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DTMの体験レッスンでなぜかセールスの極意を教わった話
好奇心に勝てなくて
このあいだ、ついうっかり初音ミクとStudio OneというDAWを買ってしまった。なんとなく初音ミクがどこまで歌えるんだろうと気になり、好奇心に勝てずなんとなく買ってしまった。
問題は一点。使い方がぜんっぜんわからねえ。
私は大体どんなUIでも一瞬でわかるニュータイプという自負があるが、これは全くもってわかる気がしない。そんな私にGoogleはおすすめ記事として「skypeで習えるDTM教室一覧」というのを出してきた。
その後5分もしないうちに、私はその教室の1つに
「DAWの使い方がわからなくて困ってます☆使い方おしえてください☆」
みたいなメッセージを送り、体験レッスンの申し込みを完了していた。またもや私は好奇心に勝てなかった。
Googleは怖ろしい。
大先生あらわる
さて、指定した時間通り、skype越しに先生が現れた。まずは、向いているレッスンがどれなのか考えるので音楽で何がしたいのか、ゴールを聞かせよと大先生はのたもうた。
「そうですねえ、気に入った曲をDAWで打ち込んで完璧に再現したいです」
「…それだけでしょうか」
「当面のゴールという意味合いだとそうなります」
その後しばらく噛み合わない話をつづけて、どうも大先生が求める答えは「私は曲をつくってyoutubeにうpして何万再生もされたい」ということらしいというのがわかった。
実際体験レッスンの受講者の大半はそうらしい。
「ぽんこつさんは自己表現の一手段として曲を作りたいと思いませんか?」
「あの、、、曲作りってツラミが深いじゃないですかあ」
「…はあ。」
「なのであんまりやりたくないです。DAWの使い方がわかればよいです」
「そうなんですね…。」
実は昔、私は音楽の英才教育を叩き込まれており、作曲のコンクールに出たりもしていた。コンクールの前に作曲専門の先生が見てくれたのだがそのレッスンは今でも覚えている。なんか怖そうな若い男性の先生がいて、その人の前で自分で作った曲を弾かされた。演奏が終わって先生が一言、
「うん、あんまりよくないね」
その後、コンクールは何段階目かで落ちて、その曲は日の目をみることなく終わった。その後しばらくして、いつも教えてくれる先生が熱心すぎて怖くて辞めた。母は投資(おそらくは数百万円単位)が無駄になったので激怒してたような気がする。
All you need is 理論
「私、曲のコピーができればそれでよいんですが、DAWの使い方がわかるだけだとだめなんすかねえ」
「それだけでもできます、が正直とてもつらいと思います」
「といいますと?」
「昔、小説家が書いた文章をひたすら模写する授業というのがありましたよね。私たち日本語を理解しているから、その文章の文脈を理解してコピーするということができるんです」
「はあ。」
「それがスワヒリ語になったとしましょう。私たちスワヒリ語がわからないじゃないですか。なのでスワヒリ語の文章を模写するのはただ一文字一文字書くだけのすごくつまらない作業なんです」
「はあ。」
「なので、コード進行など、音楽理論を理解したうえでコピーした方が絶対に速いです」
「コピーするのにも音楽のコンテキスト(コード進行)を理解できてないと単純な一音一音の耳コピなのでツラミが深い」
というのが大先生の主張らしい。
さて、ここからが大先生のターンである。
「ぽんこつさん、悪いことはいわないので、音楽理論を勉強した方がよいです。ところでぽんこつさんの好きな曲はなんですか」
「あー、、最近はYMOのshadows on the groundにはまってます」
「…なんかえらいシブいものが好きですね」
「そうですか?」
「であればなおさら音楽理論やったほうがいいですね。坂本龍一を理解したいのであれば音楽理論は必須です」
あー、私高橋幸宏とか細野晴臣のほうが、というのがあやうく出かかったが、まあ彼らを理解するのにも音楽理論は必須なのだろう。その後、音楽理論のレッスンの概要の情報をもらい、その日の体験レッスンは終了した。
必要性を理解させることがセールスのだいたい全て
当初私は
「DAWの使い方だけわかればいいや」
だったのだが、気が付くと
「音楽理論を理解しなければならない」
という気持ちになっていた。完全に大先生の思うツボである。もううっかり音楽理論レッスンの申し込みをしそうになっている。
これは仕事のセールスでも使えそうなテンプレだと思う。自分が売りたいものがあって、お客さんがその必要性を感じてなくても、それが必要であるということをわかってもらえば買ってくれることがある。(当然、売りたいものがお客さんの目標達成に絶対に必要なものであるというのが前提だが)
1.客の目標を確認。売りたいものにフィットする目標にできる限り誘導する(作曲がしたいんじゃないんですか?の下り)
2.客が目標を達成させるために、それが必要なんだ!と理解してもらう
(スワヒリ語のたとえ)
3.他に客がやりたいことを探り、そこと関連付けて必要だという気持ちを増幅させる (YMO好き→坂本龍一を理解したいなら音楽理論、の下り)
で、2が80-90%ぐらいのeffortをすべきものであり、のこり3ができるかどうかで買ってくれるかどうかが決まるんじゃなかろうかと思った。
ちなみに、レッスン終わった後でその教室のホームページのレッスンの一覧を確認したところ、音楽理論のレッスンに「初心者に一番おすすめ!」とでかでかと書いてあった。どうやら音楽理論ガチ推しの教室だったらしい。
あと余談だが、その後頑張って耳コピで初音ミクに聖子ちゃんの曲を打ち込んで歌ってもらったが、初音ミクはあくまで初音ミクであり、聖子ちゃんにはなれないことが判明した。ミクはあきらめたが音楽理論はやろうかどうか迷っている。
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