いろづく山里
最高の青空。
きらきらと輝く虹色の陽光。
雪国の強い樹々たちの葉もようやく色づき始めた。
真っ先に目に飛び込んでくるのは桜。
いろんな色が混じった深い深い赤。
深紅の赤。
虹色の陽光を浴びて、紅玉の色に輝く桜の葉。
この地上で、最も美しい赤は、桜の紅葉の赤だ。
見上げると、どこまでも青い空の背景に、際立つ黄。
名前を忘れてしまったが、栗に似た葉が、虹色の陽光を浴びて、まっすぐな単一のスペクトルの黄色に輝いている。
首を振ると、ヤマモミジの小さな楓の葉が、虹色の陽光を反射して、眩しい赤に輝いている。
その赤から、黄色、そして緑へと、虹色のグラデーションを描いている。
遠くの、と言っても、ほんの数キロメートル離れた1,500メートル級の山々は、夕側に少し傾いた虹色の陽光を浴びて、赤い光を放っている。
秋の、秋から冬に至る、雪が降る前に、雪が降って、真っ白に染まる前に、ほんのひととき見せる虹色の光の舞、舞、舞。
しかし、今日は、どういうわけか、そんな光景を楽しむことができなかった。
昨年までは、はしゃぎまわって、カメラを持って、シャッターを押しまくっていた。
今年は、喜べない。
無理に喜ぼうとしていることに気づく有様。
去年と今年とでは、何かが違う。
何かが。
何かが。
あと2〜3日で、近くの神社の銀杏が黄色く染まり、神社の楓も赤く染まるだろう。
目を閉じると、家の北側に立っていた大きな銀杏のことを思い出す。
葉っぱの掃除がたいへんだ、と言って、数年前に切ってしまった。
子供の頃は、その銀杏の葉っぱで焚き火をして、芋を焼いた、その木。
思うに、銀杏のスペースには、家を建ててはいけない。
あとから来た僕たちが、先に立っていた銀杏を切ってしまってはいけない。
ひろいところに大きな銀杏が立っている。
僕が、広い土地を買ったら、そんなふうにできるといいと思う。
固定資産税なんて払わないぞ。
ゴミも、タバコの吸い殻も、捨てさせないぞ。
なんか、そんなことを思ったりしていた。
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