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バッドエンドへは向かわない

人生の話をしたい。


この前、友人との会話の中でこんな感じのことを言われた。

「クレマチスはたまに変なルートに向かうけど、早い段階で方向転換して深みにハマらないよね」

その言葉にハッとした。確かにその通り…。


人生の中で、いくつか選んではいけない道があった。

例えば、ニート・ひきこもり向けの居場所から卒業することが頭になかった時。仲間たちと遊び呆けて、働いたり勉強したりすることをせずただ歳を重ねて、気づいた時には何歳になっていたことか。

例えば、無職時代に元彼に結婚しようと言われた時。その道を選んでいたら、無職であることを見下され、精神的にも経済的にも苦しい人生を送っていただろう。

例えば、働き始めて過度な自信を抱き人を馬鹿にしていた時。そのままの状態でいたら、仲間たちから敬遠され人間関係は失われ、働けてはいてもひとりぼっちになっていただろう。

このほかにもいろいろと思いつく部分はあったが、結果として現状、私は割と幸せに過ごせている。
それはどうしてだろう、と考えてみる。


10代から20代前半の頃、私はとても苦しかった。
学校にも行けず、何ヶ月も寝込む時期が続き、世間もクラスメイトも怖くて怖くて、勉強なんてとてもできない。
何度も何度も死にたいと思ったし、電車をホームで待つたびにいつも飛び込みたい気持ちにかられていた(いつもぎゅっと目を瞑っていた)。
少しだけ働いても緊張で汗が出る、抗不安薬で仕事中に寝てしまう、職場の人が怖い、毎日どんな業務をするのかが怖い。

だけど、10年近く前、ようやく私は双極性障害だと診断された。これまでの人生の苦しみの原因として納得できたし、それならそれを解決すればこの苦しみから楽になれるのではないか、という救いを見つけることができた。

私は自分が双極性障害だと診断された時点で、使えるものはなんでも使おうと決めていた。
実際、いろいろな支援を利用している。ざっと上げると自立支援医療、障害者手帳、就労支援センター、障害年金、就労移行支援、障害者雇用、定着支援、就職困難者の失業手当、ショートステイ、生活支援センター、カウンセリング、などなど。
また、同じように精神疾患や生きづらさを抱えた人たちのコミュニティ(ネット・リアル)に参加するようになった。

利用できる支援を利用し、助けてもらえる先をなるべく増やす。悪いルートを足を踏み込んでしまっても、他に選択肢があるからそれだけにすがることなく、それ以上進まずに済む。
なにかに失敗してもセーフティネットがあるから、リカバリーできる。そうやって生きていくことができたから、今の私があるんだろうなと思う。

それから、自分の力量以上のことをしなかったのも良かったんだろう。
今できないことは一旦諦めて、まずは現状の自分でもできそうなことから始め、支援を受けながら少しずつ積み上げていって、結果ここまで辿り着けた。

仕事ができない→ならまずはデイケアで体力をつける→就労移行支援で少しずつ通う体力をつける→プログラムに参加して学ぶ→クラスメイトたちと一緒に履歴書を書いたり面接の練習をして合同面接会に行く→就労移行のスタッフの人についてきてもらってハローワークに行く→慣れてきたら1人でハローワークに行く→いい求人があったらスタッフと一緒に履歴書を練って面接練習をする→面接を受ける

書いてみると本当に遅々たる歩みだ、微々たる歩みだ。どれだけ工程と時間がかかっているんだ、と今更ながら思う。
それでも今、私は働けているし、支援を受けつつも独立して生活できている。
どんなに時間がかかっても、私にとっては理想的なルートだったのだ。

私にはいきなりジャンプはできなかった。ホップを繰り返して少しだけステップができるようになり、そのおかげでここまで辿り着いた。
今まで支えてくれた人と、サポートしてくれた制度に感謝を気持ちは忘れないようにしたい。何か一つ欠けていれば、きっと今の状況には至れなかったと思うので。

これからの人生もまたいろんな落とし穴があるだろうし、片足が落ちてしまうこともあるかもしれない。だが、すっぽり落ちて出られない状態にならないよう、自助努力と社会的・私的な支援でセーフティネットと頼りの綱を作っておきたい。
私は苦しい人生から助かりたかった、生き残りたかった。その一心で生きていたら、こんなに生きやすくなった。それは本当に幸せなことだ。

人生はコンテンツだ。どんな生き方であれ、オンリーワンなので。それならハッピーな方がいい。
いつ死ぬのかわからないが、それまでなるべく悔いを残さない生き方がしたい。メメント・モリ。

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