、目指すうえでのデメリットについて解説します。

メリット

FIREを達成することで期待できるメリットとして下記のようなものが挙げられます。

・自由を得ることができる

国内居住に留まらず、海外移住も含めて「住む場所」に関する自由を手にできるのがFIRE達成の大きなメリットと言えるでしょう。

また、被雇用者としての制限や枠組みから解放されるため、自分の好きな生活スタイルを目指すことができ、自分自身の時間を満喫するのもFIREで得られる「自由」と言えます。

・やりがいのあるライフワークに注力できる

収入にこだわらず、本当にやりがいを感じられる「ライフワーク」に専念できるようになるのもFIRE達成のメリットの一つです。

・さまざまな知見を獲得できる

FIRE達成のために貯蓄や資産運用に関するノウハウを学ぶことで、世界情勢や経済状況、社会保障制度といった仕組みに関する知見を獲得することができます。これらの知識や経験が、さらに大きな利益をもたらすかもしれません。

デメリット

FIREを目指すうえでのデメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。

・予定外のことが起きた際に対応できない可能性も

自分の経済状況や社会情勢を冷静に分析しておくことがFIRE達成には必要ですが、それでも予定外のことが起きる可能性はゼロではありません。早期退職後に経済的な行き詰まりが起こるリスクがあるのがデメリットの一つでしょう。

また、FIRE達成後にライフプランを即時変更することは難しいため、家族が増えたり、病気、介護といったイベントが発生したりした際に、対応しきれないこともあるかもしれません。

・今の生活への充足感が減る可能性

単純に収入を増やすだけでは必要資金はなかなか貯まりません。どのFIREを目指すかにもよりますが、多くの場合は節約・倹約生活が必要ですし、FIRE達成後も節制生活を継続することになるかもしれません。

支出を削ったり節約したりすることに熱中しすぎると、自分自身への自己投資や生活への充足感が減ってしまったり、不十分になる可能性があります。

・「会社員」でなくなるために起きるリスク

早期リタイアをするということは、「会社員」でなくなるということです。
早期退職することで退職金が減額されてしまうことや、厚生年金の加入期間が短縮されるため年金支給額に影響が出ること、それによる資金的なゆとりがなくなる可能性も考慮しておかなければいけません。

当たり前ですが「会社員」としての社会的ステータスを失うこととなりますし、新たにクレジットカード作成や住宅ローン審査などを行う際に、与信が通らなくなるケースも。

まとめ

一言で「FIRE」と言っても多くのスタイルがあります。早期後の生活の豊かさに重きを置くのか、早く達成するのか、労働を続けるのか・・・さまざまな条件をあてはめて考えてみると、自分に最適な「FIRE」が見つけられるかもしれません。

FIREは自分の自由で豊かな生き方のために、今までの生活を続けつつ目指す方法なので、途中でやり方を変えることも可能です。最初に目指したFIREが「自分にはあっていないかも?」と思うことがあっても、それまでに得られた貯蓄、資産形成やそれに伴う情報を得たことなどは、すべて自分の知識であり経験であり、財産になります。

一度しかない人生をより豊かに生きるなら、選択肢の一つとして「FIRE」という生き方を改めて考えてみてはいかがでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?