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Play it by ear〜臨機応変がラクになる考え方

「Play it by ear」
直訳すると、耳で聞いて動く(演ずる、弾く、遊ぶ、振る舞うetc)
即興することです。「臨機応変」と訳されることが多いと思います。
ただ、ニュアンスが少し違うので、私は「Play it by ear」の方がちょっぴり前向きで開けた印象があって好きです。

一応、正しい意味はこちら。
Cambridge Dictionaryによれば、
to decide how to deal with a situation as it develops, rather than acting according to plans made earlier: We can't make a decision yet. Let's just play it by ear.
(ある状況において、事前に立てた計画通りに行動するのではなく、進捗に合わせて状況の対応を決定をしていく:例文 まだ決定できないので、臨機応変にやりましょう)

私はこれまでPTAやら、個人的に一緒に仕事したいと言われるなどして、同年代の女性と作業をすることが多かったのですが、「臨機応変で」と言う言葉に苦手意識を持つ人が多かったです。「臨機応変にやりましょう」と言うと、結果として「何もしなかった」と言う人もいました。
以前、企業の海外駐在員向け英語研修のアシスタントをしていた時も、日本人の生徒たちは、即興や臨機応変が苦手な人が多かったです。
多分「臨機応変」が苦手な人は、「周りの空気を読む」「相手の様子や状況に合わせる」ことだけに集中して、場に飲み込まれてしまうのだと思います。
相手や状況ばかりに目を向けていると、「自分の外側だけに」気持ちが向いてしまう。そうなると、無駄に肩に力が入って、周囲に振り回されて自分を見失い、身動きが取れなくなるのかもしれません。

でも、臨機応変とは、自分の内側から溢れるものを周りの流れにのせて表現することだと思います。状況に合わせて、できることを見極めて実現する。そのためには、キャッチした情報だけでなく、それに対しての自分の反応を把握できないといけない。だから、「自分の内側」にしっかり目を向けておかないといけないと思うのです。

その感覚をわかりやすく表すのが「Play it by ear」だと思います。自分の耳で聞いた旋律に合わせて、感じるままに反応し、自分自身を奏でる。行動の軸が「自分の内側」に置かれていることをイメージしやすい気がします。
そして、どんな時も周りの状況を五感でキャッチして、素直に自分を融合していけばいいと思わせてくれるのです。
それは難しいことではなくて、すでに私たちが皆、毎日の生活の中で、当たり前にやっていることです。今日の気分を感じて、今日の行動を決めるように、日々の生活は、誰しもが臨機応変に生きています。
仕事の時も同じように、自分で考えて、自分が主体的に動けばいい。

もしかすると、その違いは「Play」と言う単語に能動性を感じるけれど、「臨機応変」という言葉は受け身に感じやすいのかもしれません。
娘が、大学で英語学科で言語学を学んだのですが、英語は、自分が主体になる表現が多いけれど、日本語は、自分と周りとを同化させる傾向にあるようなことを教えてくれました。
文化、習慣、宗教の違いもありますし、国境が地続きにある国と海に守られた島国では、歴史的な背景として、領土や身を守るために必要なことも違ったでしょう。また、能動的な狩猟民族、受動的な農耕民族の違いなどがあるのではないかと思います。

私は帰国子女なのですが、英語で話す時、体の重心を中心に移動させて体幹を太くする感覚があります。気持ち、心身がどっしりして体のスイッチが入らないと、全然単語が出てこないのです。これは、遅ればせながら、50歳を過ぎて気が付きました。
逆に、日本語で日本人と話す時は、少し「自分」の主軸部分の輪郭をぼやかす感覚があります。必死にどちらの社会にも溶け込むために身につけた処世術です。

別に、英語の表現がいいと言っているわけではありません。ただ、現代の日本社会は、比較的、あまりにも自分の軸があやふやな人が多く、それがストレスにつながっている気がします。日本の和の心を大切にするためにも、己を知り、主体性を持つことは大事だと思います。

「臨機応変」とは、その場で、自分のできること発揮する瞬間を見つけるために状況を把握することであって、人に気に入られることではない。そして、自分を最大限に活かせれば、結果として、それは人の役に立つからそれでいい。
そう思っておけば、それほど身構えないのではないかと思います。

五感を研ぎ澄ませて、自分が何を感じ、考えているか、自分の軸を大事にすることで、表現力すべき内なるものをうまく発散できるようになれると思います。
すると、心も体もラクになるし、人生が楽しくなります。

耳を澄ませて、「何を感じる?」「どうしたい?」と自分に確認してみる。
そんな風に「今」を意識してみると、視界が開けて新鮮な気持ちになって、新しい世界が垣間見られる時があります。ブレイクスルーのような感覚。

私も、感覚が鈍くなったり、臨機応変が苦手な場面もあったりします。そんな時は「Play it by ear」って自分に言うと、耳の横をそよ風が抜ける感じがして、肩の力が抜けます。