セブ島 語学留学 Day15

結局、朝帰りなオレとテツさん。今日、帰国するテツさんは”10時の迎えのバスに遅れるわけに行かないから”と、急いで自室に戻って行った。

オレは、カフェテリアの堅いプラスティックのイスに座り、乾いた喉をミネラル・ウォーターで潤(うるお)しながら、昨日の夕方から今朝までのことを回想していた・・・

オレたちは、日もドップリ暮れた暗闇のサウスバスターミナルからタクシーに乗り”ガイサノ・グランドモール”へと向かった。この場所は、マクタン・セブ国際空港にほど近い場所にあるモールなのだが・・
”美味しいフィリピン料理が食べたいよー!”
今日で学校を卒業する何人かのバッチメイトのリクエストで夕食はフィリピン料理となった。店の名前は覚えていないけど、明るい感じの雰囲気の良い店だった。
メニューに載っていた料理はどれも、とびっきり美味しそうだった。
どれもこれも食べてみたかったけど、店員さんにお勧めを聞いて適当に注文することにした。
結構な人数で ”食べてみたい” と思うものを注文したので料理がテーブルに並んだ時は、さすがに頼み過ぎたかな!?って思った。
それでも、全員が、今日一日を楽しく遊んで、おなかペコぺこに減らしていたので、料理がなくなっていくスピードも早かった。何を食べたのかは思い出せないけど、何を食べても美味しかったのだけは覚えている。
残った料理はTake Outして持ち帰ることにした。

ここからまたタクシーを捕まえ、何台かに分かれて学校のあるTalamban(タランバン)方面へと帰ることになるはずだったのだが・・今日で卒業し明日、帰国するテツさんに
”また、ビキニ・バーに行きたいから付き合ってよ!”って頼まれて、オレたちは、みんなとは反対方向のCebu City(セブシティー)にタクシーを走らせてもらうことになった。いつもオレの左腕に巻きついて、ちょっとづれた時間を知らせてくれる年季の入ったGショックのデジタルが23:35を表示していた。ヒョエー!もうこんな時間かよぉ
一日中外遊びをして身体は疲れているはずなのに、頭だけは妙に冴えていた。

この日の為にテツさんが事前に調べてきたという店が ”アリーナ” だった。
タクシーの運転手さんに行き先を告げて、走り出すこと10分ぐらい・・目的地の”アリーナ”に着いた。入り口の電飾がギラギラと眩(まぶ)しいくらいに輝きを放っていた。以前、連れて行ってもらった ”フェラーリ” も電飾は派手だったけど、明るさを抑(おさ)えて落ちついた雰囲気を演出していたが、”アリーナ”は真逆の演出だった。例(たと)えるなら・・”フェラーリ”が落ち着いた大人のお姉さんだとしたら、”アリーナ”は元気いっぱいな妹って感じかな!?

エントランスに入ると大音量でクラブミュージックがガンガンに鳴っていて重低音がスゴイ! テツさんは、早速、店のママさんらしき人と値段交渉している様子だった。丁度、ショータイムの真っ最中だったみたいで、ステージにはビキニを身にまとったダンサーが踊っていた。オレは手にTake Outした食べ物を持ったままステージのダンサーに見とれてしまっていた。余談だけど・・結局、Take Outした食べ物は、すべてオレが引き受けることになってしまったのだ。
ようやくテツさんが戻ってきて、”アリーナ”の料金システムを話してくれるんだけど・・なんせ音がガンガンうるさくて会話にならない。要(よう)は、”フェラーリ”と同じで、店内にいる沢山の女の子の中から、好みの女の子を選んでテーブルに座ってお酒を飲む!ってことなのだが・・この時は、何故か自分たちで店内を歩き回って好みの女の子を指名してもいい。みたいな感じだったような!? 1階フロアーの通路には沢山の女の子たちがお客さんに指名されるのを待っていたし・・2階席へと続く階段にも沢山の女の子たちが指名を待っているという状況だった。人間って欲が出ちゃうから・・この子がカワイイなぁ!あっ!あの子も可愛い!って感じで、自分自身で選択を難しくしちゃうもんだけど・・どの子でも好きな子を選んでいいよ!って言われると大いに迷うもんだね!そんな時は、いちばん最初に笑顔を交わした女の子にすることにしている。ファーストインプレッション(第一印象)ってやつ!それがコジって名前の子だった。とびっきりな美人って感じじゃないけど笑顔がチャーミングな子だった。店内を見渡せば美人(キレイ系)な子はいっぱいいる。でも・・なんとなくピンとこなかったんだよね。で、テツさんも好みの子を見つけたらしくて、案内されたステージ近くの”コの字型ソファー”に4人で座ってステージを見ることになった。やっぱり気になっていたのか、オレが手に持っていたTake Outの袋を見てコジが
『それなぁに?』って聞いてきた。これこれこういう訳で・・以下その時の会話
オレ『持ち込みって大丈夫なの?』って聞きながらもパッケージを開け出す。
コジ『わぁ〜!おいしそぉー!友達呼んでもいい?』
オレ『いいよ!』
・・・・・・・しばらくして友達2人もやってきて・・・
レディーボーイA『ぎゃー!美味しいー』
レディーボーイB『ひゃー!悶絶ー!』
コジ『美味しい〜!』
テツさんの指名した子『おいしー!』

オレ『よ、よかったら全部食べていいよ!』
テツさん『・・・・・』

どうやらコジという女の子はみんなから好かれる子みたい。コジのまわりは笑いが絶えない。愛されキャラなんだね。きっと!

時間の経過とともに色々なことや物が見えてきた。”アリーナ”には一定数のレディーボーイがいた。ここで言うレディーボーイとは、見た目をより女の子に近づけようとするタイプではなくて、明らかに男の子が女装しているタイプのことだ。前者が”妖艶(ようえん)さ”を極めようとしているのに対して、後者は明らかにお笑い専門だ。キレイ系を選ぶ客層からは敬遠されてしまうようなレディーボーイ達にもコジは人気があるみたいだった。

『恥ずかしいからあんまり見ないでね!』と、言い残して席を離れたコジだったがしばらくしてステージで踊り始めた。

オレ、ひと目で目がハートマーク❤️になっちゃった!
今、ステージでクネクネ身体をくねらせて踊ってる子が、さっきまで横でケラケラ楽しそうに笑っていたコジなのかぁ?
”艶(なまめ)かしい” ”エロい!” その光景は衝撃だった。

ステージから戻ってきたコジは、ケラケラと楽しそうに笑う女の子に戻っていた。
このギャップがこの子の魅力なのかもしれない・・・

そうかと思えば、レディーボーイAとレディーボーイBもそれぞれのステージでお笑い芸とも呼べるようなダンスを披露していた。わざわざオレたちの席まで来て、『おひねり(チップ)ちょ〜だぁ〜い』と身体をクネクネさせてくるし・・オレ、テツさん、コジ、テツさんの指名した女の子もゲラゲラ笑って涙が止まらない!ヒィー!

楽しい時間というのは ”あっ!” という間に過ぎていくのはココでも同じこと。コジとバイバイするのも残念だなぁ〜!なんて思っていたら・・
『支払いが済んでも帰らないでエントランスで待ってて!』とコジに耳元でささやかれてドキドキする。
こういう時、何かを期待してしまうのが男の下心でもある。

その期待は、もののみごとに打ち砕かれた。
ステージ衣装から普段着に着替えて現れたのはコジだけではなかったからだ。
コジと仲良しの店の女の子何人かと、あのレディーボーイAとBも
『❤️お待たせぇ〜!❤️』と現れたから、一瞬だけど・・目眩(めまい)がした。
その時のテツさんの反応は『・・・・・・・』オレと同じだった。

『私たち店が終わると、いつもこうしてごはん食べに行ってるのー!』とコジ。
やっぱり、みんなに愛されてるんだなぁ〜!この子は・・

みんながよく食べにいくという場所は、Lapu-Lapu(ラプラプ)にある屋台だとか。ほとんどの店が閉店している深夜の時間帯に、その屋台周辺だけは活気に満ち溢(あふ)れていた。すでに何人かのお客さんもいた。おそらくコジたちと同業の人達だろうと思われる。
コジに『絶対、これ食べてみて!美味しいから!』って強くお勧(すす)めされたのが”レチョン”という食べ物だった。ひと口食べる・・ぱくっ!『旨っまー!』
オレ『え、何これめちゃくちゃ美味しいじゃん!』
コジ『でしょー!』
レディーボーイA『これ、いつ食べてもおいしいわぁー!』
レディーボーイB『ぎゃー!おいしー!しょーて・ん(昇天)・・・』
他の女の子たち『美味しーねー!』
テツさん『・・・・・』

”レチョン”という食べ物はフィリピンの人達の伝統料理というか”ソウルフード”なのだ。家族が集まれば”レチョン”を食べ、祭りがあれば屋台でも”レチョン”が売られるというぐらいに、しっかりと人々の生活に根ざした食べ物なんだね。これだけソウルフルな食べ物なのに、オレと”レチョン”との出会いはこの時が初めてだった。”レチョン”の正式名称は”豚の丸焼き” 豚一頭を醤油ベースのタレを塗りながら、表面がカリッカリっになるまで焼き上げることによって、外はカリッカリ!中はジュースィー!な絶品料理が完成する。このお肉を”ケバブ”のようにナイフで削ぎ落として食べやすい大きさにカットして、ライムなのか!?ビネガー(酢)なのか!?酸味のある調味料とご飯を、大きな葉っぱ(多分、ココナッツの葉っぱだと思う)の中で混ぜ混ぜして、ワシっと手づかみで食べると・・もぉ〜なんとも言えない香(こう)ばしさが口の中に広がって・・とっても幸せな気持ちになる!

コジたちが日常会話で話してる言葉は英語ではなく、セブアノ語という言葉。フィリピンの公用語であるタガログ語とも違う言葉らしい。どちらかと言えばハイトーン(高音)で機関銃のような言葉をみんなで発声するもんだから・・・今が真夜中だってことを忘れてしまうぐらいに、とっても賑やかだった。ひと通りの連射トークが終わると・・当たりに静粛が戻ってきた。遠くではチュンチュンと鳥の鳴き声も聞こえ始めてきた。『んじゃ!帰りましょうか?』という空気になり、オレとテツさんはTalamban(タランバン)方面へ、みんなはお店のあるCebu City(セブシティー)方面へとそれぞれがタクシーで帰っていった。

今、思い返してみても何とも充実した一日だったなぁ!
カフェテリアの窓からは朝日が差し込み始めていた。
”ピロ〜ン”
おっ!コジからLINEだ。『昨日は超楽しかったよ。またお店に遊びに来てね❤️』

残りの留学生活も楽しくなりそうだ!!


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