ヒガンバナが咲いた

瀬戸に、ヒガンバナが咲いた。

ヒガンバナとは、曼珠沙華のことではない。

菊のような多弁の紫色の小さな花だ。

いま住んでいる地方では、ヒガンバナというと、この花を指す。

正式名称は、なんとか菊、になるのだろうと思う。

たくさんの花が咲く山里。

山里のお墓には、いつも、山里に咲く花が飾られている。

泥だらけの、無愛想な男が、墓に花を供えるのだ。

山里は、花だけが美しいのではない。

花を備える人々の心根もまた、美しい。

曼珠沙華ではなく、紫色の菊を「ヒガンバナ」と呼ぶ山里。

ここは日本ではない。

日本政府が日本と呼ぶ島の中にある、別の国だ。

日本と呼ばれる地域のあちらこちらに、たくさんの別の国がある。

その国のことを山里と呼ぶのだ。

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