見出し画像

#バイト!?

2月に入って初めての週末。早朝からティムに起こされた。

『な、なんだこんなに朝早く!』

『今日ちょっと手伝ってくれないか?』とティム

『What is it?』・・・・

聞けば、今日ティムの実家で親父さんがウッドデッキのペンキ塗りをするから手伝ってくれないか?って話しだった。塗る面積が広いので人手は多い方がいい。ってことでクラブハウスに手伝えそうな奴がいるから声かけてみる。って話しを親父さんとしてきたらしい。

オレは突然のことでビックリはしたが・・・即答だった。

『OK! 手伝うよ!』

『あとで、迎えにくる!』と言い残し、一度ティムは家に帰っていった。時計の針は・・早朝5時!? ねむっ!

朝食を食べ終わった8時ごろにティムが迎えにきた。ティムの家はここから車で15分ぐらいのトーキーの町から少し奥まった場所にあった。まわりを自然に囲まれた、広大な土地に平家の大きな家が ”でぇーん”  と建っていた。日本では考えられないぐらいの広い土地に家もゆったりとたたずんでいるようだった。

早速、ティムの親父さんとお袋さんに紹介された。2人とも笑顔がとても素敵だった。お袋さんはティムにソックリだった。というか・・・ティムがお袋さんにそっくりなんだろうなぁ。

『まあ、お茶でも飲んでゆっくりして!』と促(うなが)され、クラブハウスでの生活について色々と話しをすることになった。

『ココに滞在できるのもあと1ヶ月ぐらいなんです』って話したら・・

『そうかぁ!とにかくココでの生活を楽しんで行きなさい。』と温かい言葉をいただいた。

ティム家では、ウッドデッキの色を何色にするか?って家族で散々悩んだらしいけど・・”ブラウニー”  というこげ茶色に落ち着いたそうだ。

ペンキは塗る回数によって出来上がりの感じが全く違ってくるのだが・・この日は、2度塗りして少し濃いめにしようって話しになった。ティム家の外壁は黒っぽいのでウッドデッキの色がブラウニーというのはナイスな選択だと思った。

早速、ペンキ塗りの作業に取り掛かった。普段からティム父さんがコツコツと作業を進めていたみたいで、今日は最後の仕上げ塗装をするだけの状態だった。

カルチャーショックというか!?文化の違いなのか!?ティム父さんは、家の修繕や電気周りや水廻りの保全や修理、はたまた車のメンテナンスまで・・ほとんどの作業を業者まかせにしないで ”Do it your self !”  自分でやると言っていた。オーストラリアではそういう環境が整っているし、親子何世代にも渡って長年そう受け継がれているので自然なことだという。だから作業はセミプロ・レベルなのだ。

そんなティム父さんの作業の邪魔にならないように、オレも自分に与えられた作業を淡々と進めていく。

オレがサーフィンにのめり込んでサラリーマンをドロップアウトしたのは、ある意味、時間に追われる現実から逃げたい口実だったのかもしれない。

ここでの生活を通して自分自身とシッカリ向き合う時間を持てたことは、いい波や良い人達との出会いと同じぐらいに大きな収穫となった。あれほど働くことが嫌いになった数年前からは想像できない程、働きたいと思えるようになったし、今こうして無心で作業していることで ”働くことへの楽しみ”  というものを見つけられてもいた。

黙々と作業を進めていく中でそんな ”モヤモヤが晴れたような感情”  が頭の中に浮かんでは消えていった。

ペンキを塗っていくという作業1つにしても、自分で考えながら主体的に動いていくと、心の奥底からグワァーとした熱いものが込み上げてくるのを感じていた。充実感というのか!?達成感なのか!?満足感なのか!?わからないが・・それに近い感情だと思う。

昨日までのティム父さんの下準備が完璧に済んでいるので、塗料がスゥーっと馴染むように染み込んでいく。それに、この辺は乾燥地帯で強い日差しがあるので ”あっ!”というまにペンキが乾いていった。

午前中の数時間を目一杯使って作業は完了した。

塗り終えたウッドデッキを見た時のティム父さんとティム母さんの嬉しそうな顔が忘れられない。 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?