読書記憶19「狂王の庭」

タイトルからして面白そうなこちら!

あらすじ

「この庭をあなたに捧げる――。」 
昭和27年、東京都下国分寺。
広大な敷地に、全財産を投じてルートヴィヒ二世さながら華麗でシュールな西洋庭園を造った異端児・青爾。
妹の婚約者である彼に引きつけられる美しい人妻・杳子。
没落する華族社会を背景に、虚無と孤独と耽美の極地で、激しく求め合う男と女を描ききった、世紀の恋愛巨編。


狂気の愛(ネタバレ)

最近恋愛小説がけっこう好きです。
男と女(とは限りませんが)の間にあるものは、
なんと狂気があって、面白いものかと!
だいたい、日常に生きてたらそうそう狂うような恋なんてしない訳で。
小説の中にしかないその狂気に夢を感じてしまいます。

「狂王の庭」の青爾もまさに、狂気。
青爾が愛していたのは、杳子なのか、庭なのか…
青爾にとって庭が、人生そのものというか、あの狭い世界に彼の全てがあったのではないかと。

あと、青爾の最期ですが、
もしかして、
あの帽子を追いかけて落ちたのでは?
そこに杳子の幻影を見たのでは?
幻影とともに微笑んで落ちたのでは?
と、思ったのですが、井戸の前に靴があったとの記述があった気がしましたのでやはり自殺なのでしょうね。

狂った果ての狂気の死ではなく、最後の瞬間だけでも幸せな幻影を見られていたらいいのに…と思ったのでした。
しかし、狂っていた方がいっそ幸せだったかもしらん。
狂えなかった、残された杳子は全てを抱えて寂しく微笑みながら生きていたんだなと。

秋の夜長にピッタリな、哀しくも寂しい気持ちになる一冊でした。

ponta

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