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【設定資料】ルビト・ソドリー展「画家の世界のひとびと」

(展覧会のパンフレットだ。ルビト・ソドリーという若い画家の作品とその解説が掲載されている)

 ルビト・ソドリー
 現代芸術家。魔力障害の影響で言語を発するのが困難なことから、絵によるコミュニケーションを模索。主に人物画を手がけており、ほぼ全ての絵にモデルがいる。第二十四回ティノリス芸術コンクール絵画部門銀賞受賞。第百三十七回王都芸術祭油絵部門最優秀賞受賞。代表作に「挨拶をする老紳士」「孤独に刃を向ける者」など。


油絵【挨拶をする老紳士】
 モデルはルビトの才能をいち早く見抜いた芸術研究家のセデス・レイク。帽子を脱いでこちらへ微笑む老紳士。思わずこちらも頭を下げてしまいそうになる。黒い紳士服をよく見ると黒ではなく、赤や青の色彩が隠すように散りばめられている。この色味のぬくもりが老紳士の人となりを見事に表現している。

油絵【焼菓子を焼く女】
 モデルはルビトの自宅近くにあるパン屋の女性。油絵【パン生地をこねる女】で描かれている女性と同じ人物である。彼女が趣味で焼いたクッキーをルビトはよく購入していた。オーブンの熱にあてられて頬を紅潮させた女性の描写から、彼女の人柄の良さが分かる。また、大粒なチョコレート・チップがふんだんに練り込まれたクッキーは見る者の食欲を刺激する。

油絵【ものを書く男】
 モデルはカルロス・ヴィダルの息子のノア・ヴィダル。手元のノートに何かを記入する彼の真剣な様子が繊細な筆致で描かれている。ノートでは古代叙事詩「我が友へ」の一節が確認できる。ここで注目すべきは筆跡である。ルビトはノアの筆跡の癖を見事に再現しており、彼の観察力と再現力の高さをうかがい知ることができる。

油絵【ひとびと】
 ルビトの作品に関わったモデルの人々が誰かを優しく取り囲んでいる絵だ。中央にいるのは誰なのか分かっていないが、床にカーマインの油絵の具が描かれているのを見るとルビト本人ではないかとされている。しかしルビト本人は「誰かを取り囲んでいる群衆の中」にそれらしき姿があるので、中央に居るのは別の人物という説もある。これに関してルビト本人は「絵を見る人の好きに考えられるようにしてあります」としている。また、この絵には一人だけルビトの絵のモデルではない、つまりモデル不明の人物が紛れ込んでいる。

油絵【孤独に刃を向ける者】
 この絵はルビトの作品の中でも相当に特殊なものである。基本的にルビトの人物画には明確なモデルが存在するのだが、この作品だけは例外で、モデルが誰なのか分かっていない。大きく開いた瞳孔からは憤怒の気配がこぼれている。何かを取ろうとする手の動きに、描かれていない凶器の輪郭が見える。ペインティングナイフで大胆に塗られた面が作り出す人間の姿は、「怒り」という感情そのものなのかもしれない。



気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)