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映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』

映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』を鑑賞。
(相原裕美監督作品)

加藤和彦をテーマに映画を撮るきっかけになったのは、盟友・高橋幸宏のコメントがきっかけとなったという。

「トノバン(加藤和彦の愛称)って、もう少し評価されても良いのじゃないかな?今だったら、僕も話すことが出来るけど」

本作では高橋幸宏をはじめ、きたやまおさむ、松山猛、朝妻一郎、つのだ⭐︎ひろ、高中正義、小原礼、今井裕、新田和長、クリス・トーマス、牧村憲一など、加藤和彦と縁の深い人物たちがインタビューに応じている。

つのだ⭐︎ひろのインタビューは、思いのほか沁みたなあ。トノバンはつのひろのようなキャラクターと交友が続けば、もう少し自分を追い詰めなかったのかも、と思わせる。
新田和長(活動初期のディレクター。後に独立しファンハウスを経営)や牧村憲一(中期のマネージメント事務所社長。後にフリッパーズギターをプロデュースするなど多彩に活躍)など裏方の証言は貴重だし、興味深い。

特に、クリス・トーマスのインタビューにはビックリ‼️
トノバンからミカ夫人を奪ったクリスがどんなことを言うのかと思いきや、自分の中では既に消化してる模様。事実のみ淡々と語っていた。トノバンの才能をお世辞抜きに評価してますしね。

なにより、フォークル時代からの盟友・きたやまおさむのコメントには、目頭が熱くなった。
トノバンのような人物には、今までも会ったことがないという。それだけ規格外の才能だったのだろう。
すべてに一流好み。それが芸術的審美眼として創作に役立った一方、晩年経済的に困難を招いた原因となった事実は否めない。
(安井かずみとの出会いと別離が、一流好みに拍車をかけたと想像)
精神科医であるきたやまさんをもってして、トノバンの自死という事実を受け止めるのは、大変なことだったのだろうし、今でも受け止めきれない部分はあるに違いない。
でも、加藤和彦の自死を受け止めるニュアンスの発言もあり、僕も深く頷いた。
この映画は、きたやまさんのインタビューを聞くことが出来ただけで、多大な価値があった。

現在の音楽ジャーナリズムやファンの思いとして、あまりにも「はっぴいえんど中心史観」が強すぎるように感じる。
「はっぴいえんど中心史観」とは、日本のロックは、はっぴいえんどやティンパンアレー、大滝詠一、シュガーベイブらがイノベートしたという考え方のことである。
僕もはっぴいえんどらが偉大であることに異論はないが、旧GSの流れを汲むミュージシャンや、ジャックス、フォーククルセダーズを黙殺すべきでない。
むしろ、1970年前後は、はっぴいえんどよりジャックスやフォークルの方がプロフェッショナルだったと感じるぐらいである。

日本のロックをイノベートしたにも関わらず、過小評価され続けてきた加藤和彦。
本作が、加藤和彦の正当な再評価につながることを、願ってやまない。

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