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維新の会の二つの顔と心臓

統一地方選挙の結果でツイッターは大荒れである。その中心にいるのが我ら大阪が産んだ政党である維新の会だ。

日本維新の会と大阪維新の会は、41道府県議会議員選挙のうち、18の道府県であわせて124議席を獲得し、選挙前の59議席から倍以上に増やしました。このうち大阪府議会では、選挙前から9議席増やし、55議席を獲得して、過半数を維持しました。また兵庫県でも、21議席と選挙前の4議席から大きく伸ばしました。さらに、関西以外で、選挙前に議席があったのは、千葉県と愛媛県だけでしたが、今回、神奈川県議会で6議席を獲得したほか、北海道や福岡県などの議会で党として初めて議席を獲得しました

NHK 統一地方選挙引用

まさに大勝である。ツイッターのインテリ層からはとにかく批判されまくっている維新の会であるが、選挙では毎回議席数を着実に伸ばして関西を中心のその勢力を拡大し続けている。

さらに奈良県では何と維新の会の候補者が県知事選挙で勝利してしまった。自民党の御家騒動で漁夫の利を拾う形になったとはいえ、大阪以外で初の維新知事誕生というのは大きな快挙である。ライトアップされた奈良公園でLEDライトでキラキラと角が光る鹿の群れを見られるかもしれないと思うとワクワクしてしまう。3Dプロジェクションマッピングで七色に光り輝く仏像様にも期待だ。

大阪の外、特に東京首都圏から見ると、維新の会がなぜこれだけの人気を関西や西日本で獲得できているのか不思議に思う人が多いのではないだろうか?ただ維新の誕生から今日までの歩みを大阪で見続けて来た筆者は、以前より維新の会は今後関西のみならず西日本を中心に勢力を伸ばし続け、野党第一党の地位まで上り詰めることを確信していた。維新の会がこれほどまでに躍進するのは、維新の会が持つ二つの顔、二つの心臓によるところが大きい。

維新の会とはそもそも何なのか?一言で表すなら『義理人情と暴力性』だ。

淀川に迷い込んで残念ながら亡くなってしまったクジラ「淀ちゃん」騒動を覚えている人は多いだろう。大阪自然博物館がなくなったクジラを骨格標本として大阪の文化的資産にしたいと名乗り出た。そんな博物館の申し出に対して松井市長が取った対応は海への海洋投棄であった。その際に松井市長が言った『海からきたクジラ君やからね。海に返してあげないとかわいそうや』という言葉に維新の強さが詰まっている。海から淀川に迷い込んで亡くなってしまった可哀そうなクジラを解体し土に埋めた後に標本化するなんて可哀想だ。それよりも故郷の海に返してあげようやないか。これである。クジラを貴重な骨格標本として大阪の資産にしよう!よりも、可哀そうなクジラを皆のいる生まれ育った海に最後は返してあげよう。どちらが市井の人々の求める”物語”であるのかを、維新の会はよくわかっている。維新の会は義理人情の演出が上手い。

もう一つ維新らしさを示すエピソードがある。定例会見で女性記者から出生率が伸び悩むことをどう思うのか?と強めに突っ込まれた松井市長はその女性記者に『君いくつ?何で結婚せーへんの?』と逆質問。さらに『32歳で相手いるなら別にスッと踏み切ったらいいやない』とカウンターまできめたのだ。ポリコレ全盛の令和社会、当然ツイッターでは松井市長の態度がハラスメントではないか!?と非難されたが維新人気はビクともしなかった。維新は暴力性と剛腕さをアピールして今の地位を得た政党であり、この程度の強気の発言ではその人気はビクともしないのだ。むしろここで若い女性記者に詰問されモゴモゴしている方が「なんや松井さん言われっぱなしやないか、頼んないな」と思われてしまう。そこまで考えて維新は常に剛腕さをアピールし続けている。

義理人情と暴力性、つまりは政治の世界から失われて久しい”昭和親父的な父性”こそが維新の会の表の顔、心臓の一つなのである。維新の会は今の政界にぽっかりと空いていた『義理人情に厚く、何かを変えてくれそうな剛腕の頑固おやじ政治家』というポジションをガッチリ掴んでいるのである。なので何かを変えなければ、何かを変えて欲しい、と願う市井の人々が増えれば増えるほど、何とかしてくれそうな政界のオヤジ的ポジションの維新に票が集まるのである。

そしてもう一つの維新が持つの裏の顔、それが『ポピュリズム政治』だ。

維新の会は思想が強い他の野党と違い、最も主義思想が薄い政党である。そのため、時流の風に合わせて右にも左も自由に動くことが出来る。維新の目的はただ一つ、選挙に勝って議席を伸ばしていくことだけだ。そしてそのために必要なことがなんなのかも維新はよく理解している。選挙に勝つために最も必要なこと、それはごく普通に働き、家族を持ち、日々の生活を営む市井の人々の希望に答え、彼らに明るい未来を見せることである。市井の人々のほとんどは強い政治思想などを持っておらず、それよりも日々の生活に追われ忙しく暮らしている。そんな市井の人々に維新はいつも前向きな明るい未来について語りかける。『大阪を前へ』『大阪を止めるな』という前向きなスローガンを掲げる大阪維新の会と、『大阪を守る』『大阪を取り戻す』といった後ろ向きなスローガンを繰り返す大阪野党、どちらに若者や現役世帯が夢を託すのだろうか?大阪で今回も維新が大勝したのも当然の結果と言えるだろう。

政治家の最も偉大な仕事は市井の人々に明るい未来を思い描かせることである。大阪万博も、IRカジノ構想も、御堂筋LEDライトアップも、難波のホコ天整備も、これらすべては未来のある若者や子育て世帯に「大阪はこれからもっともっと良くなるし盛り上がっていく」という”夢”と”物語”を与えるための政策なのである。過去の記事でもふれたが、事実として大阪は東京首都圏以外に次ぐ人口増加地域であり、特に若い女性を中心に他府県からの移住が相次いでいる。他府県からは中身のない行き当たりばったりの政策と笑われていた維新の政策は、確実に大阪に活力を与えている。街の活力とは若者の数に他ならない。郊外のジジババゲートボールパークと化した公園をいくら整備したところで街は輝かない。それならは若者が多く、これから若者を集められる街作りに投資したほうが効果的だ。維新はそこまで考えて大阪市内に資本を集中投下している。そのかいあって開発が進むうめきたエリアでは新駅が先日開通した。JR西日本はうめきた新駅と新大阪をつなぐなどして今後も延線開発を続けていく計画である。これにより今まで以上に他府県から若者を大阪へ引き込まれる流れになるだろう。

JR西日本:うめきたエリア再開発
DIAMOND Online : うめきた新駅に導入された世界初のフルスクリーンホームドア

思想を持たない維新の会はその街の人々の声によってすぐに政策方針を転換しまさに風見鶏のような政党である。思想を持つインテリの人々からすれば節操で中身がないと批判されることも多いが、インテリから批判されている間は維新の躍進は止まることはないだろう。維新はネットに溢れる上澄みのインテリではなく、ネットに主義思想を垂れ流さない街の庶民にフォーカスすることが選挙に勝つために必要だと理解しており、はなからインテリの意見は無視しているのだ。むしろインテリに非難されることで、彼らへの反動票を集めることが出来るので批判はむしろありがたいとまで思っているかもしれない。市井の人々にとっては偉大で立派な主義思想よりも、スーパーの卵の値段の方が重要なのだ。この徹底したポピュリズム政治が維新の第二の心臓だ。

義理人情と暴力性という父性』『徹底したポピュリズム政治』この二つの顔と心臓で維新の会は今後も飛躍していくことは間違いないだろう。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの維新の会であるが、一点だけ不安要素がある。それは……

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